• 公開日: 2022/1/17

ズバリここが出る「小児看護学」第111回看護師国家試験【予想解説】


この科目では、小児看護学の成長・発達についての基本的な理解をもとに、様々な健康状態にある小児とその家族の看護について扱います。





小児の成長・発達をもとに、様々な健康状態にある小児と家族を扱います。


何を習熟することが求められるの?


 4つの目標が設定されています。
 1)小児を取り巻く環境や小児の成長発達についての知識をもとに各小児期の健康増進のための看護を理解すること。
 2)病気や診療・入院が子どもと家族に及ぼす影響を理解すること。
 3)災害や虐待など特別な状況にある子どもと家族への看護を理解すること。
 4)健康課題をもつ子どもと家族への看護を理解すること。
 です。

 小児看護学では、あらゆる健康状態の小児に対し、成長・発達に合わせた援助を行うだけでなく、成長・発達を促進させるような援助も必要になります。そのため、基礎となる成長・発達について習熟する必要があります。

 また小児の療養によって生じる家族全体の問題に対して、どう対処したらいいのか、社会保障制度なども含めた援助を考えられることが必要です。

 さらに、小児看護学の問題で取り上げられる疾患には、先天疾患や悪性新生物が多く、疾病構造が成人や老年とは異なることに注意し、学習を深める必要があります。


小児期特有の疾患を理解することと、あらゆる健康状態にある小児に対する成長・発達を踏まえた援助、病児をかかえる家族全体への援助についての理解が求められます


近年の出題傾向は?


 前項で示した目標1)にあたる部分からは、小児に関する統計や、施策、成長・発達に関する問題が毎年多数出題されています。

 目標2)と4)については、一般問題で出題される場合よりも、2)と4)を併せた形で状況設定問題で出題される場合が多いようです。

 例えば、107回国家試験では、「保育園で他の園児のお弁当のおかずを食べたためにアナフィラキシーショック陥った3歳女児」の事例が出題されました。これに対する第1問は、「最優先して観察すべき内容は何か」という、病態を踏まえた重症度の判断に関する問題でした(小児看護学の状況設定問題の第1問目は、たいがい病態を問う問題が入ります。アナフィラキシーなどアレルギー疾患のほか、乳幼児の死因の上位にある先天奇形や染色体異常、悪性新生物などのほか、ネフローゼ症候群や川崎病、麻疹などが出題されます)。

 今回取り上げた107回の状況設定問題では、第2問・第3問は、「心配する母親への援助」や、「母親への退院指導」についての問題で、まさに目標②④を併せたような問題でした。このタイプの問題のバリエーションとして、「子どもの理解力に応じた説明」、「小児が入院することによって生じるきょうだいへの影響」、「患児が利用可能な医療費公費負担制度」などがあります。

 患児をとりまく環境を色々な視点から判断し、適切な発達に導くのに必要な看護を考える問題が増え、難問化しているように思われます。


小児特有の疾患について、病態をアセスメントするような問題の他、患児をとりまく環境を色々な視点から判断し、適切な発達に導くのに必要な看護を考える問題が増え、難問化しているように思われます


この出題傾向をクリアするための勉強方法は?


 成人看護学の勉強を通して病態生理をしっかり学んでおけば、小児の疾患の病態生理の理解にも役立ちます。このほかに小児看護学で頻出の先天奇形や染色体異常、小児特有の悪性新生物についての学びを深めておきましょう。学校感染症や、予防接種についての理解も重要です。

 発達(身体構造・運動能力・認知能力・生活習慣)に関しての学習は、暗記的な要素が大きいですが、お勧めするのは特定のキャラクターに発達のイメージを重ねることです。例えばクレヨンしんちゃんは歳ですが、5歳なら歯磨きやうがいはできる、排便の後始末もできる、スキップもできる・・・のようにです。

 ピアジェの認知発達理論やスキャモンの発育曲線、エリクソンの発達課題など理論系も弱い傾向にあるので、こちらもしっかり学習しましょう。

 法律については、予防接種法や児童福祉法(小児慢性特定疾病医療支援等を含む)を押さえましょう。


小児特有の疾患を学ぶことと、発達について学ぶことが重要です。発達については特定のキャラクターに発達のイメージを重ねると覚えやすいでしょう。発達に関する理論も重要です。
予防接種法・児童福祉法などもあわせて学習しましょう


ズバリここが出る予想問題「小児看護学」


問題 嗄声および吸気時の喘鳴がみられるのは次のうちどれか?

1.気管支喘息
2.クループ症候群
3.急性細気管支炎
4.マイコプラズマ肺炎


解答:2

上気道の狭窄では吸気性喘鳴・吸気性呼吸困難が、下気道の狭窄では呼気性喘鳴・呼気性呼吸困難がみられる。

1.(×) 気管支喘息は、Ⅰ型アレルギーによる発作性の気管支(下気道)の狭窄であり、呼気性喘鳴や呼気性呼吸困難がみられる。
2.(〇) クループ症候群は喉頭を中心とする炎症のため嗄声がみられる。また急激な上気道狭窄により、吸気性喘鳴がみられる。
3.(×) 急性細気管支炎は、細気管支(下気道)を中心とする急性炎症性疾患であり、激しい咳嗽と呼気性喘鳴・呼気性呼吸困難がみられる。 4.(×) 肺炎は下気道の疾患であることから、呼気性喘鳴がみられる。




執筆・解説

廣町 佐智子<日本看護研究支援センター 所長>

看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。




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