「月のうた」
著者名/出版社名
穂高明/ポプラ文庫
あらすじ
小学生で母を亡くした少女の高校卒業までの物語。
成長過程の様々なエピソードが、少女、父、義母、母の親友、友人の視点から綴られます。
題名に呼応するように、各章のタイトルも、月のに関係した言葉でまとめられています。
自分の中に芯をしっかり持った少女は、周囲の人々に見守られながら成長していきます。
オススメポイント・エピソード
母は最後まで小学生の少女には病状を告げず、少女にとっては突然に逝ってしまいます。迷いながら、結果そうなってしまった母の選択でした。賢い少女は思います。なぜ母は、自分にだけ話してくれなかったのか、話してくれればもっとそばにいれたのに…。母になってから読んだので、少女の思い、母の思い、両方に感情移入してしまい辛いところでした。
父は亡くなった母と全くタイプの違う人と再婚し、母に代わって少女を育ててくれた祖母は新しい家族から身を引くように自ら施設に入ります。一見だらしないように誤解されそうな天真爛漫な義母は、少女の利発さを素直に尊敬し、少女も義母に打ち解けていきます。同じエピソードが様々な視点から語られる中で、読み手もいろいろなことに気づかされます。
少女は、自分の中に芯をしっかり持ちながら、周囲の意見もきちんと耳を傾けられる子です。
いろいろな場面で、この母、この祖母にしてこの子ありと感じました。
早くに実母を亡くしましたが、周囲の静かな見守りの中で、真っ直ぐに成長していきます。
少女に亡くなった母の思いが理解される日はきっとくることを願います。
登場人物すべてにエールを送りたい優しい物語です。
続編を是非読んでみたい作品です。