日本にいると、国民皆保険の感覚は当たり前です。しかし、この制度が世界中で通用するわけではありません。海外で何かあったときに「知らなかった」では済まされない事態に直面します。それは、短期滞在でも同様です。そこで、自身の経験と調査をもとに、アメリカの最新医療制度事情をまとめました。
アメリカと日本の入院期間を比べると
今回は、入院期間(その2)のおはなしです。
日本の入院日数は、世界最長であることを前回おはなししました。
今回は、疾患別に日本とアメリカの入院期間の比較を紹介します。
驚くべき2カ国間の違いについて触れてください。ここには、日本医療の問題点も見え隠れしています。
<!–readmore–>
日本の入院期間を跳ね上げる超長期入院の実態
この調査は、厚生労働省の2011年患者調査 、CDC(Centers for Disease Control and Prevention)の2010年調査報告書 などを基に、頻度の高い疾患を挙げ、入院日数の長い順にまとめました。
厚生労働省の2011年患者調査によると、日本の平均入院期間は34.3日。前回、紹介した調査結果から倍増しています。この原因の1つとして考えられるのが、世界に類を見ないスピードで加速する高齢化社会です。
年齢階級別にみると、年齢階級が上がるに従い、平均入院日数は長くなる傾向にあります。75歳以上の平均入院日数は50日以上です。
さらに、都道府県別にみると、「高知」が54.7 日と最も長く、「神奈川」が25.5 日と最も短いそうです。2倍以上の差がありますね。
確かに、医療保険のパンフレットを見てみると、『1回の入院30日』『1回の入院60日』『1回の入院120日』などというプランを目にします。
“他国ではあり得ない、極めて長い入院期間が常態化している”、この事実をどれだけの方が認識されているでしょうか?
ちなみにアメリカでは、この速さですから、術後ドレーンが入ったまま退院することは珍しいことではありません。
アメリカの入院期間が極端に短いのは、術後処置などを在宅医療に回すためです。「退院=経過良好/社会復帰」ではなく「退院=在宅医療へ移行」という医療システムが確立しています。
それにしても、精神疾患患者さんの超長期入院の実態は深刻です。病状が回復、安定しないからではなく、家族が望まないため入院し続けるというケースが少なくないようです。事実、30年間も病院に長期入院している患者さんが存在します。
病院の在り方そのものが全く機能していないこうした実態が、世界でも極めて稀な最長入院日数に拍車をかけている、こうした事実も知っておく必要がありますね。
次回は、「アメリカの恐るべき医療費」のおはなしです。