この科目からは、看護の基本となる概念や看護における基本技術に関して出題されています。
何を習熟することが求められるの?
目標は大きく2つあり、
1)看護の基本となる概念と看護の展開方法を理解すること
2)看護の基本技術と判断プロセスについて理解すること
が求められています。
1)の目標に含まれる「看護の基本概念」とは、看護の定義や看護の対象理解、健康のとらえかたや看護における倫理をさします。「看護の展開方法」では、看護過程などの問題解決技法や、患者との援助関係、多職種との協働についての習熟が必要です。
2)の目標における「看護の基本技術」には、日常生活援助技術と、診療に伴う看護技術が含まれます。1)2)の目標ともに、臨地実習での経験によって深めることができる内容です。
近年の出題傾向は?
目標2)に関する出題が大部分を占めています。
「日常生活援助技術」についての問題は多いですが、そのうち、「食事」や「排泄」、「環境整備」等の問題は、過去問と類似するものが多く、正答率は高くなります。一方で、フィジカルアセスメントに関する問題で、解答に解剖生理学的・病理学的知識を伴うものの正答率が低くなる傾向にあります。例えば110回の問題で、呼吸音について問う問題がありました。
「PM問題34回;呼吸音の変化と原因の組合せで正しいのはどれか。1.呼気延長・・・・胸水 2.呼吸音の減弱・・・・過換気症候群 3.呼吸音の増強・・・・無気肺 4.肺野での気管支呼吸音の聴取・・・・肺炎 ⇒解答;4」
胸水、過換気症候群、無気肺、肺炎がどのような病態か理解していることと、聴診器を胸部のどこに置くとどんな音が聞こえるかの両方がわかっていないと回答できない問題です。一見、成人看護学のような問題ですが、成人看護学の問題のように最初から診断名を与えられているのではなく、看護師自身が異常を最初に発見するためのアセスメント能力を試す問題です。
患者の療養の場所が多様化し、医師が常駐してない場所で、看護師が最初に異常を発見する機会が増えています。こうした、背景のもと、フィジカルアセスメントに関する問題は、今後も増えていくと思われます。
また近年、感染対策に関する問題も増えています。新型コロナウイルス感染症の拡大が背景にあるのでしょう。109回では細菌芽胞にも効果のある消毒薬についての出題がありましたが、回答率は低めでした。臨地実習では、消毒薬の種類や濃度まで関心が向かない学生がほとんどですが、看護の基本技術の一つとして、しっかり学んでほしいところですね。
同じく目標②のなかの、「診療に伴う看護技術」も頻出の領域です。108回ではこのような問題がありました。
「AM問題43;穿刺と穿刺部位の組合せで適切なのはどれか。1.胸腔穿刺・・・・胸骨体第2肋間 2.腹腔穿刺・・・・剣状突起と臍高を結ぶ直線の中間点 3.腰椎穿刺・・・・第1・2腰椎間 4.骨髄穿刺・・・・後腸骨稜 ⇒解答:4」
体位管理は、看護師が自身の判断で行うことができる看護技術の一つです。検査の目的がわかり、穿刺部位を示す解剖学用語がわからないと回答できない問題です。検査は苦痛を伴うものが多く、安全・安楽・短時間に済ませるための的確な判断や技術について今後も多数出題されることでしょう。
この出題傾向をクリアするための勉強方法は?
基礎看護学は、臨地実習を通して学ぶのがもっとも効率的です。日常生活援助技術は、できるだけ経験させてもらえるように働きかけてみてください。診療に伴う看護技術は、経験させてもらえないものも多いのですが、常に経験するつもりで学習をすることが重要です。
輸液管理ひとつをとっても学べることはたくさんあります。滴下の計算はもちろんのこと、順調に輸液が行われているか刺入部の異常の有無や、輸液の残量を定期的に確認したり、どれくらいのカロリーが摂取できるのか計算したりすることもできます。
採血についても同様です。自分は経験できなくても、自分が採血を行うつもりで、手順やその根拠をしっかり学習しましょう。また、採血に用いる試験管にも色々な種類があり、そこからも学べることがたくさんあります。例えば、血球数を測定する「血算」の試験管にはクエン酸ナトリウムが入っていて、血球が凝固しないように工夫されています。逆に「血清」の試験管は血清成分の検査が目的なので、試験管には凝固剤が入っていて、邪魔な血球は固められてしまいます。これらは「血液凝固」についての知識の確認にもなるでしょう。
実習では、これら以外にも様々な疑問に遭遇するので、ぜひ周囲の医療スタッフに質問してください。実習で学んだことは、印象深く忘れることはありません。また、質問をする積極的なあなたの姿は、「やる気のある学生さん」として、高評価間違いないです。
ズバリここが出る予想問題「基礎看護学」
問題経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>の測定で、正しいのはどれか?
1.動脈血中に溶解している酸素の量を測定している。
2.動脈血酸素分圧<PaO2>と比例関係にある。
3.一酸化炭素中毒では低値を示す。
4.ショックのときは測定が困難となる。
〇解答:4
1.(×) 動脈血に溶解している酸素の量は、動脈血酸素分圧(mmHg)という。動脈血酸素飽和度とは、動脈血中の単位あたりのヘモグロビン量に対する、酸化ヘモグロビン(酸素と結びついたヘモグロビン)の割合を示している。酸化ヘモグロビンの色は鮮紅色であるが、動脈血酸素飽和度は動脈血の赤色の彩度から、酸化ヘモグロビンの割合を推定している。基準値は95~98%である。
2.(×) 動脈血酸素分圧の基準値は80~100mmHgとされ、これに伴って、SaO2の正常値は95~98%のあいだの値をとる。両者は比例関係にはない。
3.(×) 不完全燃焼などで生じる一酸化炭素<CO>はヘモグロビンとの親和性が酸素の200倍高い。一酸化炭素中毒では、Hbは酸素よりも一酸化炭素と結びつくようになり、酸素の運搬ができなくなってしまう。経皮的動脈血酸素飽和度は、酸化ヘモグロビンの割合を、指のなかに流れる血液の鮮紅色度から判定している。一酸化炭素と結びついたHbは、酸化ヘモグロビン以上に鮮やかな赤色をしているため、SpO2は高値となる。
4.(〇) 経皮的動脈血酸素飽和度はプローブを指先などに装着し、血液の色を調べて赤色の程度から酸化ヘモグロビンの割合を算出している。測定には指先など末梢まで血液が流れているのが大前提である。
ショック(血圧が極端に低下)の場合は、指先まで血液が流れにくくなっているので、測定は困難となる。
動脈血酸素分圧と動脈血酸素飽和度は、ともに酸素化の指標でありながら、両者を混同している人がたくさんいます。臨床でもよく用いるデータなので、正しい理解が必要です。
執筆・解説
廣町 佐智子<日本看護研究支援センター 所長>
看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。