• 公開日: 2022/1/3

ズバリここが出る「成人看護学」第111回看護師国家試験【予想解説】


この科目では、成人看護学の総論から各論(急性期 慢性期 リハビリテーション期 終末期)までを網羅します。また扱う疾病の内容が非常に多いのが特徴です。





成人看護の総論から各論までを網羅しています!


何を習熟することが求められるの?


 全部で12の目標に沿って出題されています。12の目標を大きく3つに整理すると、
 1)成人各期(青年期・壮年期・向老期)の健康保持と増進について理解すること
 2)各病期(急性期・慢性期・リハビリテーション期・がん・終末期)の患者の特徴と看護を理解できること
 3)各機能障害のある患者の特徴と看護を理解できること
 になるでしょう。

 このなかで、特に3)にあたる部分は、全身の各機能障害(解剖生理、病態生理、検査・治療)を踏まえなければならないため、非常に膨大な基礎学習が必要となります。基礎学習が不足していると、問題数が多いだけにダメージも大きく出てしまいます。


主に基礎学習(解剖生理・病態生理・検査・治療)を踏まえた看護についての理解が求められます。基礎学習が不足しているとダメージが大きく出る部分でもあります


近年の出題傾向は?


 前項で示した目標3)にあたる部分から、多数出題されています。機能障害の領域が幅広いので、出題傾向がつかみづらいのが特徴です。

 「糖尿病は患者数が多いから必ず出題される」と予測していて、1問も出題されなかった年もありました。近年は、過去問で扱われなかった疾患が出題されることも多く、正答率が70%程度と低めになっています。

 問題の内容としては、「必要な検査の選択や看護」、「検査データの解釈」、「薬物療法の理解と援助」などが大部分を占めます。

 特に状況設定問題は長文で、アセスメントに必要な情報量が多く、専門用語が多用されているために、言葉の意味をしっかり理解していないと回答できなくなっています。近年は一般問題でも長文化が進み、「Aさん、〇歳、男性(女性)」で始まる、まるで状況設定問題のような解釈型の問題が増えつつあります。この傾向は今後も続くことが予測されます。


幅広い領域から出題されるため、出題傾向を予測することはほぼ不可能。状況設定問題の長文化、一般問題の解釈型問題の増加がみられ、回答にはアセスメント能力がますます必要とされている


この出題傾向をクリアするための勉強方法は?


 成人看護学は、出題範囲が膨大ですが、臨地実習の機会を最大限活用することで、効率的な学習が可能です。

 まず、自身の担当患者の看護過程展開に全力を注ぐのが最も重要です。検査データのアセスメントやフィジカルアセスメントは全力で取り組んでください。検査にはできるだけ参加できるように指導者に依頼しましょう。さらに、カンファレンスの機会も最大限活用していきましょう。自分の担当患者をテーマにしてもらうのはもちろん、他の学生が提供する事例からも貪欲に学ぶ姿勢が大切です。

 過去問にもたくさん触れてほしいのですが、その際、なんとなく解いて「正解・不正解」を確認するのではなく、必ず解剖生理や病態生理にまで戻り、基礎を確認することです。特に状況設定問題には、覚えてほしい基礎的な言葉がたくさん含まれています。自分で説明できない言葉は、最終的に全部説明できるくらいにすることが必要です。

 具体例を挙げましょう。「トリグリセリド」「総蛋白」「ヘマトクリット」「CRP」「PET-CT」「中皮腫」「副雑音」「胸膜」・・・・数問の状況設定問題を見ただけでも、これだけの単語が含まれていましたが、これらの意味をきちんと理解して使っているでしょうか? 人にわかりやすく説明できるでしょうか? こうした言葉を正しく理解し、意味をきちんと学ぶことは、基礎医学を違った角度から再復習することになり、合格への近道となりうるのです。

 「成人看護学を制する者は、国家試験を制する」と言ってもいいでしょう。


「成人看護学を制する者は国家試験を制する」と言っても過言ではないほど、成人看護学は基礎医学との結びつきを学ぶために重要です。
勉強法としては実習に全力で取り組むことと、過去問に使われている言葉の意味を深く学習することをお勧めします


ズバリここが出る予想問題「成人看護学」


問題Aさん(63歳 男性)は、上部消化管内視鏡検査で抗コリン薬を投与する前に、看護師より「前立腺肥大症の既往があるか」確認された。「どうして前立腺肥大症があるかを確認するのですか」というAさんの質問に対して、適切な回答は次のうちどれか?


1.抗コリン薬は前立腺の肥大を悪化させるからです。
2.抗コリン薬によって失禁しやすくなるからです。
3.抗コリン薬によって尿が作られにくくなるからです。
4.抗コリン薬によって尿が排泄しづらくなるからです。


解答:4

 抗コリン薬は、副交感神経系から分泌されるアセチルコリンを抑制し、交感神経系を刺激する薬物である。すなわち消化・吸収・性機能・排泄機能を抑制し、呼吸・循環機能を亢進させたり、散瞳させたりする作用がある。

 上部消化管内視鏡検査の前に用いるのは、消化管の内部を視るのに、動きを抑制させたいからである。前立腺肥大症でこの薬が禁忌になるのは、ただでさえ尿が出づらい状況であるのに、抗コリン薬を用いることで、膀胱の収縮や内尿道括約筋の拡張が妨げられ、尿閉(尿を排泄できなくなる)に陥りやすくなるからである。

 尿閉は、放置すれば尿が膀胱から尿管、腎臓へと逆流し、水腎症(尿による腎臓破壊)から、腎後性腎不全となってしまう。





執筆・解説

廣町 佐智子<日本看護研究支援センター 所長>

看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。




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