• 公開日: 2019/3/8
  • 更新日: 2020/3/26

【連載】国際派ナースへのレシピ

第2回 国が変われば常識も変わる、国際派ナースの看護ケア

アメリカにはさまざまな人種・民族が存在していますが、それぞれの人種により、生活習慣、健康問題がやや異なるためにアセスメントをするときもその特徴を頭に入れておかなければなりません。外国人に看護ケアを提供する機会が増えてくるときに知っておくと良いことを少し挙げてみます。


宗教

宗教というといいイメージがないかもしれませんが、実は世界の多くの人たちは宗教を持っています。信仰のレベルも軽い人から、とても強い人とさまざまです。

看護ケアで気をつけるところは、食事や医療行為への制限です。間違った食事を出された場合、私たちが想像する以上に患者さんは怒ってしまうと考えてよいでしょう。

輸血を拒否する宗教の存在もご存知でしょう。宗教は私たちが考える以上に真剣で、その患者さんの生活・人生と強く結びついています。入院アセスメントのとき、また看護計画立案のときには必ずこれらを考慮することが求められます。

・ユダヤ人はKosher(コーシャー)といわれる食事
・豚肉は食べないイスラム教
・右手のみしか食事に使わない
・家族が作ったものしか食べない
・ベジタリアン、セミベジタリアン(少量の肉は食べてよい)
・中国人は手術の後に冷たいデザートを食べる

人種による健康問題の違い

さまざまな人種がもつ遺伝子からその人種に多いといわれる疾患が存在します。その人種の多くがそうなるとは限りませんが、人種別に多い健康問題というのも頭に入れておくことが大切です。

人種により高確率で起こりやすい健康問題の例
・日本人 胃がん、骨そしょう症
・黒人 高血圧、鎌状赤血球症
・白人 皮膚がん、前立腺がん
・アメリカンインディアン、ヒスパニック 糖尿病

痛み

痛みに対する反応は人種や育った背景によっても異なります。日本人を含むアジア人は痛 みを我慢する傾向があり、また社会もそのように我慢をするのが一般的ととらえるために痛みの表現が少ない傾向にあります。

逆に、痛みには必ず対処するというアメリカ式の医療に慣れている患者さんの場合、日本人であれば我慢する程度の痛みであっても痛み止めを要求し、また痛みが完全になくならないのがおかしいと思う人もときどきいます。これは、アメリカの痛みのコントロールが行き過ぎてしまった結果でしょう。

痛みのレベルを正確にキャッチし、コントロールしていくのがナースの仕事の一部ですが、バイタルサインに影響がでるほど我慢をしない、またある程度痛みはコントロールできても完全に痛みを取り除くことは出来ない場合もある、などの患者教育もそれぞれの人種で行う必要もあるでしょう。

痛みは、主観的 Sデータであり、私たちが客観的に捉えるのは難しい場合もありますが、先に挙げたバイタルサインに影響が現われたり、痛みをよく訴えているがスナックを食べ自由に行動している場合など、客観的なデータももとにして痛みのアセスメントをしていくと良いでしょう。

次ページでは、グローバルな看護について考えます。

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