国際化の時代、看護師にも英語は必要でしょうか? 移住者や観光客が増えているから、というのはもちろん、実はそれ以上に、看護師に英語が必要なワケがあるのです。看護師と英語の深ーい関係を、英語教育の現状に触れながら、解き明かしていきます。
「英語は勉強するな」のもっともな理由
英語熱が広がる中、この社会の動きに「待った」を唱えるべく「英語を学ぶな!」という声も耳にします。
その主な理由として挙がるのは、
- 英語がなくても生活できる
- 普段使わないものに、お金と時間をかけるのはもったいない
- 早いうちから英語の苦手意識を植え付ける
- もっと先に学ぶべきものがある
確かに、グローバル社会が叫ばれる現在の日本であっても、全く英語ができないままで問題なく生活はできるでしょう。
『日本人の9割に英語はいらない』(祥伝社刊)の著者、成毛眞氏は、9割の日本人が英語を必要としない社会で生活しているという統計データを算出しています。
英語が必要になるのは、年に一回の海外旅行くらいという人も少なくないでしょう。だとしたら、そのために英会話に通うのは、1年に一度しか乗らないのにマイカーを購入するのと同じくらい無駄な出費と言いたくなるのも納得できます。
学生に焦点を当てると、英語を使って何かがしたいというよりも「英語を勉強しているのはテストのため」という学生が圧倒的ではないでしょうか。
事実、私も学生時代はその一人でした。残念ながら、テストのためだけに学ぶという環境では、実用的な英語は身に付かない。それは多くの人が実証済みです。
「中学から高校までの6年間英語を勉強したにもかかわらず、全く英語が身に付いていない」。この言葉にどれだけの人がうなずくでしょうか。
危険が潜む英語教育の低年齢化
低年齢化する英語教育にも異論はあります。
「英語に対する抵抗感をなくすこと」「英語の音やリズムに触れたり慣れたりすること」というメリットは確かにあります。
しかし、デメリットは苦手意識です。
食べ物と一緒で、一度苦手意識が植え付くと、その克服は容易ではありません。「ピーマン嫌い」「ニンジン嫌い」の子どもなら、細かく刻んで料理に隠すことはできます。
しかし、「英語嫌い」の子どもはそうはいきません。中学からの英語は、隠すどころか本格化し大学まで続くのです。さらに、成績評価が苦手意識を増幅させ、新たに挫折感を植え付けることもあります。
小学校での英語教育の必須化は、教育現場の新たな挑戦と言っても過言ではありません。2020年には、小学校英語の正式教科化が全面的に実施される見込みです。
「我が子には英語を話せるようになってほしい」と88%の保護者がこの方針に賛成している一方、教育現場からは現場とかけ離れた理想論の押しつけだと異論が噴出ているのも事実です。
そうした中、早い段階での英語教育に待ったをかけるもっとも注目すべき異論があります。それが、「もっと先に学ぶべきものがある」です。
次回は、英語教育の落とし穴についてです。