• 公開日: 2021/12/6

ズバリここが出る「人体の構造と機能」第111回看護師国家試験【予想解説】


この科目は、いわゆる「解剖生理学」にあたる部分です。「細胞→組織→器官→器官系」という生物のつくりの階層構造、器官系(神経系、感覚器系、循環器系など)の構造と機能について問われます。さらには生体の持つリズムや恒常性維持、成長や老化についても出題されます。





いわゆる「解剖生理学」です!


何を習熟することが求められるの?


 目標のひとつに「疾病の成り立ちを知る前提となる人体の構造と機能について、基本的な理解を問う」とあります。疾病を語るうえでの基本的な知識が必要だということです。

 そこで、日本国民に多い疾病についてみると、高齢者の増加に伴う認知症や感覚器障害、運動機能障害が挙げられます。また、生活習慣病としての高血圧や糖尿病、脂質異常症や高尿酸血症があり、それが進展することで起こる脳血管障害や虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性腎臓病などがあります。

 これらの疾病を語るうえでは、脳神経系や循環器系、感覚器系、運動器系、内分泌系、腎泌尿器系、体液・血液、免疫系などの基礎知識が必要とされます。


系統器官の基礎知識を理解しているかが求められます。特に高齢者に特有の疾患と生活習慣病を理解するための基礎知識が、高ポイントです


近年の出題傾向は?


 上で述べた脳神経系、循環器系、感覚器系、運動器系、内分泌系、体液・血液、免疫系がよく出題されています。過去問をベースにして、問題を作り替えたものが一定数ある一方で、過去問だけでは対応できない問題もみられています。

 例えば110回午前問題84では、「感覚受容にリンパ液の動きが関与するのはどれか。2つ選べ。1.嗅覚 2.聴覚 3.味覚 4.振動感覚 5.平衡感覚」などです。解剖学を深く学んでいる人は簡単に解答できるでしょう。

 しかし、そうでなくても「メニエール病」という、成人看護学などでよく出題される疾患が、「内耳のリンパ液が増えすぎたために起こる、回転性めまいや難聴を主症状とする疾患」ということがわかっていれば、2と5が正解だと気づくことができるでしょう。

 一見、難しいと思われる「人体の構造と機能」でも、病態生理の知識からさかのぼって解答することも可能なのです。


過去問を作り替えたような問題のほか、過去問で対応できないものもあり、難しく感じるかもしれませんが、病態生理の知識をヒントに解答できるものもあります


この出題傾向をクリアするための勉強方法は?


 「人体の構造と機能」は正答率が低く、60%を下回っています。苦手意識を持っている人が多いのかもしれません。しかし、「人体」は国家試験でも最も基礎的な部分であり、年間を通して繰り返し学んでほしい部分です。特に循環器系については、心臓の構造と体循環・肺循環を完璧に絵に描けることが重要で、それができると他の関連問題への理解が格段に進みます。脳神経系や内分泌系も学生が苦手な分野ですが、苦手なものほど、簡単な絵にしてみたり、覚えておきたいことをその周囲に書いたりして、自分なりの「ノート」を作成しておくといいでしょう。

 疾患や看護学の学習の際も「人体の構造と機能」を意識することが重要です。眼についた解剖生理の用語の理解度を確認し、必要に応じて参考書やテキストを辞書代わりにして確認しましょう。そのなかで、特に大切だが忘れそうなことは「ノート」にも記載しておきましょう。「ノート」は定期的にチェックし、知識の定着に役立てていきましょう。


正答率が低い科目です。特に苦手意識がある人は、テキストを読むだけでなく、自分で「絵」を描いて学習すると理解が進みます!


ズバリここが出る予想問題「人体の構造と機能」


問題 感覚受容器と中枢との関係で正しいのはどれか?

1.視細胞 ・・・・・・・・・・・ 側頭葉
2.コルチ器 ・・・・・・・・・・ 後頭葉
3.圧受容器 ・・・・・・・・・ 延髄
4.化学受容器 ・・・・・・・ 視床下部


解答:3

1.(×) 視細胞は網膜に存在する、光や色など視覚情報の受容器である。視覚情報は、電気信号に変換されて感覚神経を通って大脳の視覚野(後頭葉)に伝達される。
2.(×) コルチ器は、蝸牛に存在する聴覚情報の受容器である。聴覚情報は電気信号に変換されて、感覚神経を通って大脳の聴覚野(側頭葉)に伝達される。
3.(○) 圧受容器は、大動脈弓と頸動脈洞に存在する血圧情報をモニタリングする受容器である。血圧情報は電気信号に変換されて、自律神経を通って延髄(呼吸/心臓・血管中枢)に伝達される。
4.(×) 化学受容器は、動脈血酸素分圧や動脈血二酸化炭素分圧など血液中のガスの情報をモニタリングする受容器である。ガスの情報は電気信号に変換されて、自律神経を通って延髄に伝達される。



 感覚情報は「受容器(センサー)」でキャッチされ、担当する脳に伝達されます。ここでは、感覚受容器の種類と、そこから送られる感覚情報が、脳のどの部分に入力されるか質問しています。

 最近の国家試験では、ただ臓器の部位を学習するだけでなく、例題のように臓器同士がどう連携して機能しているか、生理学的視点を問うものが多くなっています。生理学的視点で人体をとらえることは、臨床現場でのアセスメントに不可欠であり、「アセスメントに強い看護師を世に送り出したい」という、出題側の強い意図を感じます。




執筆・解説

廣町 佐智子<日本看護研究支援センター 所長>

看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。




関連記事

看護知識

ナース専科で看護知識を”学ぶ”記事ランキング