交通事故の陰に運転者の病気
このところ暴走車による悲惨な交通事故が続いて起こっています。
6月26日は、東京・池袋でドライバーが脱法ハーブを吸引して運転していた車に、中国人女性が轢かれて亡くなりました。同月30日には、大阪・御堂筋で逆走してきたワゴン車に男女2人がはねられ、けがを負いました。運転手の低血糖による意識低下が原因ではないか、と言われています。
これら2つの事故は、今年5月に、交通事故に関する新法「自動車運転死傷行為処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)」が施行されて間もなくのことでした。
従来の危険運転致死傷罪の適用要件が「正常な運転が困難な状態」であったのに対して、この新法では、「正常な運転に支障が生じる恐れがある状態」も対象とし、従来に増して処罰が厳しくなりました。
この「正常な運転に支障が生じる恐れがある状態」には、「①アルコールや薬物によるもの」「②運転に支障を及ぼす恐れがある病気(下記)」が挙げられています。
自動車運転に支障を及ぼす恐れがあると政令で定める病気
- 認知・予測・判断・操作能力を欠く恐れのある症状を呈する統合失調症
- 意識障害または運動障害をもたらす発作が再発する恐れのあるてんかん
- 再発性の失神
- 低血糖症
- 躁うつ病(躁病およびうつ病を含む)
- 重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
参考HP
- 法務省「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律Q&A」 http://www.moj.go.jp/content/000117471.pdf
- 『広報 けいしちょう』第65号web版 http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kouhoushi/no65/oshirase_koho65.htm
継続治療が安全を担保することをアピール!
糖尿病を患っている私の知人は、「こうしたニュースを聞くたびに、自分は大丈夫だろうか、ってドキドキするよ」と話します。このように何らかの健康問題を抱えている人は、自分の体に自信がもてず、常に不安を抱えているのです。
糖尿病だけをみても、患者数は237万人以上います。全員が運転をしないにしても、それ以外の病気の人を含めれば、健康不安を抱えながらハンドルを握っている人たちはかなりの数になるでしょう。
そうした人たちに対して、「何よりもきちんと治療を継続し、症状をコントロールすることが安全を担保する」ということを、日々、関わるナースがアピールし、フランクに相談できる雰囲気を作ることが、安全な交通社会を守ることにもつながるのではないでしょうか。