• 公開日: 2020/1/7

【連載】看護師 国家試験対策・過去問

第111回看護師国家試験対策|ズバリここが出る【予想問題】【解答・解説アーカイブ】

このページでは、第111回看護師国家試験に「ズバリここが出る」と予想した【予想問題】の解答・解説を掲載します!


■ 執筆・解説

廣町 佐智子<日本看護研究支援センター 所長>

看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。






予想問題01:球体濾過量(GFR)の説明で正しいのはどれか。

1.糸球体で1分間に作られる原尿の量を示している。
2.血中BUN(尿素窒素)の量をもとに計算することができる。
3.抗利尿ホルモン(ADH)の影響を受ける。
4.加齢とともに上昇する。


解答:1

1.(○) 血漿が糸球体で濾過されたものを原尿といい、その後、99%が尿細管で再吸収(再び血中に戻される)され、残りの1%が尿となる。糸球体濾過量とは、1分間に糸球体でつくられる原尿量であり、糸球体の濾過機能を反映する。通常は成人女性で100ml/分以上、成人男性で110ml/分以上である。
2.(×) 糸球体濾過量は、尿中クレアチニン量や、1日尿量、血中クレアチニン量、身長・体重をもとに算出される(ちなみにクレアチニンは、糸球体で濾過されたあと、尿細管では吸収されない老廃物で、糸球体の機能を知るうえで重要な指標になっている)。
3.(×) 脳下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンは、尿細管で水の再吸収を促進させる働きがある。作用する部位が尿細管であるため、糸球体濾過量には影響しない。
4.(×) 加齢により、糸球体を構成する毛細血管が障害されるので、糸球体濾過量は低下する。この他、糸球体障害につながる腎疾患や糖尿病、高血圧症、高尿酸血症も糸球体濾過量低下の原因となる。


なぜこの問題が出題されそうなのか

 腎機能を評価する指標として、糸球体濾過量(GFR)は重要です。末期腎不全で透析導入となるGFRがが、一般的に15ml/分と言われています。透析患者の多くは、糖尿病性腎症を原因としており、透析にかかる費用は高額なため、医療保険の運営を圧迫しています。そのため、医療保険が行う健康診断では特に腎疾患の原因となる糖尿病や高血圧症、高尿酸血症の予防や早期発見に力を入れています。こうした現状を理解するうえで、糸球体濾過量は重要なキーワードです。






予想問題02:アナフィラキシーショックでみられるのは次のどれか。

1.血圧の上昇
2.末梢の冷感
3.喉頭浮腫による喘鳴
4.毛細血管透過性の低下


解答:3

1.(×) ショックには様々な原因があるが、すべてに共通しているのは、血圧低下(一般的に収縮期血圧90mmHg以下)で、心臓に近い重要臓器(脳、肺、肝、腎)にすら血液供給が不足する状態をさす。心臓から最も遠い重要臓器である腎臓への血流が真っ先に減少するため、尿量減少も伴う。
2.(×) 血圧を低下させる主な因子として、(1)心拍数が少ない、(2)循環血液量が少ない、(3)末梢血管(手足の血管)が拡張するが挙げられるが、アナフィラキシーショックは、(3)が原因の「血液分布異常性ショック」に分類される。手足の血流は多いため、末梢冷感はない。
3.(○) 
4.(×)
アナフィラキシーショックでは、Ⅰ型アレルギー(アレルギーとは、過剰な異物攻撃をさす)で、異物に対してIgE抗体で戦い、それとともにIgEと結びついた肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンという他の白血球を動員する化学物質が激しく分泌される。その影響で、末梢の血管が広がり、血管に空いた小孔も広がり(血管透過性亢進)、大洪水と共に白血球が動員される。その結果、全身の体表や粘膜の浮腫が生じる。喉頭浮腫が生じてれば、喘鳴がみられる。


