オランダの訪問看護組織「Buurtzorg」を視察した代表・川添。けっこうゆるい雰囲気を醸し出す訪問看護師らは、じつは本物のプロフェッショナル集団だった。
自立した能力を結集させた集団
「Buurtzorg」の各ステーションは、1チーム最大12名の訪問看護師によって成り立っているが、各チームの自立度は驚くほど高い。ステーション用のオフィス探しにはじまり、利用者の確保、看護師の採用や教育、財務などすべてに裁量と責任が与えられているのだ。
しかも管理者はいない。各スタッフが平等の扱いで、それぞれの自立した能力を結集させた「セルフマネジメントチーム」だということを強烈に印象づけられた。
教育の仕組みも特徴的だ。いわゆる座学で得られる知識は、各自が所有するiPadにすべて入っていて、つねにアップデートされている。外部研修への参加も奨励されていて、複数の大学病院と連携し、費用は本部負担でiPadから手軽に申し込みできる。
また、同行訪問はいつでもウエルカム状態。自分に足りないケアを学ぼうと、「同行させて」と頼めばいい。
日本のように、プリセプターがいて、教育プログラムに則って「あなたはここを勉強しないとダメですよ」と教育するシステムではないことは明らかだ。すべては、自分で、自分を成長させるために、あらゆるリソースを活用することに重きがおかれているのだ。
プロたちが互いに尊重し助け合う
今回は、ステーション男性訪問看護師アレキサンダーに同行して利用者宅でケアのお手伝いをした。昼頃にオフィスへ戻ると、スタッフらもほぼ全員が戻っていて、皆でランチタイムとなった。
私もパンやハム、トマトなどを買ってサンドイッチを作って食べていたところ、自然とカンファレンスが始まっていることに気が付いた。利用者のハイポイント、重要なことは何か、困っていること、悩んでいること、失敗したこと、うまくいかなかったケアなどを話し合っているようだ。
「Buurtzorg」の訪問看護師の約40%は学士以上の学歴を持つという。先のiPadを利用した学び、外部研修への参加奨励だけでなく、日常的にチームでの振り返りやアドバイスを頻回に行い、学ぶ意欲がとても高い。プロフェッショナルとしての意識が高く、互いに尊重し合って助け合っているのだ。
現場に任せるからこそ、任せられるからこそ、本部が手とり足とり指導しなくても、わずか7年でスタッフ数約6,000人へと急成長できるのだろう。
オランダと日本との文化の違いなのだろうが、一人ひとりの自立は、すべて自分の責任に基づいていることを痛感させられた。プロフェッショナリズムの奥深さを再認識させられたオランダ視察である。