テーマ:患者さん・その家族からの「忘れられない一言」
貴女のことは覚えていません
ICUの看護師としての仕事
私は重傷集中治療室(ICU)で意識レベルが低い患者をよく受け持っています。
救急車で運ばれてきて、大暴れで押さえつけながら救急から来た患者の処置を行って…というのも珍しくありません。
助からない命もあります。
ですが、元気になりICUから一般病棟へ変わり、後遺症も残らず何事もなかったかのように退院される方もいます。
担当した患者さんが顔を出してくれた
あるとき元気になって一般病棟へ変わったのち退院が決定した患者さんが、ICUに顔を出してくれたことがありました。
救急車で運ばれてきて、緊急で手術に近い処置を行い、その途中で心停止して…と大変でした。
救急車で運ばれてきてからの数日、1番状態が悪いときに私が担当して受け持っていた方です。
「私のこと覚えていますか?」と聞いたところ「えっと…、ごめんなさい。貴女のことは覚えていないです。苦しかったのは覚えているのですが…」と答えられました。
顔や名前は覚えてないが、1番苦しい時にそばで色々やってくれた。という記憶は残っているとのことでした。
「覚えていない」と言ってくれることが嬉しい
意識レベルが低かったり、超急性期で苦しい記憶しかなかったりと私自身を覚えていてくれる患者はあまりいません。
覚えられていなくても、覚えることができないくらい苦しく生死をさまよっているときにかかわり、「貴女のことは覚えていません」と言えるくらい元気になったのだと思うと、嬉しくて。
患者に覚えてもらえることは少ないですが、そういってくれる人が増えるといいなと思います。