なぜこの問題が出題されそうなのか

 コロナワクチンの接種会場において、ワクチンを異物と認識し、激しいⅠ型アレルギー(アナフィラキシーショック)が出現しないか、接種後15分程度待機したかと思います。これは、Ⅰ型アレルギーが「即時型アレルギー」といい、異物にすぐ反応して出現するためです。こうしたトピックから、アナフィラキシーショックは今年出題される可能性があります。

 ちなみに、実際に会場で最も多く出現したショックは、同じ血液分布異常性ショックの中の「血管迷走神経反射」によるものと聞いています。注射をしたという緊張感で、ドキドキ興奮しすぎて血圧が上昇したさいに、「危ない」と人体がとっさに血圧を下げてしまうために生じるショックで、命への影響はありません。






予想問題03:診療報酬について適切なのはどれか。

1.1点100円で計算される。
2.被保険者の収入に応じて同じ医療サービスでも点数が異なる。
3.公的医療保険の種類によって同じ医療サービスでも点数が異なる。
4.保険外診療には適用されない。


解答:4

「診療報酬」とは、公的医療保険制度の中での、医療の公定価格であり、全国一律の値段が決められている。診療報酬のうち、患者の自己負担を差し引いた額が公的医療保険から医療機関に支払われている。
1.(×) 診療報酬は、具体的な医療行為ごとに点数として示され、1点10円で計算される。
2.3.(×) 診療報酬は、全国一律の医療の公定価格であり、被保険者の収入や加入している公的医療保険によって調整されることはない。
4.(○) 診療報酬は保険外診療には適用されず、保険外診療にかかった費用は全額、患者の自己負担となる。

なぜこの問題が出題されそうなのか

 国民医療費(年度内の医療機関などにおける傷病の治療に要した費用の合計)は2018年度に43兆3949億円と増加の一途を示しています。背景に平均寿命の延びや、高齢化率(総人口に占める高齢者人口の割合を高齢化率といい、2021年には29.1%)があります。国民医療費の財源ですが、患者の自己負担金と、公的医療保険が集めた保険料では間に合わず、公費(税金)が投入されています。

 今後、高齢化率と平均寿命がますます延びることを考えると、国民医療費に対する財源の不足が懸念されます。国民医療費を減らすための対策として、一次予防(健康増進、疾病予防)に力を入れたり、在院日数を短くして早期に在宅療養にシフトした仕組みを作ったりするなどが必要になります。診療報酬はこうした時代の潮流に応じて2年に一度「診療報酬改定」として見直され、必要な対策への点数が高く付与されています。

 看護師にも医療の経営的な側面を理解する必要があり、国家試験でも診療報酬に関する問題が散見されるようになりました。この問題を通して、医療の財源についても関心を持ってほしいです。






予想問題04:検査前の食事の影響を受けやすいのはどれか。2つ選べ。

1.低比重リポタンパクコレステロール
2.中性脂肪
3.血糖値
4.グリコヘモグロビン
5.白血球数


解答:2、3

1.(×) 総コレステロール(TC;基準値130~220mg/dl)や高比重リポタンパクコレステロール(HDL-C;基準値40~65mg/dl)、低比重リポタンパクコレステロール(LDL-C;60~120mg/dl)は検査前の食事の影響をほとんどない受けないと言われている。
2.(○) 中性脂肪(トリグリセリド;基準値50~149mg/dl)は、食物から摂取され、小腸から吸収されたものが大半で、食後4~6時間でピークとなる。 3.(○) 血糖値は、食後30分~1時間後に小腸からのブドウ糖の吸収によりピークに達する。
4.(×) グリコヘモグロビン(HbA1c;基準値4.6~6.2%)とは、ヘモグロビンにブドウ糖(グルコース)が結合したものをいい、血糖値が高い場合に、少しずつその割合が上昇する。グリコヘモグロビンは寿命が120日と長いため、長期間の血糖のコントロール状態を知ることができる。直前の食事で血糖値が上がったとしても、その影響は受けにくい。
5.(×) 赤血球数や白血球数、血小板数は検査前の食事の影響をほとんど受けない。


