まなび
  • 公開日: 2019/1/21
  • 更新日: 2019/7/30

強迫行為がない強迫性障害。そんな症例あるの?森田療法の体験談

発症したときのこと

私は強迫観念だけで、強迫行為がない強迫性障害でした。どんなものかと言うと「愛娘を死なせてしまうんではないか?」というものです。

妊娠した頃「子どもに愛情を注いで、自分自身も賢くステキな母親になる」っていう夢がありました。

しかし、そんな理想はすぐに崩れました。母乳育児、布オムツ育児を決めていたのに母乳が出ない。オムツ洗濯が大変。

そもそも家事を含めた生活自体が大変で、育児書に載っているママ達と全然違いました。赤ちゃんのいる生活ってもっとふんわりキラキラしているはずでは!?

なんで私だけスムーズに育児できないの!?と毎日落ち込み病んでいきました。

 

強迫観念が出たきっかけ

そんなある日、母乳を飲まない娘に対し「このまま放置して外出したら娘は死んじゃうんだろうな」と思ったのです。

もちろんそんなことしません。でもその瞬間、体中の毛が逆立ったのを覚えています。もはや母の資格はない、人として終わりだ、と。娘を育てていく自信、意欲を失いました。

 

本格的な強迫性障害に

それから「放置」「死んじゃう」という強迫観念が頻繁に出るようになりました。「そんなことは考えてはダメ。私の本心じゃない。私は一体どうしたの!」と。

必死で振り払いました。でも強迫観念は無くなるどころか、どんどん恐ろしいことになっていきました。

 

どんどん悪化し、うつ状態に

それから私はうつっぽくなりました。それでも夫が家事に協力してくれて、娘をなんとか育てました。そして娘が離乳食になったころ、夫が森田療法をネットで見つけてくれました。

その体験記には私と似たような経験をもつ女性や、私の症状にぴったり当てはまることが書いてあり、意を決して入院治療を受けることになりました。

 

最初の診察で言われた意外なこと

最初に主治医の先生に言われたことを今でも覚えています。それは「あなたは病気じゃない」でした。

「ある気質の人に起こりやすいもの」「だから病気として治療するのではなく、ただの健康者として取りあつかえば治ります」と言われました。

さらに続けて「あなたの様に自分に厳しく、強く物事を気にし執着するから不快感が憎悪するんです」と言われました。まさに自分の事でした。

 

入院治療

3ヶ月の治療入院でした。森田療法の中身はとにかく行動することでした。行動と言っても日常生活の中で行われる些細なものです。

最初は掃除や布団の上げ下ろしでした。それに意味があると思えず、そんなことで治らないと思っていました。

でも、スタッフの方々に「やらなければいけないことをしていく」と言われ、嫌々行動に移していきました。

 

「とにかく行動」で変化したこと

でも、嫌々ながらでも行動に移していると、知らない間に嫌なことを忘れ、夢中で掃除している自分に気づき始めたのです。

そこでやっと「感情は常に変化するものだ、快も不快もいつも長くは続かない」と気がついたのです。

 

気力がないときの行動が一番つらい

それからは動くのが億劫でも、不快があっても、やらなくてはいけない事をやり、気分本意から目的本意へと私の行動は変わっていきました。

一番辛かったのは、行動する気力がない時、動くことができなかったことです。そ”うなると「こんな自分じゃいけない」と自分を追い込むため、余計に動けなくなりました。

そんな時はできる事から、少しだけでもいいから目の前のことをやりました。そして「できた時の自分とできなかった時の自分を比べる」ことを止めました。

そうすることで小さなことでも行動にうつせるようになりました。

 

60点主義が大事

決して順調とは言えず1歩進んで2歩下がる、たまに全く進めなかったりで何ともはがゆくイライラすることもありました。

でも、先生は「それが本来の治り方」と言ってくれました。「60点主義」と自分に言い聞かせ課題に取り組んでいきました。

できる時、できる事を、できるだけたくさんやる!そんな毎日でした。「やらなきゃいけないことをやる」「少しでもやる」「できた自分・できない自分を比べない」そう言い聞かせました。

 

思い出した幼少期

私の母は激しい気分屋でした。落ち込んだり、急に激怒したり。だから自分の育児に対して強い願望をもったんでしょうね。

そして、こんな性格になったのは親のせいだと恨んでいましたが、森田療法の教えを勉強していく中で親のせいにしないで生きようと思いました。

それからは母との関係も改善していきました。母は当時、姑との関係が悪く、私を含めた周りの人にあたっていたことを後悔してたようです。

辛い中で私を一生懸命育ててくれてたんだなと思うようになりました。

 

回復はした。でも勉強は継続中

肝心の症状ですが、まだ少しあります。なので今も森田療法の勉強会に参加しています。 森田療法は治療というより生き方の勉強とも言えるかもしれません。

「不安を取り除くことが人生の目的ではない」「神経質は磨けばとても良い性格である」など、森田療法の教えを心におき、行動した事実を大切にするようにしています。

 

森田療法の考え方

強迫性障害は「よりよく生きたいという生の欲求から来ている」。森田療法では、そう考えると教わりました。

治療として「行動すること」を挙げていて、「行動することが生の欲望の発揮であると同時に、不安の受容でもある。これを同時に進行することで転換が可能になる」と教わりました。

行動することが治療になる、って曝露反応妨害法と似てますね。60点主義ってところも。 でも、両者の違いをうまく説明はできませんが、治療目標は同じだと思います。

この病気の治療は決して楽ではありませんが、がんばりましょう。

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