• 公開日: 2023/12/25

ズバリここが出る!「状況設定問題 出題予想」 113回看護師国家試験

「状況設定問題」では、ひとつの事例をもとに3つの問題が出題されます。ここでは、各看護学でどのような疾患の患者がよく取り上げられているか、またどんな情報が与えられ何を問われることが多いのかを解説します。




状況設定問題の出題傾向

状況設定問題に出てくる事例には、患者の年齢や性別、社会的背景、現病歴、症状、治療内容、検査所見など、多くの情報があり長文化しています。問題を読み解くのに時間はかかりますが、そのぶん「解答するためのヒント」がたくさんあると捉えられるため、逆に答えやすくなっていると考えることもできます。

これまで出題された問題の頻度をもとに、状況設定問題で出題されやすい内容について科目別で解説します。

成人看護学

成人看護学で出題頻度が高いのは、臓器別では消化器・循環器・呼吸器・腎の疾患です。これらががんや慢性疾患に罹患した設定が多く、検査データや治療に関する情報もたくさん与えられます。とくに問われるのは、検査データの把握、臨床検査の目的や患者指導、術前術後の看護、今後の健康リスク判定、薬物療法中の看護、退院に向けた患者や家族への指導などです。

例えば、108回看護師国家試験ではアルコール性肝硬変患者の事例が出題されましたが、1問目は検査データからの病状把握、2問目は腹部超音波検査の際の患者指導、3問目は退院後の食事指導に関する内容でした。

出題の対象となる検査データは、貧血や脱水、感染、腎機能障害、肝機能霜害、低栄養状態、出血傾向などを判断させるものが多く、実習等を通してよく接するものがほとんどです。また、手術が関係する事例は何年も出題される術式が変わっていないので(胃がんではビルロートⅠ法、子宮がんでは広汎子宮全摘術、膀胱がんでは回腸導管造設術など)、過去問によって対策できます。

  • 検査データの把握、臨床検査の目的や患者指導、術前術後の看護、今後の健康リスク判定、薬物療法中の看護、退院に向けた患者や家族への指導が問われやすい
  • 検査データは、実習で触れる機会が多い貧血、脱水、感染、腎機能障害、肝機能霜害、低栄養状態、出血傾向などを判断するものがほとんど

老年看護学

老年看護学で頻出する疾患は、高齢者特有の認知症や脳血管障害、パーキンソン病、慢性閉塞性肺疾患[COPD]などです。こうした疾患のストレスがもともと患者がもっていた老年症候群に影響し、入院中にせん妄が発生したり、睡眠障害や転倒、尿失禁が発生しやすくなったりする設定が多くみられます。

また、終末期の問題も頻出です。出題傾向として、成人看護学と同様、検査データの把握や、臨床検査や薬物・手術療法を受ける患者への指導などが多くみられます。そのほか、患者の退院後の療養の場の選択、自宅に戻る場合の環境調整や利用できる介護保険サービス、介護家族への指導についてもよく出題されています。

  • 高齢者特有の認知症や脳血管障害、パーキンソン病、慢性閉塞性肺疾患に関する問題が頻出
  • 終末期の問題も問われやすく、検査データの把握や、臨床検査や薬物・手術療法を受ける患者への指導に関する出題が多い
  • 患者の退院後の療養の場の選択、自宅に戻る場合の環境調整や利用できる介護保険サービス、介護家族への指導についても問われやすい

小児看護学

小児看護学で出題頻度の高い疾患は、心奇形などの先天異常、小児特集の感染症(急性細気管支炎、溶連菌感染症など)、川崎病やネフローゼ症候群、糖尿病、白血病などです。患児の年齢は乳児期~思春期まで様々で、療養しながら健全な発達を遂げるにはどんな援助が必要かを問う問題が多く出題されます

そのため、小児看護学の状況設定問題を解くには、疾患・検査・治療だけでなく、心身の正常な発達の知識が重要です。また患児の理解力に応じた病気や検査、治療の説明についても問われます。発達段階に応じた「認知の発達」の知識を深めることが必要です。

患児が幼い場合、療養管理は保護者が行うことになります。そのため、保護者への療養指導についてもよく出題されます。療養指導には、保護者への精神的なケアや、患者会の紹介、医療費の公費負担制度についても含まれるので、確認しておく必要があるでしょう。

  • 心奇形などの先天異常、小児特集の感染症(急性細気管支炎、溶連菌感染症など)、川崎病やネフローゼ症候群、糖尿病、白血病などの疾患に関する問題が多い
  • 療養しながら健全な発達を遂げるにはどんな援助が必要かを問われやすい
  • 保護者への療養指導についてもよく出題される