なぜこの問題が出題されそうなのか

 基礎看護学では、保助看法でいう、「療養上の世話」と「診療の補助」に関する基礎知識が出題されます。基礎看護学の問題は、例年安定しており、時代によって大きく変わることはありません。その中で、「診療上の補助」に関する問題の正答率が低い傾向にあります。これは、実習で経験する機会が少ないためと考えます。

 実習では経験できなくても、看護師になればすぐに使うことになる看護技術は頻出です。たとえ実習で見学だけになってしまったとしても、自分が責任をもって行うつもりで、学ぶ必要があるでしょう。






予想問題05:狭心症と比較した心筋梗塞の症状の特徴はどれか。

1.関連痛がある。
2.前胸部痛がある。
3.痛みが強い。
4.痛みの持続時間が長い。


解答:4

1.(×) 関連痛とは、内臓の痛みとともに感じてしまう皮膚や筋肉の痛みのことをいう。内臓の痛みを中枢に伝達する自律神経の経路に、皮膚や筋肉の痛みを伝達する感覚神経も走行しており、中枢が内臓の痛みと皮膚・筋肉の痛みを混同してしまうのが原因である。狭心症や心筋梗塞は、下図のような部位に関連痛を感じることが多い。
2.(×) 前胸部痛は、狭心痛・心筋梗塞に共通する。
3.(×) 心筋梗塞の痛みが狭心痛の痛みより強いとは限らない。糖尿病を有する患者や高齢患者の場合は、心筋梗塞であっても胸痛を強く感じない場合も多い。また、胸痛より関連痛の方を苦痛に感じる場合すらある。
4.(○) 狭心症患者の胸痛の発作時間が5分程度なのに対し、心筋梗塞の場合は、ニトログリセリンを舌下したとしても20分以上持続する。

図 関連痛を感じやすい部位


なぜこの問題が出題されそうなのか

 心疾患は2019年の死因の第2位で、そのうち上位を心不全や虚血性心疾患が占めています。虚血性心疾患は、救命されてもQOLへの影響が大きく、成人の発達課題の遂行を阻害することから、疾病予防と健康づくり(一次予防)、早期発見(特定健診などの二次予防)、早期治療やリハビリテーション(三次予防)のそれぞれに力が入れられています。

 虚血性心疾患は動脈硬化が基礎にあります。動脈硬化の発症要因には、喫煙、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などがあり、頻出です。こちらもしっかりと対策しておきましょう。






予想問題06:経口血糖降下薬を内服している糖尿病患者が低血糖に陥る原因として考えられるのはどれか。

1.糖質の過剰摂取
2.感染症の発症
3.アルコールの飲用
4.利尿剤の内服


解答:3

1.(✕) 糖質の過剰摂取は、血糖値の上昇につながりやすい。糖質(炭水化物)は指示エネルギーの40~60%、蛋白質は20%までとし、脂質は25%程度とするのが適切である。
2.(✕) 感染症、手術、外傷など身体にストレスが加わると、交感神経が刺激されたり、副腎皮質ホルモンが分泌されたりして、グリコーゲンや脂肪からブドウ糖への分解が進み、血糖値が上昇する。
3.(○) 経口血糖降下薬もアルコールも肝臓で分解(解毒)されるが、アルコールの分解の方が優先される。そのためアルコールと経口血糖降下薬の服用のタイミングが近い場合、経口血糖降下薬の分解が遅れ、低血糖に陥りやすい。
4.(✕) 利尿薬によって尿量が増加すると、血漿量が減少して濃縮され、血糖値が上昇する。


