「この診療科へ配属されたい」そう思って希望を出したものの、実際には希望通りでないどころか、全くの想定外だった診療科へ配属された!なんて方も多いのではないでしょうか?
実録!希望とは全く違う診療科へ配属されて・・・
先輩ナースの中にも、実際に希望とは全く違う診療科へ配属された方々がたくさんいます。では希望と実際で、どのような差があったのでしょうか?
ケース1 「まずは基礎的な知識を身に付けたい」そう思い、あえて希望を書かずにいたら
Aさんは、大きな規模の病院へ新人ナースとして就職しました。さまざまな診療科がある病院なので、「診療科を絞らず、まずは看護師として基礎的な知識を病棟で身に付けたい」と思い、あえて科の希望は書かずに提出しました。
すると配属されたのは、まさかの透析室。緊急透析はICUでも行えるため、透析室で行うのは日勤帯での透析のみ。夜勤もなく、病棟で日常的に行われる看護はほとんど行う機会がありません。「新人看護師を病棟以外の部署へ配属するなんて」と、Aさんは病院に対して不信感にも似た感情を持ってしまっています。
ケース2 「小さい頃に優しくしてくれた、あのナースのようになりたい」と思っていたのに
Bさんは、小さい頃、入院していた時に優しくしてくれたナースに憧れて、看護師になりました。就職先も小児科に力を入れている総合病院を選び、面接時でも自分がいかに小児科で働きたいかをアピールしました。就職前の配属希望でも、小児科を第一候補とした他、「私は小児科しか考えていません」ということをアピールするために、あえて小児科以外の希望は書きませんでした。
しかし実際に配属されたのは、子供が入院することはまずない「循環器科」でした。配属先に小児科しか考えていなかった上、実習の時から心電図&老年看護に対して苦手意識が強かったBさんは、早くもやる気が出ずにいます。
ケース3 助産師=産婦人科、とばかり思っていたら
Cさんは、大学卒業時に看護師免許に加え、小さい頃からの夢だった助産師免許も同時に取得することができました。当然、配属先は産婦人科だろうと思っていたのですが、配属されたのは産婦人科ではなく、看護師も多く所属しているNICUでした。
「自分で赤ちゃんを取り上げたい」その思いで毎日辛い看護師と助産師のダブル実習をこなしていたCさんにとって、NICUへの配属は、自分のこれまでの頑張りをすべて否定されてしまったような気分でした。同じ助産コースだった他の友達は全員産婦人科で働いており、「なんで私だけ・・・」という思いが毎日湧き出してしまい、自分の気持ちを整理することができません。
希望と違う診療科へ配属されたら、こう乗り切れ!
今回ご紹介したこれらのケースは、実際に毎年多くの新人さんから聞く悩みであり、新卒者として最初の「サバイバル」だといっても過言ではないでしょう。では、このサバイバルはどうやって乗り越えていけばよいのでしょうか?そのヒントをご紹介していきます。
その1 自分の「思い」を自分自身で否定しない
配属先が希望通りでなかったことについて、周囲の人たちから「いやいや、その場所でも学べることはたくさんあるよ」「希望通りにならないなんて、社会人なら誰だって経験することだよ」と、“学生気分が抜けていない”扱いをされることもあると思います。
しかし、自分の希望通りでないことを受け入れるのに、時間はかかって当たり前です。まずは、自分の配属先が希望通りでなくて「辛い」「嫌だ」という思いをそのまま受け止めてあげることが大切です。
「看護師として、夜勤のある病棟へ配属されたかった」 「なんで小児科って希望を出したのに、それ以外の病棟へ配属するの?」 「助産師の資格があるんだから、まずは産婦人科でしょ!?」
これらの思いを自分自身で否定しないで認めることは、自分自身の心を守る、ということにつながります。学生時代の先生のように自分を守ってくれる存在がいない新人時代だからこそ、自分自身を守るというのは、新人としての1~2年間を乗り切るために大切なことなのです。
その2 希望通り配属された人と、直接話す機会を持ってみる
希望する配属先へ配属された人=順風満帆な看護師人生のスタートを切っている、と思い込んでしまっていませんか?実は、希望通りに配属されたからといって、その人たちが悩みを持たずに仕事をしているというケースは少数です。
むしろ、希望が通ったからこそ「実際に働いてみると、理想と全然違った」というギャップに耐えられないことも。
例えば、小児科へ配属され「子どもへの看護ができる」と思いきや、実際には「患児の両親との関係」が難しくつまずいてしまうケースもあります。産婦人科へ配属されても、実際にお産へ立ち会えるのは先輩助産師さんたちばかりで、なかなかお産介助につかせてもらえず、日々新生児や妊婦健診に立ち会うだけ、というケースだってあります。
希望通り配属された人と直接話してみることで「希望通りの部署へ配属されたとしても、自分の希望通りの仕事ができているとは限らない」ということに、きっと気づくと思います。
さまざまな診療科を経験することで得られる未来もある!
ちなみに筆者は、すでに看護師歴10年以上なのですが、新人時代からさまざまな診療科を経験したことで、今は看護師として、オールマイティな知識と技術が試される仕事を行うことができている、と日々実感しています。
最初は思いもよらない診療科に配属されてがっかりでも、長い目でみれば役に立つこともあると思います。毎日の経験を自分のものにして、ナースとしてのキャリアを育てていってくださいね。
この記事を書いたのは
山村 真子
看護師として働きながら、ライターの仕事もしている、アラフォーママナース。看護系以外にも、育児や病気、介護など幅広い分野の執筆を行っています。時短勤務中だが、毎日定時に帰れるはずもなく、保育園の送迎はいつもギリギリなのが最近の悩み。
イラスト・ツヤコ