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【連載】泣いて笑って訪問看護

第17回 『女優になりなさい』―職業人としての心構え

  • 公開日: 2014/1/4
  • 更新日: 2020/10/21

 

医療の場が在宅へと比重が高まるものの、まだまだ知られていない訪問看護。ここでは訪問看護の実際について、エピソードを通じてご紹介します。


訪問看護師としての初めての壁

「女優になりなさい」

私が訪問看護師になったばかりの頃に言われた言葉である。

私は看護歴は長かったものの、始めはNICU(新生児未熟児集中治療室)、そしてその後は外来勤務のみであったため、成人の病棟勤務経験が皆無だった。そのため、入浴介助や更衣は学生の実習以来やったことのない状況。特に、在宅などで関節の拘縮した利用者様の寝たきりの状態での更衣は、訪問に入って初めてぶつかった壁であった。

「痛い痛い!ちょっとキツイ」

不慣れな自分はやはりやり方がぎこちなく、余裕がないため表情も固く汗だく。関節が固い方の寝たきりの更衣がこんなにも難しいなんてと頭が真っ白になった。

そこでとった私の行動はと言えば、自宅に戻り、旦那や子供を相手に何度も何度も更衣の練習をしたのである。 ここまでは良かった・・・。

しかし、バカ正直な自分は、利用者様のところに次に行った時、こんな発言をしたのである。

「先日は着替えに時間がかかってしまい申し訳ありませんでした。私は病棟経験が少なくて慣れていなかったのでぎこちなかったですよね?すみません。あれから自宅に帰って家族を相手にして沢山練習してきたので、今日は少しでも上手くできたらなと思います。よろしくお願いいたします」

プロの訪問看護師としての態度とは

悪気はなかった。

この発言、学生ならば微笑ましかったかもしれない。しかし、私はこの言葉を発している時点で学生ではない。

入ったばかりとはいえ、プロの訪問看護師として仕事に入らせて頂いているにもかかわらず、この言葉は言ってはいけなかっただろう・・・と今の自分ならばよくわかる。

訪問が終わってから、同行していたN先輩にこんなふうに言われた。

「正直に伝えればいいという訳ではないですよね?貴方はまだ訪問に慣れていなくても、利用者様にとってはそんなこと全くわからない。みんなプロの訪問看護師が来てくれると思って身を委ねてくるんです。とはいえ、経験が少ない内は上手くいかないのも仕方ありません。誰でも始めから上手くはなれないですからね。だから、そこは女優になってください。

ご自宅に上がったら、利用者様が不安にならないよう、自信がなくても、自信のあるフリをしてください。意味がわかりますか?

これは、できないことを隠してやりなさいと言ってる訳ではありません。技術は既にしっかり勉強はしてるんですから、自信のなさを利用者様に見せないでくださいという意味です。貴方が不安だと、利用者様を余計に不安にさせますから」

もっともすぎて言葉が出ず、自分の幼稚さに涙ばかりが溢れた。

「慣れてないので練習して来ました!」という言葉は、相手を安心させる言葉ではなく、自分への言い訳でしかなかったのだなと反省した。

数日後、私はそこの利用者様から、「申し訳ないけど、あの方は外していただけますか?」とお断りが入った。訪問看護師になりたての苦い思い出である。

やったことのない不安を自信に変えるには

訪問の現場では、病院勤務では出会わなかったような特殊な疾患のケアの依頼も多い。

全ての科がかかわってくるため、経験したことのないケアの依頼もしばしば。

しかし、そういう場合は事前訪問で退院前に病院に出向き、病棟の看護師からケア内容を指導してもらったり、機械に関しては専門の技師さんに指導して貰いながらケアに入る。そうやって不安を自信に変えていく。

この現場にいる限り新たに学ぶことは多く、成長に終わりはないのである。

「女優になりなさい―」

N先輩に言われたこの言葉を胸に、今日も私は訪問に出かけて行く。

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