なぜこの問題が出題されそうなのか

 2016年の段階で、糖尿病患者数は1000万人にものぼります。また、2019年の「国民健康・栄養調査」によると「糖尿病が強く疑われる人」の割合は男性 19.7%、女性 10.8%であり、ここ10年間横ばい状態が続いています。多数の国民が罹患している疾患なので、当然、出題率は高くなります。  糖尿病は血糖コントロールが十分でないと、様々な臓器障害が引き起こされるため、食事・運動・薬物療法の指導が必要です。「正常な状態で血糖がどう調整されているか」という生理学的な知識をベースに糖尿病の病態や各療法の意義について整理しておくことが重要です。

 経口血糖降下薬の副作用に低血糖があり、重度の低血糖の場合は、大脳の障害で片麻痺や認知症が引きおこされる場合もあるため、低血糖にならないための指導についてもしっかり学んでおきましょう。






予想問題07:成人の、ストレスに対するコーピング行動を強化するための方法として適切なのはどれか。

1.今後起こりうる情報を事前に伝える。
2.情動志向型コーピングより、問題解決型コーピングを重視する。
3.これまで培ってきたコーピング行動をさらに強化する。
4.看護師主導で新しいコーピング行動を指導する。


解答:1

1.(○) 今後起こりうるストレスに関する情報を伝えることで、その人が事前に対策(どんなコーピング行動をとるか)を考えることができる。
2.(×) 問題解決型コーピングとは、ストレスの原因を根本的に取り除いて、ストレスフルな状況から抜け出せるよう行動することである。問題解決型コーピングが重視されすぎると、それ自体がストレスになったり、疲れてしまったりすることがある。情動志向型コーピング(辛いと感じる気持ちを変化させたり解消させたりして、ストレスをコントロールすること)とのバランスをとることが必要である。
3.(×) コーピング行動の強化のためには、これまで培ってこなかったコーピング行動に着目し、強化することが重要である。
4.(×) その人が特定のコーピングをとるのには、その人なりの理由がある。そのため、新しいコーピング行動を学ぶことが逆にストレスになる場合も多い。本人が、「これまでのコーピング行動では限界がある」と気づき、自ら新しいコーピング行動の必要性を実感できるように援助する。


なぜこの問題が出題されそうなのか

 現代はストレス社会であり、ストレスから生活習慣が乱れ、生活習慣病や精神的な不調が生じることが多くあります。現代に生きる成人が、健康的な生活を維持しながら、様々な活躍場面で「生産性」を発揮していくには、ストレスの原因を低減させることはもちろん、自らのコーピング行動を強化することも重要です。

 これからの看護師は様々な健康レベルの成人のコーピング行動を分析し、今後どんなコーピング行動が必要になるのか、また本人がコーピング行動獲得の必要性に気づくにはどうしたらいいのか、心理学や教育学の知識も援用して考えていくことがますます必要になるでしょう。






予想問題08:老人施設に入所した高齢者のリロケーションダメージを低減させるために適切なのはどれか。

1.新しい生活の場のルールに従ってもらう。
2.私物の持ち込みを制限する。
3.新しいコミュニティづくりを支援する。
4.日常生活援助は看護師が主導で行う。


解答:3

リロケーションダメージとは、住み慣れた場所から新しい場所への転居することによって、人的・物的環境が変化し、ストレスから心身に弊害が生じることをさす。特に高齢者は不安や混乱から心身への影響が大きい。


1.(×) 新しいルールも重要だが、まずは高齢者の生活リズムを尊重する。
2.(×) なじみのある私物の持ち込みはストレスを低減させる。
3.(○) かつてのコミュニティから離れることは大きなストレスとなる。新しいコミュニティが作れるよう、レクレーションや集会などへの参加を促す。
4.(×) 高齢者自身が新しい生活リズムを作っていくことがストレスを低減させる。看護師は高齢者が主体的に日常生活を送れるように援助する。


なぜこの問題が出題されそうか

 高齢者は予備能力(踏ん張って耐える力)が不足しているため、若い人には耐えられる環境の変化やかぜのような感染症で体調を崩しやすいという特徴があります。また、寝込んでしまって能動的に活動する機会が減ってしまうと、容易に廃用症候群に陥ってしまいます。高齢者の自立生活の能力を維持するには、リロケーションによるダメージをアセスメントし、予防的に関わる必要があります。こうした必要性から、問題を作成してみました。

