今回は、末期がんの利用者さんを支え続けたスタッフのエピソードを紹介します。
心を閉ざした利用者さん
ケアプロに入職して2年近くになった前田雄大は、予防医学に関わりたいと、埼玉県中核病院の手術室看護師から転職した。当初はワンコイン健診に携わることを希望していたが、下った辞令は「在宅看護」。戸惑いがあったものの、今では利用者さんとの出会いの一つ一つが、訪問看護師としての成長に大きな意味を残している。
昨年5月に小腸がんを発症してから、1年半も経たないで旅立ってしまった利用者さんがいる。元歯科医で整体院も経営していた神山さんである。ケアプロがかかわったのは、亡くなるまでの約3カ月間。前田は毎日1時間の訪問で、輸液や麻薬の管理、体調維持をお手伝いしてきた。前田は、神山さんと初めて会った時の様子をこう話す。
「神山さんは40代後半で脳梗塞を患った際に、病棟看護師から患者の信頼を損なうような行為をされた経験があったそうです。そのため、訪問看護を始めてすぐの頃は、心を開いてくれる様子はみられませんでした」