今回は、施設のスタッフが認知症の患者さんにどう対応しているのかをお話しします。
入居者なりの状況把握の仕方とスタッフの心理
認知に問題があるとき、入居者は、自分の置かれている状況を把握しようとして必死に情報を集めようとする。
トヨさん(仮名)は、スタッフの顔を見るたびに「あんた誰だい? 娘の友達かい?」を連発していた。みんな「私は娘さんの友達の山田ですよ」とか「お世話係の鈴木です」とか返事をしていた。
聞くほうは、忘れているので新鮮な気持ちでいいかもしれないが、聞かれるほうはいい加減飽きてくる。
私がそんな気持ちでいたとき「あんた誰だい?」と聞かれ、今度は答えに変化をつけてみようと思い立ち「吉永小百合です」と答えてみた。
するとトヨさんは、はっきりと、「あんたもずうずうしいねえ」と答えたのだ。そばにいたみんなは思わず笑ってしまい、「確かにそれはずうずうしいねえ」とトヨさんの意見に賛同した。