 高齢者の自立生活の維持が話題となるなか、高齢者の機能低下を示す概念も次々に紹介されています。リロケーションダメージのほかにも、サルコペニア(加齢や疾患により、筋肉量が減少すること)、ロコモティブシンドローム(運動器の機能が低下し、立ったり、歩いたりといった移動機能が低下した状態)、フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)などが挙げられます。

 これらの言葉を用いる機会は今後ますます増えると予測されるため、正しく理解しているかどうか出題される可能性は高いでしょう。






予想問題09:次のうち、老化によって低下(減少する)ものはどれか。

1.心臓の重量
2.胸腺の重量
3.末梢血管抵抗
4.感覚閾値


解答:2

1.(×) 心臓は、抵抗性の増した(通りにくくなった)血管に血液を送り出すために肥大・肥厚し、重量が増す。
2.(○) 胸腺はTリンパ球の分化・成熟に関与するリンパ性器官であり、思春期が最大で、以降は徐々に小さくなる。その結果、老年期は免疫機能全体が低下し、感染症にかかりやすくなったり、癌の発症が増加したりする。
3.(×) 加齢とともに動脈硬化が進行し、末梢血管抵抗(血管の通りにくさ)が増大する。その結果、収縮期血圧が上昇する。
4.(×) 感覚閾値とは、感じることができる最小の刺激のレベルをさす。体性感覚(表在感覚や深部感覚)、特殊感覚(嗅覚、視覚、味覚、聴覚、平衡覚)ともに閾値が上昇する(大きな刺激でないと感じない)。


なぜこの問題が出題されそうか

 老化はすべての人に非可逆的に起こります。老化に適応し、老化の程度に応じた生活を工夫することによって、高齢者は健康を維持することが可能です。しかし一方で、ちょっとした環境の変化や体調の悪化が老化を加速させ、病的状態へと悪化することも多々あります。

 看護師は、高齢者が病的状態に陥るのを防ぎ、自立生活を維持きるよう援助する必要があります。そのため国家試験でも、老化についての問題は頻出であり、様々な角度から出題されています。ここでも老化の問題を取り上げてみました。ただ少し違うのは、「末梢血管抵抗」や「閾値」などの専門用語を含め、「上昇」・「低下」が何を意味するのか試している点にあります。

 これは、国家試験問題のパターンのひとつで、問題の難易度を調整しているのです。国家試験で扱っている言葉は、すべて意味までしっかり理解できるようにしておきましょう。






予想問題10:頭部外傷で緊急入院した乳児。覚醒しているが、視線はあわない。ジャパン・コーマ・スケール(JCS)による意識レベルは次のうちどれか。

1.l-1
2.l-3
3.ll-10
4.ll-30
5.lll-100


解答:2


ジャパン・コーマ・スケール(JCS)乳幼児用




 

なぜこの問題が出題されそうか

 JCSは、短時間で簡便に意識レベルの評価を行うことができ、脳幹への侵襲をアセスメントする上で有用なため、必修問題や成人看護学の状況設定問題などでしばしばみかけます。JCSには乳幼児用があり、出題基準にはあっても、これまで一度も実際に出題されていないので、今回取り上げてみました。学童以上に用いるJCSについての基礎知識があれば難しくはない問題です。

