まなび
  • 公開日: 2019/12/16

震災で知られるようになった「クラッシュシンドローム」について学ぶ

クラッシュシンドローム(圧挫症候群)
読み方:くらっしゅしんどろーむ(あつざしょうこうぐん)

 

クラッシュシンドロームとは

長時間にわたって圧迫された四肢の圧迫を解除した後に発生する全身的症候群。一般的には圧迫による組織の虚血や圧迫解除後、再灌流障害(再び血液や体液などが流れることによって起こる障害)による筋細胞の融解、コンパートメント症候群によって生じる様々な症状をさす。

倒壊した建物の瓦礫、家具の下敷き、車に挟まれるなど、長時間にわたり体を挟まれた人が救出直後は元気そうにしていたにもかかわらず、突然容態が急変し亡くなってしまうケースが阪神淡路大震災で見られた。古くは空襲などでも見られていたが、日本では震災以降に知られる様になった。

ギブス固定時には要注意!コンパートメント症候群とは?

病態

骨格筋の圧迫と虚血による細胞膜障害により、筋細胞内容物が流出する(横紋筋融解)。つまり筋細胞内に多量に含有するCK、ミオグロビン、Kが流出する(高カリウム血症、ミオグロビン尿)。

そして圧迫解除後の虚血後再灌流障害が加わると、流出した物質が血流に乗って前線に巡る。また圧迫部位の血管内皮障害によって血流再開した血液中の水分が血管外に急速に漏出する。

すると、急激に下肢の腫脹(コンパートメント症候群)や循環血液量の低下から血圧低下、脱水を生じる。これらの循環障害やミオグロビンの漏出によって近位尿細管細胞障害も生じる。そのため傷害された細胞成分が円柱を形成して尿細管閉塞をきたす。結果的に急性腎不全を発症し高カリウム血症も悪化させる。

症状

ショック、血圧低下:救出直後は意識やバイタルサインが正常なケースもある

損傷四肢の著名な腫脹:救出直後は軽度のことが多い

圧迫四肢の運動・感覚神経障害:量化し麻痺の場合は、脊髄損傷との鑑別が必要

褐色尿(ミオグロビン尿、ポートワイン尿):尿が褐色から黒色となる

検査・診断

  1. CK(通常1万~数万IUl以上になる)
  2. ミオグロビン、K、Pi値が上昇
  3. Ca値は低下
  4. 代謝性アシドーシス:阻血によって筋細胞内に貯留した乳酸が血管内に流入して高度の乳酸アシドーシスとなる

救出直後までバイタル変動がなかったり、患者が元気なこともある。また外傷も少ないことがあるから、状況から積極的に医療者がクラッシュシンドロームを疑わないと見逃されてしまうこともあるため注意が必要。

治療

大量輸液:循環血漿量を維持しショックの是正。腎不全予防。輸液製剤は生理食塩水や1号輸液などのカリウムを含有しないもの。理想は救出前から輸液を開始することが望ましい。

重炭酸水素ナトリウム(メイロン)の投与:カリウム値の低下、尿のアルカリ化(尿pHが6.5となるとヘム色素の溶解率を高めミオグロビンの腎毒性を低下できる)

血液透析:急性腎不全やアシドーシス、高カリウム血症の是正、水分出納管理、老廃物除去。

筋膜切開:コンパートメント症候群の併発に対して。

看護のポイント

高カリウム血症による、致死的不整脈の発生に備える。心電図モニターや蘇生用薬剤、除細動の準備。

大量輸液や不十分な保温状態での搬送となるため、低体温を予防し不必要な露出を避ける。

迅速な対応が求められるため、既往歴や家族の連絡先などの情報収集や透析や集中治療などへの連携や調整業務を素早く行う。

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