「24時間体制で利用者様を看る」というポリシーでスタートしたケアプロ。訪問看護ステーション東京では、その特性を活かしてさまざまな利用者さまを支援している。今回はその中のひとつ、早朝6時に利用者さまからの「体調が悪い。すぐに来て欲しい」コールに対応したケースを紹介しよう。
24時間利用者さまの命のために
いよいよ、2012年5月1日、ケアプロ訪問看護ステーションの開業となった。渋谷区周辺の訪問看護事業所や、介護事業所へ挨拶回りに行くと、「あなたたちが噂のケアプロさん?」「お手柔らかに」と言われることも少なくなかった。ケアプロが、訪問看護を始めるという噂はもうすでに広まっていたのである。
しかし同時に、「自分たちが行けない地域の訪問看護をしてくれるのはとても助かる」「勉強会をやるから来てね」と言ってくださる方々も多かった。
ライバルという垣根をつくらず、手を取り合って皆で地域の人々の健康を守ることが大切であると改めて感じた。
垣根を飛び越え、救急車を自転車で追っかけて
平間に、開業当初の印象的な出来事について聞いてみた。
「僕たちは24時間体制で利用者さまを看ているので、寝る時も携帯電話を片手に臨戦態勢は整えているんです。開業当初のある朝6時、寝ているところに携帯が鳴って、ある利用者さまから『なんだか体調が悪い。すぐ来て欲しい』と連絡が入り、慌てて家を飛び出しました。緊急通報はそのときが初めてでしたからね。焦りすぎて、携帯と財布を忘れてきてしまうほどでした。
利用者さまの自宅に着いてインターホンを押しても出てこない。意識をなくしているのかも、手遅れになっているのでは、と悪い想像が膨らみ、不安がこみ上げてきました。インターホンは出ないまま。待っていても埒が明かないので、利用者さまの家の垣根を跳び越えました。不法侵入ギリギリですね。いや、不法侵入ですね(笑)窓から、利用者さまが倒れているのを見つけて、これは大変だと一瞬頭に血が昇りましたけど、落ち着くように自分に言い聞かせました。
利用者さまの意識はありましたが、口から泡を吹いている状態で、低血糖状態でした。救急車を呼び、甘いものが何もなかったので、家の冷蔵庫からヨーグルトについている砂糖を取ってきて口の中に入れ込みました。 利用者さまは少し回復した状態で、救急車に乗せられて行きました。僕は同行者として、救急車のあとを自転車で追っかけましたよ。そしてその後もいつもどおり朝から訪問が入っていたので、体力的にはしんどかったですけど、利用者さまの九死に一生を救えた印象的な出来事です。 今となっては不法侵入も許されるかなと思っています(笑)」
いつ緊急通報が入るかわからない緊張続きの彼らの気持ちを支えているのは、利用者さまの命を預かっているという自負なのかもしれない。
※次回は、「第3章 運営、その奮闘の日々」、水曜配信です。