 JCSに限らず、臨床でよく用いるスケール(「アプガースコア」や「デンバー式発達スケール」など)は出題頻度が高いので注意してください。






予想問題11:生涯にわたる凝固因子製剤の補充療法が必要な疾患はどれか。

1.血友病
2.特発性血小板減少性紫斑病
3.急性白血病
4.IgA血管炎


解答:1

1.(〇) 凝固因子の合成に関わる遺伝子が先天的に欠損しているため、凝固因子を自ら合成することができない。そのため、生涯にわたり凝固因子製剤を家族または自分で注射して補充する必要がある。
2.(×) 脾臓の機能が亢進して、血小板数が減少し、出血傾向が出現する疾患である。脾臓にあるリンパ球が自らの血小板を過剰に壊す自己免疫性疾患である。リンパ球の働きを抑えるために副腎皮質ステロイドを用いることが多い。
3.(×) 急性白血病は、白血病細胞によって正常な造血幹細胞が減少し、血小板の減少によって出血傾向を示す。化学療法によって治療し、対症療法として血小板輸血を行うこともある。
4.(×) 全身の小血管が炎症を起こし、点状出血が生じる。IgA抗体が関与していると考えられている。予後良好で自然治癒する場合が多い。


なぜこの問題が出題されそうか

 国家試験では、止血・血液凝固のメカニズム(血管因子、血小板因子、凝固因子が関与)を問うものが多く出題されています。そこで、今回は出血傾向をきたす疾患と、原因因子との関係について理解度を確認する問題を作成してみました。

 また、正解となる血友病は、伴性劣性遺伝という遺伝形態をとります。男子にのみ疾患が現れるのが伴性劣性遺伝病で、血友病やデュシェンヌ型筋ジストロフィーはその代表です。遺伝疾患は先天性の障害を持ち、幼くして亡くなったり、生涯にわたって自己管理が必要になったりすることから小児看護学のテーマとして重要です。






予想問題12:排卵していると判断できる情報は次のうちどれか。

1.月経がある。
2.基礎体温が高温を維持している。
3.基礎体温が低温相と高温相を繰り返す。
4.基礎体温が低温を維持している。


解答:3

1.(×) 月経をつかさどるのはエストロゲンである。初経から閉経のあいだ、初経の頃と閉経の頃は、たとえ月経はあっても排卵はないことが多い。排卵を伴わない月経を無排卵性月経という。
2.(×) 排卵すると、黄体からプロゲステロンが分泌され、基礎体温が高温になる。高温が持続している場合は、妊娠したことを意味する。
3.(〇) 卵胞を育てる期間である卵胞期はエストロゲンのみの分泌で、体温は低温である。卵胞が育ち、排卵が起こると、黄体期に切り替わり、黄体からのプロゲステロンの分泌が加わり、着床の準備が進められる。その準備のひとつが基礎体温の上昇がある。上昇した体温は月経と共に低温に戻るが、基礎体温が低温と高温を周期的に繰り返していることこそ、排卵していると判断できる情報である。
4.(×) 排卵のない無排卵月経の場合の基礎体温である。



なぜこの問題が出題されそうか

 女性の初婚年齢の上昇に伴い、不妊症の女性も増加しています。不妊には様々な原因があり、女性側の原因としてはホルモン異常、無排卵、抗精子抗体の存在、卵管の狭窄、子宮筋腫等による着床障害があります。不妊の原因や治療を理解するうえでは正常な月経周期と排卵のメカニズムの理解が必要です。
 月経周期は、出題の視点を変えながら、毎年のように出題されているほど重要なテーマです。そこで今回も、問題作成してみました。






予想問題13:退行性変化と進行性変化をともに促進させるのは次のうちどれか。

1.産褥体操
2.水分摂取
3.吸啜刺激
4.腹部冷罨法


解答:3

1.(×) 産褥体操は悪露の排出を促し、子宮復古を促す。すなわち退行性変化を促進する。
2.(×) 水分摂取は退行性変化(子宮復古)や進行性変化(乳汁分泌)とは直接関係がない。
3.(〇) 吸啜刺激は、視床下部を刺激し、下垂体前葉からプロラクチンを分泌させ、乳汁分泌を促進させる(進行性変化)一方、下垂体後葉からのオキシトシンの分泌を促進させ、子宮復古(退行性変化)を促進させる。
4.(×) 腹部冷罨法は分娩直後の子宮復古の促進に用いられる。


