• 公開日: 2022/1/24

ズバリここが出る「母性看護学」第111回看護師国家試験【予想解説】


この科目は、女性のライフサイクル各期の看護、妊娠・分娩・産褥期・早期新生児期の看護、周産期医療や母子保健施策について扱います。





女性のライフサイクルの各期の看護と周産期・母子保健等を学びます!


何を習熟することが求められるの?


 4つの目標が設定されています。
1)母性看護学の基礎(概念・生理・法・制度)の基本を理解すること
2)女性のライフサイクル各期の看護を理解すること
3)妊娠・分娩・産褥期・新生児期における看護を理解すること
4)周産期医療と母子保健施策について理解すること
です。

 以上をまとめると、母性看護学では、「母性の生理についての基礎をしっかり学んだうえで、健やかな母性を育むための援助について母子保健政策を含めて理解すること」が求められています。

 このうち、母性の生理では、性の分化、思春期の身体的変化、月経周期、妊娠・分娩・産褥・更年期について問われますが、そこにどう性ホルモンが影響しているかまでしっかり理解することが必要です。

 また、近年のわが国は、少子化が進み、国の財政的基盤を作っている生産年齢人口も先細りが眼に見えています。そのため課題として、少子化に歯止めをかけることと、生まれてきた大切な子どもたちがすべて健全に大人になれるように支援すること。母性は子を産み育てるだけでなく、社会でも活躍できるよう環境を整えることが重要となっています。母性看護学で取り上げられている周産期医療や母子保健施策は、こうした課題を意識して学ぶことが重要になるでしょう。


母性の生理についての基礎をしっかり学んだうえで、健やかな母性を育むための援助について母子保健政策を含めて理解することが求められます


近年の出題傾向は?


 前項で示した目標①にあたる部分からは、「生殖に関する生理」が毎年出題されています。特に「月経周期」は様々な角度から出題されていますが、この知識は正常な妊娠を理解する基礎となるだけでなく、避妊や不妊、不妊治療などを理解する上でも欠かせない知識です。近年、平均出産年齢が高くなり、不妊に悩む女性も増えていることや、不妊治療の医療保険適用などが話題になっています。「月経」にまつわる問題は重要度を増していくと考えられます。

 しかし、なんといっても問題の大部分は目標3)から出題されます。

 妊娠すると、母子保健法の取り決めによって、市町村へ妊娠の届出をします。妊娠・出産・産褥期の女性と児は、健やかで過ごせるように母子保健法によって市町村の管理下に入るわけです。母子保健法の施策を基礎に据えたうえでの、正常な妊娠・分娩・産褥の経過、新生児の看護については毎年多数出題されています。正常とはいっても妊婦の平均年齢が高くなっていたり、産休まで働いている人も多かったりすることから、マイナートラブルや妊娠貧血、妊娠高血圧症候群などの問題も出題されるようになっています。なお、近年の新生児の問題は、健康問題を抱えた児の問題は少なく、正期産で生まれた健康児の問題が多い傾向にあります。

 今後は、目標4)のなかの周産期医療システムや災害時の母子支援にも注意しましょう。これまであまり出題がありませんでしたが、産婦人科医そのものや分娩できる施設、周産期救急医療に対応できる施設が減少しているため、妊産婦・新生児の尊い命をどう守るかが課題となっています。有限な医療施設を組織化し、質の高い周産期医療を提供する仕組みについて出題される可能性が高いでしょう。


母子保健法の施策を基礎に据えたうえでの、正常な妊娠・分娩・産褥の経過、新生児の看護について毎年多数出題されています


この出題傾向をクリアするための勉強方法は?


 月経や妊娠、分娩、産褥に関わるホルモン環境の基礎は早い段階で押さえ、繰り返し復習してください。正常な妊娠、分娩、産褥に関しては暗記的な要素が大きいので、経過表を大きく印刷して貼ったり、写真に撮って繰り返し見たりするようにしましょう。そのためには、問題を解き、一覧表をその都度確認する方法をお勧めします。

 法律については、母子保健法をしっかり押さえましょう。妊婦健診や乳幼児の健診、保健師による訪問指導などを規定しています。母子健康手帳も母子保健法によって交付されています。自身の母子健康手帳を手に取って、どんな管理がされていたかイメージすることも重要でしょう。


母性に関わるホルモン環境の変化は早期に押さえたうえで、繰り返し正常な妊娠・分娩・産褥の経過を、問題を解きながら確認しましょう。母子保健法も重要です。


ズバリここが出る予想問題「母性看護学」


問題 周産期医療の確保について規定しているのはどれか?

1.少子化社会対策基本法
2.母子保健法
3.母体保護法
4.医療法


解答:4

1.(×) 少子化社会対策基本法とは、少子化に的確に対処するための施策を総合的に推進する法律である。
2.(×) 母子保健法は、母性・乳幼児の健康保持と増進を目的とした法律である。妊娠の届出と母子健康手帳、健康診査、低体重児の届出と養育医療、保健指導・訪問指導、母子健康包括支援センター等について規定する。
3.(×) 母体保護法は、母性の生命・健康を保護することを目的として、不妊手術や人工妊娠中絶について規定する。
4.(〇) 医療法は、医療の供給体制について規定する。医療施設の種類について規定するほか、病状の種類や人員配置、診療所記録などについて規定する。都道府県単位での医療体制の整備(5事業および在宅医療;(1)救急医療、(2)災害医療、(3)へき地医療、(4)周産期医療、(5)小児医療)についても規定する。




執筆・解説

廣町 佐智子<日本看護研究支援センター 所長>

看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。




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