母性看護学

母性看護学では、正常な妊娠、分娩(Ⅰ~Ⅳ期)、産褥をたどる事例と正常な新生児の事例が頻出です。

妊娠期であれば、妊婦健診における情報が提示され、正常・異常の判断や各期の生活指導について出題されます。分娩期では、分娩の進行を示す情報が提示され、何期かの判断や、必要な援助について出題されます。産褥期では、進行性変化と退行性変化の情報が提示され、経過が順調かどうかの判断や、必要な援助について出題されます。

しかし近年は、妊婦の高齢化を背景に、切迫早産や妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群を伴う事例なども出題されているので注意が必要です。また、働く母親の増加を背景に、育児・介護休業法の利用や、育児のサポート(新生児訪問など)について母親に助言する問題も増えてきています。育児支援に関する制度を確認していくことは重要です。

  • 「妊娠期」は正常・異常の判断や各期の生活指導について問われやすい
  • 「分娩期」は何期かの判断や、必要な援助について問われやすい
  • 「産褥期」は経過が順調かどうかの判断や、必要な援助について問われやすい
  • 切迫早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群を伴う事例もよく出題される
  • 育児・介護休業法の利用や、育児のサポートについて助言する問題も近年増えている

精神看護学

精神看護学で扱われる頻度が高い疾患に、統合失調症、うつ病、アルコール依存症、境界性パーソナリティ障害などがあります。これらの疾患の急性期、回復期、退院に向けた時期の各期について1問ずつ出されるパターンが一般的です。

急性期では患者の安全確保と休息、薬物療法、自殺企図や興奮・妄想など様々な精神症状への対応について問われます。回復期では薬物療法による症状の安定化や日常生活リズムの確立に向けた援助について問われます。

退院に向けた時期では、セルフケアの確立に向けた援助と、生活の場の決定、利用できる社会資源の選択や退院指導について出題されます。退院に向けた時期の問題は、精神障害者自立支援法の知識が必要なものが多くなっています。

  • 統合失調症、うつ病、アルコール依存症、境界性パーソナリティ障害などの疾患に関して各期で出題される
  • 「急性期」は、患者の安全確保と休息、薬物療法、自殺企図や興奮・妄想など様々な精神症状への対応について
  • 「回復期」は、薬物療法による症状の安定化、日常生活リズムの確立に向けた援助について
  • 「退院時期」は、セルフケアの確立に向けた援助、生活の場の決定、利用できる社会資源の選択、退院指導について

在宅看護論/地域・在宅看護論

在宅看護論で出題される事例の対象者は、幼児から高齢者まで年齢はさまざまですが、最も多いのは高齢者です。脳血管障害などでADLに障害があったり、在宅酸素療法や人工呼吸器、胃瘻や腸瘻を装着していたりという設定です。

病期では終末期や臨死期も多く出題されます。生活の場が家庭なので、事例中の情報に検査データはほとんどなく、かわってフィジカルアセスメントで得られた情報や、家族や他職種からの情報が中心となります。これらの情報をもとに、必要な看護を適切に判断できるか、介護家族に適切に指導できるかが出題されます。

また、連携する必要のある他職種や、利用可能なサービスについて判断させる問題も頻出です。なお、これらを判断する際に看護師国家試験では「患者の自立支援」や「患者の希望の尊重」を基準とすることが重視されています。

  • 出題される事例の対象者は高齢者が最も多い
  • 検査データではなく、フィジカルアセスメントで得られた情報や、家族や他職種からの情報から読み取る問題になりやすい
  • 連携する必要のある他職種や、利用可能なサービスについて判断させる問題も多い

看護の統合と実践

災害看護や国際看護の問題が頻出です。特に災害看護の出題数は多く、超急性期(発災直後)~慢性期(発災から数か月)の健康課題と看護について出題されます。災害時は、様々な健康レベルの人々が一様に被災します。

これまで健康な成人だけでなく、子ども、妊婦、持病をもった人などの災害弱者も事例として挙がり、健康課題(急性ストレス障害やPTSD、持病の悪化など)と、普段とは異なる医療環境の中での看護実践について出題されてきました。しかし難問は少なく、災害各期の健康課題の特徴と、各発達段階の看護の双方を理解していることで対応できるものがほとんどです。

  • 災害看護のなかでも、超急性期から慢性期にかけての健康課題、看護について出題されやすい
  • 普段の医療環境とは異なる中での看護実践について問われる
  • 子ども、妊婦、持病をもった人などの災害弱者も事例の対象となりやすい

まとめ

健康課題や家族機能の変化に伴って、看護師の役割やの活躍の場は多様化しています。それに沿って状況設定問題も難問化していると想像されがちです。しかし、看護師国家試験では基礎的な問題が多く、ここ数年難問化している印象や出題傾向が大きく変わった印象は受けません。これまでの出題傾向をしっかり念頭に置いて、丁寧に過去問に取り組めば恐れることはないでしょう。


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