なぜこの問題が出題されそうか

 妊娠・分娩・乳汁分泌は一連のホルモンの作用によって進行します。看護師はこのホルモンの作用が適切に進み、身体の変化に女性が適応できるように援助する必要があります。
 母性看護学の問題は比較的安定していて解きやすくできていますが、ホルモンの知識が問われる問題になると正答率が下がる傾向にあります。そこで、皆さんの力を試す目的で、あえてこのような問題を作成してみました。また、国家試験では、言葉の意味を正確に理解しているかを試す問題が多く出題されます。今回、問題文に「退行性変化」と「進行性変化」という言葉を入れてみましたが、正しく理解できていましたか?
 わからなかった場合はきちんと確認しておきましょう。






予想問題14:うつ病の極期にみられる症状は次のうちどれか。

1.カタレプシー
2.昏迷
3.フラッシュバック
4.アンビバレンス


解答:2

1.(×) カタレプシーとは、統合失調症の「緊張型」にみられる症状で、ある姿勢をとらせると、いつまでもその姿勢をとり続けるような状態をさす。
2.(〇) 昏迷とは、意欲が極端に失われた状態で、意思や行動が認められなくなる状態をさす。うつ病の極期にみられる症状で、自殺念慮があったとしても、行動に移す意欲はない。食事、排泄、清潔など日常生活全般の援助が必要になる。
3.(×) フラッシュバックとは、突然、外傷体験(災害、虐待など)をありありと思い出すこと。急性ストレス障害や、心的外傷後ストレス障害(PTSD)で出現する症状である。
4.(×) アンビバレンスとは量価性ともいわれる。同一対象に、相反する感情(愛と憎しみ、尊敬と軽蔑など)を同時にもつことで、統合失調症にみられる。


なぜこの問題が出題されそうか

 精神疾患の多くは、血液検査や脳波、画像診断等で異常値が示されません。診断は、精神症状を中心に行っています。精神疾患の国際的な診断基準である「DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)」をみても、診断は、患者の精神症状によることがわかります。精神医療においては、精神症状を示す言葉を正確に理解することは大前提なので、看護師国家試験でも多数出題されています。
 特にうつ病の患者数は多いので、しっかりと症状と意味を理解しておく必要があるでしょう。






予想問題15:投影法を用いた検査は次のうちどれか。

1.矢田部・ギルフォード性格検査(Y-G検査)
2.ロールシャッハテスト
3.東大式エゴグラム
4.田中ビネー式知能検査


解答:2

1.(×) 質問紙による性格(人格)検査である。12の性格特性に関する120の質問項目からなる。
2.(〇) 投影法を用いた性格(人格)検査である。インクの染みでできた10枚の図を、被験者がどう見るかを分析する。
3.(×) 質問紙による性格(人格)検査である。交流分析理論に基づいた53の質問項目からなる。
4.(×) 2歳~成人までの一般知能の検査である。様々な課題を行うことで知能を明らかにする。
「投影」とは、防衛機制(自分を不安から守るための心の動き)のひとつである。ちなみに「防衛機制」の理論はフロイトの娘のアンナ・フロイトが確立した。「投影」とは、自分の認めたくない衝動やコンプレックスを、他の人間に押し付けてしまう(帰属させる)心の働きをさす。例えば、自分がある人に憎しみを持っていて、しかもそれを認めたくないときに、「相手の方が自分に憎しみをもっている」と思うようなことである。ロールシャッハテストでは、インクの染みに対して「憎しみに歪んだ顔に見える」などと患者が心の中を投影するので、その内容を分析して人格を明らかにする。


なぜこの問題が出題されそうか

 「防衛機制」に関する理論は、精神医療の現場で現在も用いられているので、看護師も理解していく必要があります。言葉が難しいので正答率が低くなりがちです。加えて防衛機制を応用した「検査」となると、あまり学習していない人が多いので、あえて選択してみました。



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