そのうち子どもが欲しいと思っている人も、そろそろ2人目が欲しいと思っている人も、毎日は仕事で精いっぱい。「いつかは」と思っていても、実際に考え始めると不安になりますよね。そこで今回は、気になるナースの妊娠・出産のリスクについて、専門医に解説してもらいます。
やっぱりナースは妊娠しにくい?
前回のアンケート結果からも分かるように、ナースは職場や労働環境により妊娠しにくいと自ら認識しています。実際のところはどうなのでしょう。
不妊治療の専門医「原メディカルクリニック」の原利夫医師によると「確かに医療従事者は妊娠しにくい傾向があるといえるでしょう。特にナースの皆さんは、夜勤、立ち仕事、重労働といった業務に加え、ストレスやプレッシャーも強いはず」とのこと。やはりナースは妊娠しにくい職場・労働環境にあるといえそうです。
とはいえ、ストレスなどこれらの要素はどんな仕事にも少なからず当てはまることであり、一つひとつの要因が即不妊につながるということではありません。「昔、いわゆる3Kと呼ばれていたような、厳しい職場・労働環境とストレスやプレッシャーが加算的に積り積って、赤ちゃんができにくくなっているのではないかと考えられます」(原医師)。
深刻な「セックスレス」問題
中でも特に夜勤の問題は重大です。夜勤による不規則な生活からホルモンのバランスに乱れが生じ、これに伴い排卵のリズムが狂ったり、生理が不順になるといったことがあります。これは妊娠に直結する重要な問題。しかし、それよりもむしろ「セックスレス」が深刻だと原医師はいいます。
「パートナーとの生活サイクルがずれていれば当然、セックスの頻度は減ることでしょう。詳しくは後の回でご紹介しますが、セックス頻度を上げることで、女性は“妊娠しやすい体”に近づくもの。排卵日にかかわらず、セックス回数そのものが少なければ、授かりにくい要因となるでしょう」(原医師)
COLUMN
逆ED!?が女性に増加中! 最近話題のFSDとは
FSDという言葉を耳にしたことはありますか? FSDとは女性性機能障害のこと。「セックスに対して気が進まない」「快感が得られない」「セックスレス」といったようなセックスが楽しめない・苦痛を伴う・性欲が湧かない女性側の状態を指します。原因は体の機能によるものや心理的問題など、人によりさまざま。
原医師によると、ストレス過多になったとき、男性はセックスで発散できることもありますが、女性はセックスそのものが嫌になることも多いようです。ストレスの多い職場では、知らず知らずのうちにセックスレスになることも少なくありません。
妊娠中の仕事、どのようなリスクがある?
原医師いわく、母体がストレスや疲労を多く抱えているとホルモンのバランスが崩れてしまい「安胎効果(あんたいこうか)」と呼ばれる、赤ちゃんがお腹で安らぐための効果が出にくくなります。これにより流産を招くリスクが上がってしまいます。
とかくナースは自分の仕事に対する責任感が人一倍強く、責任の重い夜勤などの現場では自分が意識していなくてもストレスが溜まっていることがあります。こうした状況を改善するには、なかなか難しいことかもしれませんが、やはり勤務時間の見直しや、外来や日勤への配置換え、場合によっては職場換えなどを検討することが重要です。
実際にナースの中には、子どもが欲しいと思った段階で、夜勤を辞めるという女性も少なくありません。葛藤の大きな部分ではあると思いますが、自分にとっての大切なものを見極めて、後悔のない選択をしたいものです。
感染リスクは、あまり心配なし
また、アンケートに多くあった院内での感染リスクについては、「今の時代、現場での感染リスクはそれほど大きくないでしょう。はしか、おたふく、HIV、梅毒など心配な病気は多数ありますが、いずれもかかってしまったとしても現在は打つ手立てがあります。医療従事者であれば、一通りの予防接種も受けていることでしょう。
ただし気を付けたいのは風疹。これだけは妊娠初期に感染するとかなりの確率で赤ちゃんに障害が出ることが分かっています。これから妊娠したい人で必要な人は、風疹のワクチンを打っておきましょう。(「ナース専科マガジン」2010年12月号より転載)
※ 次回はあなたの子宮年齢、卵巣年齢をチェックします。