• 公開日: 2023/12/26

ズバリここが出る!「必修問題 出題予想」 113回看護師国家試験

看護師国家試験のうち「必修問題」は、看護基礎教育を修了した時点で備えているべき基本的な事項のなかでも「必ず学び修めていること」であり、普遍的共通的な看護の知識を問うものです。ここでは、「必修」に関しての出題基準の改定のポイントと、改定後はじめて実施された112回看護師国家試験の出題状況について解説し、皆さんが受験する113回看護師国家試験の出題の傾向を予想します。




必修問題の目標と改定後の変更点

「必修問題」には、以下に示す4つの目標があります。

  • 目標Ⅰ.健康および看護における社会的・倫理的側面について基本的な知識を問う。
  • 目標Ⅱ.看護の対象および看護活動の場と看護の機能について基本的な知識を問う。
  • 目標Ⅲ.看護に必要な人体の構造と機能および健康障害と回復について基本的な知識を問う。
  • 目標Ⅳ.看護技術に関する基本的な知識を問う。

令和4年(2022年)3月の改定によって目標Ⅰに健康という言葉が入りました。これは、日本における健康増進対策を反映しているものと考えられます。看護師国家試験の出題基準は、社会の変化や看護を取り巻く状況を踏まえて改定が重ねられています。

目標ごとの出題基準の改定と今後の出題予測

「必修問題」は出題基準に大きな変更はありませんでしたが、目標別にみると主に目標Ⅲ・Ⅳで細かい変更点があります。ここでは、目標Ⅰ~Ⅳについて、今までどんな問題がよく出題されていたのか、出題基準の改定によって112回看護師国家試験にどんな影響が出たか、さらに今後どんな問題が出題されるのかについて解説します。

目標Ⅰの出題傾向と予測

目標Ⅰからは以下の内容について出題されます。

  1. 健康の定義と理解
  2. 健康に影響する要因
  3. 看護で活用する社会保障
  4. 看護における倫理
  5. 看護に関わる基本的法律

例年、健康に関する指標(総人口、年齢別人口、世帯数、死因の概要、平均寿命など)、食事と栄養(国民健康栄養調査)、職業と健康障害、保健師助産師看護師法が頻出です。112回看護師国家試験でも同様に、平均余命や女性の平均初婚年齢、女性の有訴者の自覚症状など健康に関する指標が多数出題されました。

113回以降も同様の傾向を示すと思われるので、最新の保健統計は必ず押さえておく必要があるでしょう。

  • 健康に関する指標・国民健康栄養調査・職業と健康障害・保健師助産師看護師法で頻出
  • 最新の保健統計を必ず確認しておく

目標Ⅱの出題傾向と予測

目標Ⅱからは以下の内容について出題されます。

  1. 人間の特性(欲求階層説など)
  2. 人間のライフサイクル各期の特徴と生活
  3. 看護の対象としての患者と家族
  4. 主な看護活動展開の場と看護の機能

例年、エリクソンやハヴィガーストの発達理論や胎児期・新生児期・乳幼児期の身体の発育、思春期の第二次性徴、老年期の身体の変化などが問われています。また看護活動の場の拡大や多職種との連携の必要性によって、病院・訪問看護ステーション・介護施設等の役割や、チーム医療についての問題も増えてきました。

112回看護師国家試験でも同様の傾向がみられており、113回以降も同様の傾向を示すと考えます。

  • エリクソンやハヴィガーストの発達理論
  • 胎児期・新生児期・乳幼児期の身体の発育
  • 思春期の第二次性徴や老年期の身体の変化
  • 近年は地域医療で関わる多職種の役割も問われやすい

目標Ⅲの出題傾向と予測

目標Ⅲからは以下の内容について出題されます。

  1. 人体の構造と機能
  2. 徴候と疾患
  3. 薬物の作用とその管理

これまで「人体の構造と機能」では、神経系、循環器系、血液・体液、消化器系、内分泌系について多く出題されていました。「徴候と疾患」のうち徴候については、貧血と不整脈が頻出し、次いで尿量の異常、チアノーゼ、黄疸、呼吸困難、便秘、浮腫などが多く出題されています。一方疾患で最も多く出題されるのは感染症で、次に生活習慣病が続きます。

また、令和4年の出題基準の改定により、「薬物の作用とその管理」のうち「管理方法」の出題が追加されました。患者の生活の場が多様化し、看護師主導で薬物を管理したり指導したりする機会が増えたためでしょう。これまで狭心症治療薬(ニトログリセリン)や、副腎皮質ステロイド薬、精神疾患治療薬、抗がん剤、強心薬などが出題の中心でしたが、薬物管理の禁忌や保存方法についてもよりいっそう注意が必要となるでしょう。

  • 「人体の構造と機能」では、神経系、循環器系、血液・体液、消化器系、内分泌系など
  • 「徴候」については、貧血や不整脈など
  • 「疾患」では感染症や生活習慣病など
  • 出題基準の改定で追加された「薬物の管理方法」はとくに注意する

目標Ⅳの出題傾向と予測

目標Ⅳからは以下の内容について出題されます。

  1. 看護における基本技術(コミュニケーション、看護過程、フィジカルアセスメント)
  2. 日常生活援助技術
  3. 患者の安全・安楽を守る看護技術

「看護における基本技術」では、バイタルサインの測定などのフィジカルアセスメントの出題数が圧倒的に多くなっています。次に多いのが看護過程の情報収集やアセスメントに関する問題です。

「日常生活援助技術」では、浣腸や導尿など実習ではなかなか経験できない援助技術の出題数が多いほか、誤嚥の予防や寝衣交換、体位管理、移動・移送、ボディメカニクスなどが頻出です。

「安全・安楽を守る看護技術」については、これまでも感染予防対策、特に標準予防策(スタンダードプリコーション)を中心とした出題が多かったのですが、令和4年の出題基準の改定によって、より出題内容が詳しくなり、感染経路別予防策や手指衛生、防護用具(手袋、マスク、ガウン、ゴーグル)について追加されました。これは、近年の新型コロナウイルス感染症の流行を反映してのことと考えます。

112回看護師国家試験では、さっそく感染防止対策に関する問題(滅菌法、飛沫感染、レジオネラ感染症、個人防護具、滅菌手袋に関するもの)が計5問も出題されました。

「診療に伴う看護技術」については、令和4年の改定によって「必修」で扱うには高度であるという理由から、輸液ポンプやシリンジポンプ、救命救急処置の中の体温管理が削除されました。また今日の医療現場での使用頻度の低下から、罨法や包帯法が削除されました。

一方で、これまで出題頻度が高かったのは、与薬方法、副作用の観察、採血方法、褥瘡の予防・処置、経管・経腸栄養法、気管内吸引、胸骨圧迫、トリアージなどですが、この傾向は今後も継続されると考えます。

  • バイタルサインの測定などのフィジカルアセスメント
  • 浣腸や導尿などの援助技術
  • 感染経路別予防策、手指衛生、防護用具について
  • いままで出題頻度が多かった与薬、採血方法などは今後も継続

まとめ

看護師国家試験の「必修問題」は、これまで少子高齢化、疾病構造の変化、国民医療費の高騰、地域包括支援システム、健康増進志向などのキーワードで示されるような社会の変化を反映して出題されてきました。そして、今後はさらに「感染対策」が大きく関わってくるでしょう。また、患者の療養の場の多様化によって、医師のいないところでのアセスメントや看護技術の重要性、多職種との連携についてますます問われてくるのではないでしょうか。


「第113回看護師国家試験|応援ラインナップ」に戻る

関連記事