• 公開日: 2018/9/1
  • 更新日: 2018/12/13

辛い状況の中、実習を引き受けてくださった患者さんの「真意」

テーマ:忘れられない出会い

誰かに必要とされること

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辛い状況でも優しく接してくださる患者さんに…

学生時代に出会ったALSの患者様とのエピソードです。
看護学生の私が受け持った患者様はALSが進行した状態で、体で動かせる部分は唇と瞼だけ。気切をして呼吸器に繋がれており、もちろん言葉も話せませんでした。
体が痛くなっても自分では動かせず、会話は瞬きによる合図で行い、自分の希望を細かく伝えるだけで重労働になってしまいます。
食べることが大好きな方でしたが、食事は出来ずPEGからの経管栄養。
そんな状態でも意識だけはしっかりとされており、学生ながら、なんて大変な疾患なんだろうと感じていました。
そんな状況にも関わらず、その方は学生の私のために、50音板を使っての会話やパソコンを操作してのコミュニケーションを積極的に取ってくださったり、在宅看護をされていた時の記録を読ませてくださったりと本当に優しく接してくださいました。
辛い状況で、どうして私に優しくしてくださるのか、他人を思いやれるのかと純粋に疑問を感じ、師長から実習の感想を求められた際、素直にその質問をぶつけてみました。

「誰かの役に立てるなら」

その方は入院前に在宅看護を受けており、ご家族と約束をされていたそうです。「呼吸状態が悪くなっても呼吸器には繋がず、そのまま看取って欲しい」と。
ですが、実際その状況になった時、ご家族は呼吸器を装着することを選択され、患者様が意識を取り戻したときは、病室で呼吸器に繋がれた状態だったそうです。
その状況にその方は絶望され、入院当初は人との触れ合いを拒み、心を閉ざされていたようでした。
そんな時、看護実習生の受け入れがあり、受け持ち患者になってくれないかと声を掛けられたことで、「こんな僕でも誰かの役に立てるなら」と受け入れてくださったそうです。

「必要な人」と感じてもらえるように

「誰かの役に立てる、誰かから必要とされるっていうのは、人にとって生きる糧になるんじゃないかな」
そう師長から教えられ今でも忘れられない出来事になっています。
時々、忙しさで余裕がなくなり忘れそうになりますが、どの患者様に対しても「貴方は必要な人なんだよ」と感じてもらえるような声かけ、対応をするようにと思えるのは、その出来事、その患者様との出会いのおかげだと思っています。

●執筆●りえ亀 さん

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