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【連載】Dr.パクのドタバタ離島医療奮闘記

第11回 島ナースというエキスパート―看護師が地域で医師や患者を支え、育てること

  • 公開日: 2014/1/5
  • 更新日: 2020/3/26

 

看護師は夜勤のラウンドや訪問看護など、患者さんの健康状態を確認する機会が多くありますが、患者状態を適切に判断するためには、プライマリ・ケアの技術が大いに役立ちます。

本連載では、拠点病院などによる後方支援を期待できない土地で、医療・検査機器などもない患者宅で医療を提供する「へき地医療」を通じ、“究極のプライマリ・ケア”と地域医療の実際を解説します。


“島ナース”って?

最近、『総合診療医』や『家庭医』という言葉を様々な場面で目にすることがあるかもしれません。地域で診療する医療者は、現場に行ってみて適当にやればなんとかなるのではなく、きちんとトレーニングする必要があり、質の高さが求められるようになってきたことが背景にあります。

僻地には僻地の、プライマリ・ケアにはプライマリ・ケアの専門性があるのだということです。

それは医者だけではありません、看護師も同じですが、みなさんは『島ナース』という仕事をご存じでしょうか?

島の看護師というと某ドラマの影響か、医師も看護師も島に慣れない新人で、一緒にわけわからない島の医療に奮闘しながら、恋に落ちるというイメージを持つ人もいるようですが、医学的にも危険過ぎますし、そもそも波照間島のナースは既婚者でした。

島ナースに求められる能力を言語化するのは難しいのですが、島の看護は、“広く浅い”というのは一面的な評価でしかありません。島の文化や患者の背景には非常に深く関わっていかなければなりません。むしろ島ナースの一番の専門性は医師のできない“地域や患者さんとの関わり方”にあります(表1)。

最近では島ナース(島嶼看護)の専門性の高さや特殊性から、その養成の必要が叫ばれるようになり、沖縄県立看護大学院では島ナースの実践指導者養成も行われています1)

表1 私の考える島の看護師に求められる能力

項目 具体例
コミュニケーション 患者個人、家族、島という地域と付き合っていく能力、背景を把握し文脈を読みよる力
医学看護学的能力 薬剤師業務 感染管理や薬剤指導などから、急患対応、トリアージを含めた医学看護学能力の維持、向上
介護福祉行政の知識、技術 他職種とのやりとり、リソースの把握、情報のアップデートなど
レジリエンス 身体的精神的に耐える力、様々な経験を糧にしていく力
プロフェッショナリズム 島唯一の看護師としての責任、自身の体調管理も含めて
地域をみる力 地域診断、地域の“空気を読む”力、地域のリソース、問題点の把握、活用

離島でも医師を支えるのは、やはり看護師

医者1人、看護師1人の島では役割がそれぞれの個性や状況によって大きく変わるところもあり、一般化するのは難しいですが、医師になって4年目の私が赴任した波照間島の場合、看護師さんは島に来て10ウン年のベテラン看護師でした。

私のように島のことを何も知らない若者が医師として赴任するにあたって、島のこともよく知っていて、こうやって赴任する島医者のこともよくわかっているスタッフの存在は非常に大きいのです。

島には1~2年では分かり得ない歴史やこれまでの住民の中の関係性があります。

背景を理解していない医師ほど「親子だから」とか、「いつも仲が良さそうだから」とか、「仕事は〇〇だから」、と目の前の患者さんを一般的な枠組みに当てはめて判断しがちです。

大きな病院、初診の患者さんには一般的な価値観で患者や家族に指導をすることはあるかもしれません。しかし、それは穿った見方をすれば、患者が受け流すことのできる関係性、医療者との距離感がある程度離れているからこそできることなのかもしれません。

これまでの文脈や患者との近接性を重視する島の診療所では、いい悪いは別にして、一般的な価値観に基づいて医療を提案すると患者にいい迷惑となることもあるのです。

こういった機微は島に長年暮らす看護師や事務員がいるからこそ気づくことのできるものでした。

島の診療所の様子

来たばかりの島医者は念願の赴任に際して鼻息荒いこともあれば、責任の重さに萎縮していることもあるかもしれません。おろおろしていることもあれば、危なっかしいこともあるかもしれません。

“だから2年間島の人はこの医者で我慢してね”、と伝えるのが島ナースの仕事ではありません。まずはそういった外からやってきた様々な医者を“島医者にする”のも仕事なのかもしれません。

島ナースの業務内容

本当にマルチな仕事が求められる島ナースの仕事ですが、一例を紹介しましょう。

よく大学で島の医療について話していると、「訪問看護はやっていますか?」と聞かれることがあります。もちろんやっています。医療・介護サービスとしての訪問看護はもちろん、インフォーマルな形での訪問があるのが島の特徴です。

ちょっと調子が悪そうな患者さん、目の前に気軽な入院施設があれば医師も入院させているかもしれないけれど、そのまま自宅に帰す事もあります。そんな時は看護師さんが家に帰る前に、翌日出勤する前に、パーっと家を訪問し様子を見てきてくれるのです。「昨日の何々さん、熱下がっていたよ」とか「今日もご飯食べられないみたいだから今日診療所に連れてきてもらいますね」と報告してくれるのです。

離島に限りませんが、医師は帰った患者さんの様子は気になるものです。その看護師さんの姿を見て、「あ、気になるなら見に行けばいいんだ」と私自身が学ばせてもらいました。

James Yan(晏陽初)という人が書いた『go to the people』という詩では、地域に入って活動した時、最高の指導者が行えば、最後に人々は、(指導者がいたからできたのではなく)自分たちがやったのだというでしょう、と締めくくられています。

島医者は約2年ごとに変わり、“ありがとう”、“島に医者がおらんと大変だ”と言われますが、ありがとう、ありがとうと言われているうちはまだ島のことを半分ぐらいしかわかっていないと思っておいたほうがいいかもしれません。

感謝され、「あなたがいないと困ります」という医療は、いずれ崩壊してしまいます。むしろそこにはマルチプレイヤーの島ナースや事務員がいてはじめて成り立っているのです。

参考文献

1.沖縄県立看護大学大学院: 島嶼看護の高度実践指導者の育成. http://www.okinawa-nurs.ac.jp/gp/gp_top.html(参照:2015-12-18)

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