• 公開日: 2022/2/7

ズバリここが出る「在宅看護論」「看護の統合と実践」第111回看護師国家試験【予想解説】


「在宅看護論」では、在宅看護の基本と、在宅療養者に応じた援助、地域包括ケアシステムについて扱います。
「看護の統合と実践」では看護管理、安全管理、災害看護、国際看護などについて扱っています。





「在宅看護論」は在宅療養者の支援について学びます。「看護の統合と実践」で扱うのは看護管理、安全管理、災害看護、国際看護です。


何を習熟することが求められるの?


 「在宅看護論」では3つの目標が設定されています。
 1)在宅看護の対象の特徴や自立支援などの基本となる概念を理解すること
 2)様々な疾病を持つ人の療養管理や、日常生活の援助について理解すること
 3)地域包括ケアシステムにおける在宅看護の位置づけと看護の役割について理解すること
 です。


 目標1)では、施設看護とは異なる在宅看護の特徴をしっかり理解することが求められます。また訪問看護制度について、開設基準からサービス開始までの流れ、介護保険や医療保険・障害者総合支援法の利用について問われます。


 目標2)では、在宅療養をする様々な年代の患者の療養管理や日常生活の援助について問われます。在宅療養で多いのは、人工呼吸器を装着している重症心身障害児(者)や神経難病の患者、在宅酸素療法を行っている慢性閉塞性肺疾患患者、終末期の癌患者などです。様々な病期にある患者の自立支援とQOLの維持、権利擁護についての学びが必要です。


 目標3)では、地域包括ケアシステムを構成する、行政、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、介護サービス事業所についてと、そのなかでの看護の役割について学ぶ必要があります。 「看護の統合と実践」では、看護管理、安全管理、災害看護、国際看護それぞれの基礎知識を学ぶことと、様々な発達段階にある対象の、多様な状況における看護について学ぶことが求められます。より実践に近い状況でのアセスメントや優先度の判断、看護実践についての知識は重要度が増しています。


「在宅看護論」では、地域包括支援システムについての基礎知識をもとに、様々な疾患・病期にある患者への在宅療養や日常生活援助についての知識が試されます。
「看護の統合と実践」では、看護管理、安全管理、災害看護、国際看護の基礎知識のほか、より実践に近い状況での判断力が求められます


近年の出題傾向は?


 「在宅看護論」の、目標1)や目標2)に関する問題は、基礎看護学や老年看護学の問題に類似し、比較的解きやすい傾向にあります。このような問題が多い年は、正答率が高くなります。


 一方、目標3)に関する問題も近年、多数出題されています。医療機関から在宅療養への移行における退院調整や多職種との連携について、介護保険を利用する場合の手続きや、対象の個別性に応じた介護サービスの選定などについて様々な角度から出題されており、このような問題が多い年度は正答率が低くなる傾向にあります。


 対象が介護保険に加入していない年代や、加入していても介護のレベルを超えてしまって医療のレベルにある患者の場合、介護保険を利用できません。医療保険を利用して訪問看護サービスを受けることになります。こうした保険の使い分けについての知識も頻出ですが、正答率は低い傾向にあります。


 「看護の統合と実践」の、看護管理、安全管理、災害看護、国際看護に関する問題は、基礎的な問題が多く、点数をとりやすくなっています。一方で、看護管理分野における病院機能評価や診療報酬に関する問題、災害時の支援体制や医療体制、看護師等の労働安全衛生に関する問題など、制度や法律が絡む問題も多く出題されていますが、正答率は低いのが現状です。


 状況設定問題で多いのは、「各発達段階✕災害看護」、「各発達段階X国際看護」のような複合的な問題です。具体的には妊婦や視覚障害者が災害にまきこまれたという設定、高齢の外国人の入院という設定などがみられています。また状況の説明文が長文化し、データの読み取りだけでなく、状況を理解するための読解力がますます必要になっています。


「在宅看護論」「看護の統合と実践」ともに、正答率が高い年度と低い年度があります。基礎的な問題が多い年度は正答率が高くなり、制度や法律が絡む問題が多い年度は正答率が低くなる傾向があります。状況設定問題の長文化が進み、読解力が必要です


この出題傾向をクリアするための勉強方法は?


 「在宅看護論」における、在宅療養者の日常生活の援助についての問題は、苦労せずに解答できると思います。在宅移行に向けての多職種との連携や、訪問看護のしくみ、訪問看護における介護保険と医療保険の利用方法等について徹底的に学ぶ必要があります。地域包括ケアシステムに関する過去問も繰り返し解いておく必要があるでしょう。


 「看護の統合と実践」はまだ歴史が浅いので、これまで出題基準の中で手薄だった部分から出題される可能性があります。出題基準を確認しましょう。災害看護や看護管理に関する問題では、災害対策基本法や医療法など法律や制度に関する知識も必要です。ここで頑張って学んでおけば、「生活支援と社会保障制度」にも応用がきくため、しっかり取り組んでおきましょう。 


「在宅看護論」では訪問看護のしくみと介護保険・医療保険について過去問を通して徹底的に学びましょう。
「看護の統合と実践」でも出題基準を確認し、法律や制度についてははやめに取り組んでおきましょう。


ズバリここが出る予想問題「在宅看護論」


問題 地域連携クリニカルパスについて正しいのはどれか?

1. 二次予防を目的として作成される。
2. 医療機関ごとの診療計画が示されている。
3. 医療機関に診療所は含まれない。
4. クリニカルパスの活用は診療報酬の対象とはならない。


解答:2

1.(×) 二次予防(早期発見・早期治療)ではなく、三次予防(早期復帰・再発防止)を目的として作成される。
2.(〇) 急性期病院、回復期病院、退院後に通院する診療所(クリニック)ごとに目標や治療計画がある。
3.(×) 医療機関に診療所も含まれる。
4.(×) 地域連携クリニカルパスを活用することで、地域連携診療計画管理料として診療報酬が算定される。


 地域連携クリニカルパスは地域包括支援システムを実現する上で重要です。患者の早期の自宅復帰を促すだけでなく、効率的な医療を行う上でも大いに役立っています。「地域包括ケアシステム」は、看護師国家試験の重要なテーマであり、関連する問題も多いので、しっかり学習していきましょう。




執筆・解説

廣町 佐智子<日本看護研究支援センター 所長>

看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。




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