テーマ:忘れられない患者さん
人は死にゆくもの。
若くして乳癌になった女性
新卒で入職した病院、外科病棟で出会った患者さん。まだ私が看護師になって数年と20代前半、思い出の患者さんは20代後半か30歳になるくらいの女性でした。彼女は結婚して半年か1年、両側乳癌で手術をしましたが肺・骨への転移病変、当時は入院しての化学療法が主流だったため1か月に2回か3回は入院、投薬を繰り返していたと思います。まだハーセプチンが申請・認可という頃だったので十数年前の出来事です。
全身転移、彼女の想い
そもそも彼女が転移がありながらも手術をしたのは結婚したばかりの旦那様のために長生きをしたかかったから、そして叶うことなら自分と彼のDNAを残したかったからだと言われました。
数年間の治療のなかで効果を示す薬剤も減り腫瘍マーカーは上がり転移病変は全身に・・・。プライマリーだった彼女との時間は私にとって人の生死を考えさせるのもでもあり関わることの難しさを知るものでもありました。ほんとうのターミナル期に突入すると記憶も曖昧、脳転移で感情の起伏も激しくなり時に暴れ、病床に行き関わるのが苦痛に感じることも多かった。そして、年齢が5~6歳しか離れていない彼女の運命や宿命を思うと人生の酷さ・やるせなさも痛感、いろんな意味で彼女との出会いや看護は私にとって思い入れのある体験です。
彼女が教えてくれたこと
これを機に「がん看護」「疼痛コントトール」「グリーフケア」をはじめ、「患者満足」「医療サービス」と興味や視野を広げ、学ぶことができたのですから、本当に感謝ですね。その職場には8年ちょっと在職、ちょうど彼女が死した年齢である30歳を過ぎてから退職しました。人は生き死に行くもの。その時期が短いか長いかは神しか知らない。そんな当たり前のことが若かった自分には充分に理解できなかった。若くして娘を亡くした彼女の御両親、新婚早々に発症し数年の闘病生活を見守った旦那様、もっと上手に関わり、残されるものへの心のケアなりができていたら良かったのにと今になっても悔いであり懺悔な気持ちが拭いきれない。それだけ若かった私には重い出会いであり思い残りでもあるのだと思う。