【在宅】76歳の女性。夜間勤務をしている51歳の長男と2人暮らし。認知症で,妄想と尿・便失禁がみられる。長男から「トイレまで間に合わなくて便で部屋を汚して困る。お風呂も嫌がって入らない」と主治医に相談があった。主治医が要介護認定の申請を勧め,要介護1と認定された。週1回の訪問看護が開始された。訪問すると,部屋には尿臭がし,廊下の壁には排泄物がところどころ付着していた。女性は歩行が可能で丁寧にあいさつをしたが,その後看護師に食べ物を持っていないかと聞いてきた。長男は「便で家のなかを汚すので,あまり食べさせていない。ここ数ヶ月入浴もしていない」と言う。この段階で疑われるのはどれか。
身体的虐待
心理的虐待
経済的虐待
介護の放棄
―――以下解答―――
(解答)4
<解説>
1.(×)身体的虐待とは、暴力的行為によって負傷させたり、外部との接触を断つことである。
2.(×)心理的虐待とは脅しや侮辱などの言葉や態度、無視・嫌がらせによって精神的に苦痛を与えることである。
3.(×)経済的虐待とは、本人の合意なしに財産や金銭を利用したり、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限したりすることである。
4.(○)介護の放棄とは、必要な介護サービスの利用を妨げたり、世話をしないことで被介護者の生活環境や身体的・精神的状態を悪化させることである。事例では長男が母親に食事を与えず、長期間入浴もさせていないため「介護の放棄」にあたる。