老後の生活費や働き方などの不安から、筆者の周りにも資産運用を考える人が増えています。しかし、保険金融商品の不適切な販売や、投資詐欺案件なども社会問題となっており、興味はあるけど始められないという声があるのも事実。筆者もこれまでにさまざまな投資を勧められた経験がありますが、「よくわからないもの」は「不安」なんですよね。
看護師仲間からは「ずっと今の働き方を続けたくはないけど、貯金はできないし、働くしかないと思っている」という声をよく聞きます。だからこそ、働き方の選択肢を増やすためにも、収入が安定している今から資産づくりに向き合うことが重要ではないでしょうか。
そこで、vol.3とvol.4の2回にわたり、資産づくりついて考えていきたいと思います。まず今回は、積立投資がどういったものなのかを解説していきましょう。
■資産を2倍以上にすることができる!? 積立投資とはどんなもの?
資産づくりにあたっては、vol.2でお話しした「年金」を含めて考えていくことになります。そのなかでも少し触れましたが、「確定拠出年金制度」は、公的年金の不足部分を補うために設けられた私的年金制度で、資産づくりの1つの方法となります。これは、個人あるいは企業が一定の掛け金を毎月積み立て、自分で運用していくというもので、日本では預貯金、投資信託、保険商品によって運用することができます。超低金利時代にある現在、元本確保型の商品は手数料などを含めるとマイナスになってしまう可能性が否定できません。ですから、これから資産を増やしたい世代には積立投資がオススメです。
確定拠出年金制度は、アメリカでは約40年前から始まっており、今ではアメリカ国民の多くが当たり前のように積立投資を行っています。そのおかげで、日本における70歳以上の平均資産額が2000万円であるのに対し、アメリカでのその額は5800万円と日本の倍以上となっています。このことから期間をかけてお金を運用していくことのメリットが、日本でも認知されるようになりました。アメリカでこのように資産を増やすことができたヒミツとして、次のような3つの積立投資の特徴が挙げられます。
①あらゆる国や企業などに投資ができる
②毎月一定金額を買い続ける
③複利の効果で長い時間をかけて大きく増える
この特徴こそが、リスクを減らしながら資産を大きく増やしていくことができるポイントといえるのです。
1.1つの商品で複数の投資先に投資することが可能
積立投資は「投資信託」という投資方法を選ぶのが一般的です。投資信託では、私たち投資家から集めた資金をどこに投資したらよいのか、「運用会社」がアセスメントしてくれます。そのうえで、資金を管理している「信託銀行」に指示をして、さまざまな国、株式や債券などからよいと思う投資先を選択して1つの商品にしてくれます。たくさんある国や企業などのなかから、自分で投資先を選ぶのは難しいと思いますが、投資信託であれば、その部分を専門家が行ってくれるため、ゼロから探すより選びやすいというわけです。
投資信託は、さまざまな投資先のなかから複数の投資先を選択することが可能です。そのメリットは、投資先が複数で構成されていることで、資産が分散され、リスクが低くなるところにあります。1つの企業に投資する場合、その企業が倒産してしまうと、すべてが損失となってしまいます。ただ、統計上20年以上の運用で収益はプラスになるとはいわれていますが、元本は保証されていないことを再度お伝えしておきます。
2.一定額の購入なので価格が下がっても低リスク
私も積立投資を行っていますが、始める前は、投資は「価格が下がる=損してしまう」というイメージをもっていました。しかし、投資を理解するようになると、積立投資では、長く続けることで価格が下がったときのリスクを減らせることがわかりました。
投資方法の違いによるシミュレーションを図2に示してみました。
2人の投資家、AさんとBさんが、各自20万円を投資しました。ただし、Aさんは1回で20万円を投資し、Bさんは2万円ずつ10回に分けて投資を行いました。10回目までの間で価格は変動し、最終的な1口の価格は、投資1回目の10,000円より値下がりした7,000円で終了しました。
このとき、1口の価格が値下がりしているので、一見2人とも損をしていると思われます。しかし、Bさんについては、最終的な保有口数は32.4口で、値下がりしているにもかかわらず26,800円も利益が出ているのです。
Aさんのように一度に投資する場合は、価格が上がれば大きく利益を得ることができるのですが、下がったときは損失が多くなります。そのため、価格の変化をみて売買のタイミングを決めなければいけません。Bさんの場合は、決まった金額で買い続けることによって価格の変動が平準化されるため、長く投資し続けることで安定的に増やすことができます。
図2 一括投資と積立投資の違い
※Aさん
200,000円÷10,000円=20口
20口×7,000円=14万円
4万円-20万円=-6万円
※Bさん
①20,000円÷10,000円=2口
②20,000円÷11,000円=1.8口
③20,000円÷14,000円=1.4口
④20,000円÷10,000円=2口
⑤20,000円÷7,000円=2.8口
⑥20,000円÷5,000円=4口
⑦20,000円÷3,000円=6.6口
⑧20,000円÷4,000円=5口
⑨20,000円÷5,000円=4口
⑩20,000円÷7,000円=2.8口
(小数点第1位以下は切り捨て)
2+1.8+1.4+2+2.8+4+6.6+5+4+2.8=32.4口
32.4口×7,000円=22万6800円
22万6800円-20万円=2万6800円
3.資産が大きく増やしやすい複利方式
利息には2つの増え方があります。元金に対してのみ利息がつく「単利」と、元金と利息の合計金額に対して利息が付く「複利」というしくみの2種類です。利息は、つまり利益ということ。複利を選ぶことで、時間がたつほど資産の増え方=利益に大きな差が出てきます。図3に具体的に示しましたので、確認してみてください。
図3 単利と複利の違い(元金100万円に対して年利回り10%で運用した場合)
■積立投資はさまざまな手段で始められる
今まで説明してきた積立投資はさまざまな制度を活用して始めることができます。ほとんどは証券会社や銀行などで金融商品を選ぶことが多いのですが、保険商品にも変額保険として同じように活用できるものもあります。積立投資で利用できる制度や手段の特徴を表1にまとめました。参考にして、ライフスタイルや目的にあわせて選ぶとよいでしょう。
つみたてNISAで運用できる商品は、金融庁が認めたものです。長期間の運用を考えて、世界の金融市場に連動した投資商品をメインにしていたり、税金や手数料などのコストを極力抑えることができます。しかし、実績の短いものや運用会社の純資産額が少ないところもあり、途中で商品がなくなってしまうというリスクもあります。
また、iDeCoは税制面での優遇が多く、自営業の人や所得が高い人には節税効果が高くなります。しかし、原則として60歳までは引き出せず、それがメリットでもあり、デメリットでもあります。絶対に使わないお金として積み立てるには効果的ですが、子育て世代などでは、教育費など急に資金が必要となったとき自由に使えないので、目的に合わせて方法を選び投資していくとよいでしょう。
参考資料
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●厚生労働省:政策について 分野別の政策一覧 年金 年金・日本年金機構関係 私的年金制度の概要(企業年金、個人年金) 確定拠出年金制度 iDeCoの概要(2020年1月14日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kyoshutsu/ideco.html
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●アクサ生命:アクサの「資産形成」の変額保険 ユニット・リンク 特長(2020年1月14日閲覧)https://www.i-hoken.com/axalife/p_unit.html
●東京海上日動あんしん生命:保険をお考えのお客様 変額保険 マーケットリンク(2020年1月14日閲覧)https://www.tmn-anshin.co.jp/kojin/hengaku/marketlink/
イラスト/ふるやますみ