家計の見直しをするときには「保険」もポイントになります。場合によっては、保険を見直すことが大きな家計の見直しになるケースは少なくありません。「保険の仕組みがよくわからない」「保険の相談をすると契約を勧められそうで不安」という声はよく聞かれますが、医療分野で医療技術の進歩や在院日数の短縮化などさまざまな変化が起きているように、保険についても時代とともにその内容は変化していますから、今どのような商品があるのかからでも知ろうとすることが必要でしょう。
今回は、保険の加入・見直しのポイントを解説していきます。
■まずは保険の目的を考えよう
まずは、何のために保険に加入するのかを明確にしましょう。そのためには、どのような保険があるのかを知って、そのうえで自分の生活設計に必要なものを考えるようにします。
1.保険の種類は大きく2つに分かれる
保険はあらゆるリスクに対して保障を準備しており、対象は人や車、住居などさまざまです。大きく分けると生命保険と損害保険となりますが、さらに目的に合わせて細分化されています。どのような不安に対して、どのような保障が、どれくらいあればいいのか、おおよその金額を想定し、1つずつ逆算して必要な保険を選んでいきましょう。
死亡・高度障害:定期保険、終身保険、養老保険、収入保障保険など
病気・ケガ:医療保険、がん保険、特定疾病保障保険、介護保険など
貯蓄・老後:学資保険、個人年金保険、変額個人年金保険など
損害保険(モノ・賠償に関する保険)
自動車保険、火災保険、地震保険、旅行保険、個人賠償責任保険など
2.保障には社会保障制度も組み込む
日本は社会保障制度が充実しているので、どのような制度があり、そのうち自分はどれを利用できるのか知っておくことも大切です。
医療従事者の場合は、医療費の補填などの福利厚生が整っている場合もあります。筆者が以前勤務していた総合病院では、健康保険の付加給付(健康保険組合が独自に上乗せの給付制度を設けている)として、支払った医療費のうち3000円以上かかった分が戻る制度や、個室代が無料、共済保険の掛け金の半額負担という福利厚生制度がありました。こういった勤務先の制度も把握するようにしましょう。
保険は定められている状況になって初めて保障を受けられるものです。裏を返せば、特定の状況にならないと、単なる支出でしかありません(掛け捨ての場合)。月々の収入の使い道は限られています。ですから、保険は必要最小限にし、どんなリスクに対しても対応できるように資産をつくっていくという考え方も重要になります。
表1 日本の社会保障制度
■保険加入時におさえておきたい3つのポイント
保険に加入するときには、次の3点を踏まえておくようにします。
収入が変化した、家族構成が変わったなど、保険の見直しが必要になった際にも、同じような視点をもって保険選びをするといいでしょう。
1.IN/OUTバランスのチェックを
医療保険に加入するとき、保障額を決める際には1カ月分の生活と医療費をイメージしてみましょう。医療費は保険適用と保険適用外の自費に分かれており、保険適用分については、自己負担割合の軽減のほか、「高額療養費」「限度額適用認定」により所得に応じた医療費の自己負担上限額が決められています。健康保険はその上限を超えた分を補填する仕組みになっています。さらに傷病で4日以上連続欠勤した場合、健康保険から「傷病手当金」として、休業の4日目からお給料の2/3の金額が受給になることもあります。
表2 医療費の自己負担限度額
入院時のIN/OUTバランス(収入と支出のバランス)を考えるときには、収入として「給料」「傷病手当金」「付加給付金」「保険給付金」「家族の収入」などを、支出として「医療費(限度額上限+自費分)「入院生活費(TV・洗濯カード、洗面道具、着替え、おやつなど)」「日常の生活費(固定費など)」などを書き出します。それらを合計して、収入から支出を引くことで1カ月のIN/OUTバランスがわかります。マイナスになるようであれば貯蓄や保険などで賄う必要があります。
図1をもとに考えてみましょう。
切迫早産で30日間入院しました。その間の収支は以下のようになりました。
〈かかったお金〉
医療費10万円(自費1万円、自己負担限度額9万円)
入院生活費1万円
生活費16万円
〈入ったお金〉
傷病手当金 日給:30万円÷30日=1万円
給付金:1万円×2/3×(30日-3日)=約18万円
付加給付金 保険診療分3,000円以上を返戻、給付金90,000円−3000円=87,000円
共済保険 給付金4,000円/日
バランスをみると、パターンAの場合はプラス11万7000円なので、医療保険への加入は必要なさそうです。しかし、パターンBの場合はマイナス9万円なので、その分の貯蓄や医療保険を検討したほうがいいでしょう。そして、医療保険を考えるときは単純に考えると1日3000円の入院給付金で補えることがわかります。
このように保険を利用する状況でのIN/OUTバランスを考えて保障額を決めていきましょう。
図1 入院時のIN/OUTバランス
2.ライフステージによって保険を考えて
保険選びは、家族や生活背景、価値観などによって変わってきます。
例えば死亡時のことを考えると、単身の場合は、自分の収入を頼りにする家族がいないので、埋葬費用の準備だけでいいでしょう。しかし、子どもがいる場合は、成人するまでの生活費や教育費の準備を考える必要があります。必要資金すべてを準備しようとすると貯蓄額や保険料が大きくなってしまうので、成人するまでの間に毎月一定額を受け取れるような収入保障保険が適しています。これなら、保険料を抑えることができ、家計も組み立てやすくなります。遺族年金がもらえることも頭に入れておく必要があります。
このように、結婚や出産などライフステージが変わるごとに、保障が合わなくなってきますので、保険の見直しをオススメします。
3.保険に加入するとき注意する点はココ
保険を選ぶときには、次のような点に気をつけましょう。あらかじめチェックしてから加入することが大切です。
・疾病保障は給付対象となる範囲が厳しい場合がある
・喫煙状況によって保険料が変わる場合がある
・誕生日を超えると保険料が高くなる
既往歴や持病がある場合、その疾患に関して保険の対象外となることがあります。例えば、1人目を出産したときに帝王切開をしていると、2人目の出産時にも帝王切開術となる場合があります。出産後に医療保険の見直しをすると、2人目の帝王切開に関しては保険対象外となってしまう可能性もあるので、確認が必要です。
また、3大疾病保険などでは給付についての条件が設定されています。例えば、急性心筋梗塞に関して、「20日以上の入院や所定の手術をした場合」といった給付条件があったとします。心疾患の平均在院日数は15~64歳の労働世代だと10日前後であり、20日以上という入院条件は厳しいように思われます。このように給付条件は保険商品によって異なるため、医療の現状と合わせて保険を判断していきましょう。
参考資料
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