この科目では、老年看護学の総論から、様々な健康状態に応じた高齢者と家族の看護、様々な生活の場での高齢者への看護について扱います。
何を習熟することが求められるの?
3つの目標が設定されています。
1)加齢に伴う高齢者の生活と健康状態の変化を理解すること。
2)様々な健康状態にある高齢者とその家族の理解すること。
3)多様な生活の場で高齢者を支える看護について理解すること
です。
老年期は成人期よりも様々な健康上の問題に陥りやすいのですが、疾患に応じた看護のほとんどは成人看護学で出題されます。
老年看護学では老年ならではの、加齢現象を基礎とする疾患や、高齢者の生活を支えるための社会保障制度などが中心となり、学びを深める必要があります。
近年の出題傾向は?
前項で示した目標2)にあたる部分から、多数出題されています。具体的には認知症や認知症の原因のひとつである脳血管症状の諸症状(尿失禁、嚥下障害、ADLの障害)や、感覚器の障害(眼科疾患、耳鼻科疾患)などが挙げられます。他には当然のことながら、終末期の看護についても出題されます。
目標1)については、例年、「加齢に伴う身体機能の変化」について出題されています。さらに近年では、ロコモティブシンドロームやサルコペニア、フレイルなど、高齢者の機能低下等を示す新しい概念が加わってきました。その結果、年々、問題の難易度が上がっています。解剖生理学や病態生理学の学習はもとより、新しい概念の定義について確認が必要です。
目標3)については、医療保険制度や介護保険制度について必ず出題されます。特に生活や療養の場が在宅や介護施設という設定の場合、介護保険制度と切り離して考えることはできません。さらに、高齢者のケアを多職種で連携して行っていくことから、情報共有の道具となるアセスメントツール(認知症スケール、褥瘡スケールなども多く出題されています。
この出題傾向をクリアするための勉強方法は?
老年看護学実習を通して、学生の多くは高齢者の人格や生活を尊重することや、コミュニケーションのとり方などを学べています。そのため、患者-看護師関係についての問題は易しいと感じるでしょう。
問題は、解剖生理学や病態生理学の絡む問題です。高齢者特有の疾患(脳血管障害とその後遺症、心不全、認知症、骨粗鬆症を基盤とする腰椎圧迫骨折や大腿部頸部骨折)は、過去問等を通してしっかり学んでおいてください。機能低下等を示す新しい概念についても、その意味をしっかりとらえていきましょう。
社会保障制度については、医療保険制度と介護保険制度が重要です。
医療保険制度については、特に国民健康保険と後期高齢者医療について、財源や給付の種類を学んでおきましょう。
介護保険制度では、市町村窓口への申請から、介護認定を経て、ケアマネジメントに至る流れを徹底的に学習しましょう。介護給付の内容もざっくりでいいので学習しましょう。
これらの知識は、高齢者の退院調整において、就職後すぐにでも活用する知識なのです。苦手と思うなら、老年看護学実習で受け持ち患者の退院調整に積極的に関わらせてもらって、実践的に理解するのがよいでしょう。
ズバリここが出る予想問題「老年看護学」
問題 認知症の中核症状は次のうちどれか?
1.妄想
2.見当識障害
3.暴力
4.徘徊
〇解答:2
認知症によって、脳の働きが低下することによって直接的に起こる症状を中核症状という。具体的には記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、言語障害(失語)、失行・失認などが該当する。
一方、周辺症状(BPSD)とは、中核症状が本来の性格や周囲の環境の影響を受けて現れる精神機能や行動の症状をいう。具体的には、妄想、抑うつ、興奮、徘徊、不眠、幻覚、意欲の低下などをさす。
執筆・解説
廣町 佐智子<日本看護研究支援センター 所長>
看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。