• 公開日: 2014/1/5
  • 更新日: 2020/3/26

【連載】ナースに英語は必要かしら?

第9回 看護学科新設ラッシュは何をもたらすか?

国際化の時代、看護師にも英語は必要でしょうか? 移住者や観光客が増えているから、というのはもちろん、実はそれ以上に、看護師に英語が必要なワケがあるのです。看護師と英語の深ーい関係を、英語教育の現状に触れながら、解き明かしていきます。


看護学科新設ラッシュの背景

「看護学科新設ラッシュ」が話題になっています。

看護学科のある大学は、10年間で約2倍の226校(2014年度)まで増加し、2015年度も10校以上が開設しました。

こうした背景には、私立大学の4割が定員割れという現状があります。大学側にとって、人気のある看護学科は、学生を確実に集められるおいしい市場であり、救いの神でもあるといっていいでしょう。

実はこうした「看護学科新設ラッシュ」はすでにアメリカ全土でブームとなった過去があり、「教育は奉仕活動ではない。ビジネスだ!」と改めて世間に知らしめることになりました。

アメリカで戦略的に行われた教育ビジネスの一例をここで紹介しましょう。
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アメリカの看護教育ビジネスがもたらしたもの

ある大学がアメリカ政府と共同して就業調査を実施、そこで深刻な看護師不足を指摘し、「引く手あまたの安定した職業は看護職である」という結果を発表しました。

その後、多くの学生が看護学を専攻し、大学は次々と看護学科を設立、一気にトップクラスの人気学科となりました。

一方で、学生に待ち受けていた現実は、看護師が増えすぎたことによる予想外の就職難でした。就職できない学生は、大学院へ進学し、さらに上の学歴を目指しました。

大学側にとって、1000万円近い高額な学生ローンが上乗せ可能となるこの就職難は、願ったり叶ったりの状況だったのです。

残念ながら、経験を非常に重視するアメリカで、学歴のある学生が就職できる保証はなく、最悪残るのは高学歴と高額な学生ローンというケースもあります。

アメリカの「看護学科新設ラッシュ」がもたらしたもの、それは看護師過剰時代と看護師の高学歴化であり、その恩恵を受けたのは看護師ではなく、大学だったのです。

日本では、年間2万人近くの大卒新人看護師が輩出されます。今後、受験者は学歴志向で大学を好み、大卒看護師は間もなく過半数を占めるでしょう。そうなると、看護師の最低学歴条件が“大卒”になる未来も想像できます。

事実、看護師過剰に至ったアメリカの看護師最低学歴条件は“大卒”が一般的です。さらに、アメリカ医学研究所の方針として、2020年までに学位をもった看護師を全体の80%以上にすることを目指し、病院は在職中の大卒ではない看護師に対し、学士取得の命令をすでに下しているのです。

次回は、看護師安定神話を崩壊に導くものについてです。

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