国際化の時代、看護師にも英語は必要でしょうか? 移住者や観光客が増えているから、というのはもちろん、実はそれ以上に、看護師に英語が必要なワケがあるのです。看護師と英語の深ーい関係を、英語教育の現状に触れながら、解き明かしていきます。
観光立国日本の医療体制の現状
日本政府観光局の報告によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は、前年比29%増の約1341万4千人と過去最高を記録。国内のおもてなしムードも高まり、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに、日本政府が掲げる「訪日外国人旅行者数2000万人」の目標は現実味を帯びてきました。
その一方で、外国人観光客からあがる不安や不満は「言葉の問題」です。特に、医療面では英語の通じる病院が少なく、外国人患者を受け入れる体制が十分ではないと指摘されています。
もちろん、国を挙げて日本の魅力を伝え、観光立国にふさわしい受け入れ態勢の強化をめざす政府が、この問題を放っておくはずがありません。
日本は今、「外国人患者受入環境整備事業」を国家総ぐるみで取り組む姿勢です。この影響を受ければ、医療現場は一気に英語力が問われる職場へと変貌を遂げるでしょう。
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「言葉の問題」 解決のカギは医療通訳ではない!
まずは、東京オリンピックで拠点となる病院に医療通訳を配置し、語学のできる医療職者の育成を強化するといいます。
この動きは、オリンピック開催地である東京に限った話ではありません。オリンピックを皮切りに日本を訪れる外国人観光客は、日本全国に足を伸ばすことが予測されるからです。
しかし、ここに盲点があります。
実は、医療に精通した通訳の獲得は容易ではありません。医療通訳は2カ国語が話せるだけでなく、医療に対する全般的な知識も要求されるからです。
さらに、ほかの分野よりも通訳としての責任とリスクが伴い、通訳の世界で医療分野はもっとも嫌厭される分野だといわれています。
医療通訳獲得の難しさが露呈してくれば、病院側はもともと医療の知識をもつ医療職者の語学力強化に動き出すでしょう。特に、患者に最も近い看護師の語学力は喫緊の課題となるはずです。
そうした中、看護師過剰時代が到来すれば、採用側の病院は、莫大な時間とお金のかかる語学力の「育成」ではなく、はじめから語学力を備えた看護師の「獲得」に乗り出すでしょう。
次回は、“選ばれる時代”のキーワードは「英語力」についてです。