海外の医療に興味があっても、実際に海外を訪れ、医療現場に触れることは容易ではありません。そこで、カリフォルニア州サンディエゴ市最大のERを持つSan Diego Kaiser Permanente病院(ベッド数392床、ERベッド数100床、年間のER患者数約98,000人、手術件数25,000件という大規模病院)での自身の経験と調査をもとに、アメリカにおける最新の病院事情をまとめました。
ムレやモレ……頭の痛いおむつ問題
今回は、おむつのおはなしです。
看護師として仕事をしていると、大人用おむつはかなり身近なものになります。
大人のおむつ交換は1日平均6.6回で、健常人のトイレの回数とほぼ同じです。
最近のおむつは性能も良く、ムレやモレが少ない構造に進化していますが、モレないが故におむつかぶれが重症化してしまうのも事実ですよね。
そこで今回は、アメリカのユニークなおむつかぶれ対策をご紹介します。
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徹底した褥瘡予防・おむつかぶれ対策、行き着いたアメリカの方法とは?
一般病棟の2時間ごとの体位交換に回った際、驚きの光景を目にしました。
全員おむつをしていません。
ベッド上で動けない患者さんは、吸収パットをおしりの下にあてているだけだったのです。
日本人看護師の私は「おむつは必ずするもの」と思っていたので、この垂れ流しとも言える光景に最初はかなり違和感を覚えました。
しかし、考えてみると、尿で濡れているかいないかが一目瞭然、おむつかぶれの心配もありません。意外と掛布団を汚すこともなく、清拭も簡単でなんとも効率的でした。
状況に応じて「おむつをしない」という選択肢もありのかもしれない、と考えさせられました。もちろん、希望があればおむつをすることはできますよ。
徹底した褥瘡予防管理のワケ
さて、アメリカでは、看護師に徹底した褥瘡予防管理、皮膚観察が求められます。
なぜなら、おむつかぶれや褥瘡など院内で生じた損傷や感染の治療費は、全て病院負担になってしまうからです。
この病院負担額が半端ない金額です。
U.S. Department of Health & Human Servicesの報告 によると、
- 院内での褥瘡年間発生件数:250万件
- 褥瘡の一人あたりの平均治療費:$20,900~$151,700(約200万円~1500万円)
- 褥瘡の年間治療病院負担額:$9.1~$11.6million(約900億円~1100億円)
褥瘡がステージ4まで及ぶと一人あたりの治療費は1000万円を優に超えるといいます。病院が徹底した対策を図るのも納得ですね。
次回からは、アメリカの医療について紹介します。第18回は「保険制度」のはなしです。