※実習のカンファレンスは守秘義務が最優先です。患者や施設が特定されうる情報は入力せず、必ず学校/実習施設の規程に従ってください。AIの回答は必ず検証し、自分の言葉に直しましょう。
この記事でわかること
POINT
司会は「目的確認→発言の促し→論点整理→合意形成→締め」のサイクルを回す役
台本では、長い文章ではなく「進行の区切り」と「時間配分」を設計する
議論が逸れたときは「目的・根拠・優先順位・次の行動」の4つの視点で問い直す
締めは「合意点・未決定事項・次の行動」の3点に絞る
前提条件を入力し、司会進行の型(台本、進行フレーズ、締めのテンプレート)を提案させる
AIの提案をそのまま使うのではなく、自分の言葉に直す
仕上げとして、AIを使って「今日の目的を30秒で説明する」練習を行う
患者が特定される情報は絶対に入力せず、情報を必ず「抽象化・一般化」する
AI利用の可否や申告方法など、施設のルールに従う
AIの回答を鵜呑みにせず、必ず根拠資料と照らして確認する
AI活用×カンファレンスの司会進行における「前提知識」
はじめに、生成AIを安全に使うためのルールと、司会進行の基本を確認します。
生成AI活用の「安全・倫理(ルール)」
まずは、看護学生として知っておくべきAI活用時のルールを確認しましょう。
1.個人情報・機密情報は入力しない
看護職は、対象となる人々の秘密を保持し、取得した個人情報を適正に取り扱う責務があります。ICT利用においてもリスクを正しく認識し、プライバシー保護を徹底することが求められます1)。
AIに入力したデータは、国外サーバーで処理されたりAIの学習に利用されたりする可能性があります。「一度入力したら消去できない」前提で、特定情報ではなく「抽象化」した情報を入力することが極めて重要です2)3)。
ここでいう「抽象化」とは、患者や施設が特定されうる組み合わせ(氏名、病室、日付、希少疾患、具体的経過など)を外し、「司会台本を作るのに必要な条件だけ」に置き換えることです。
【入力時のOK例・NG例】
2.学校/実習施設の規程が最優先
AI利用の可否、申告の要否、提出物での扱い(引用・注記)、端末持ち込みなどは、すべて学校や実習施設ごとにルールが定められています。また、カンファレンスにおける持ち時間・役割・評価指標なども、施設ごとに異なる遵守すべきルールです。
医療情報の取扱いは、安全管理の観点から適切な対応が求められるため、外部サービス利用やセキュリティも重要な論点になります4)。学生個人の判断で利用せず、学校・施設が許可した範囲・ツールで、定められたルールに沿って活用してください。
3. AIの回答を鵜呑みにしない
生成AIは不正確な情報を出力する可能性があります。AIの回答はあくまで「下書き」や「案」として扱い、必ず学校の教科書や講義資料などの根拠資料と照らし合わせ、自分の言葉で言い換えや検証を行ってください。
カンファレンスの司会進行における基本・考え方
司会に求められることは、上手に話すことではなく「目的に沿って班の議論を導き、限られた時間内で結論と次の行動を出すこと」です。ここでは、カンファレンスの司会進行にあたり、押さえておきたい4つの基本を紹介します。
1.司会の役割は「議論のサイクル」を回すこと
司会は単なるまとめ役ではなく、班の話し合いを活性化させ、ゴールへ導く「進行役」です。以下の流れを意識すると、議論が迷子になるのを防ぐことができます。
①目的確認
- 「今日何を決めるのか」「何分で進めるのか」「最後に何を確認して終えるのか」を共有します
- ここでゴールと進め方がそろうと、その後の発言がブレにくくなります
※役割確認や進め方の共有は、この段階で行うとスムーズです
②発言の促し
- 「話せる人だけが話す場」にしないことが大切です
- 観察・記録・指導者の指示など、事実に基づく情報を順番に出してもらい、全員が少なくとも一度は発言できるよう促します
※情報共有は、この段階で行うとスムーズです
③論点整理
- 事実と推測を分けながら「今、何が論点なのか」「何を決める必要があるのか」を言語化します
- バラバラに出た情報を整理し、班の視点を揃える役割を担います
④合意形成
- 論点がみえたら、班として何を優先するかを決めます
- 結論だけでなく、「なぜそれを優先するのか」という理由まで確認すると、発表や次の行動に説得力が増します
⑤締め
- 発言をきれいに言い換えることよりも、班としての「着地点」を明確にすることが重要です
- 合意点・未決定事項・次の行動を確認し、「結局どうするのか」を形にして終えるのが司会の締めです
2.台本は「進行の区切り」と「時間配分」が重要
一言一句の台本を作ると、予想外の発言が出たときに対応しづらくなります。大切なのは、「どこで区切るか」「何分使うか」「次に進めるための台詞」が分かることです。 20分のカンファレンスなら、以下のメモ程度で十分です。
【進行スケジュール(20分の場合)】
| 進行の 区切り | 目安時間 (20分) | ねらい | 司会の一言例 |
|---|---|---|---|
| 目的確認 | 0〜2分 | ゴール・時間・役割・進め方の共有 | 「今日は20分で、優先順位と次の行動を合意することをゴールにします。最後に合意点・未決定事項・次の行動を確認して終わります。」 |
| 発言の促し | 2〜8分 | 全員から発言(事実)を引き出す | 「まずは事実を揃えましょう。観察や記録に基づく情報を短くお願いします。全員一度は発言しましょう。」 |
| 論点整理 | 8〜14分 | 問題点と優先順位候補を絞る | 「出た情報から論点を整理します。一番優先すべきことはどれか、理由も含めて考えましょう。」 |
| 合意形成 | 14〜17分 | 班としての結論を出す | 「班の結論を一文で揃えます。何を優先し、なぜそう考えるのかを確認します。」 |
| 締め | 17〜20分 | 合意点・未決定事項・次の行動の確認 | 「最後に、合意点・未決定事項・次の行動の3点を確認して締めます。」 |
このように区切っておくと、時間が押しても「どこを削り、締めに何分残すか」を即座に判断できます。司会メモは長文よりも、「見出し」と「短い一言」で構成するのが実践的です。
3.議論が逸れたときは「4つの視点」で問い直す
議論が停滞したり脱線したりした際、司会が自ら結論を出す必要はありません。大切なのは、「議論を本筋に戻す問い」を投げることです。以下の4つの視点を持っておくと、冷静に対応できます。
【議論を立て直す「4つの視点」と問いかけ例】
| 視点 | ねらい | 問いの例 |
|---|---|---|
| 目的に戻す | ゴールとのズレの確認・修正 | 「今日のゴールは優先順位と次の行動の合意でした。今の話は、その結論にどうつながりますか?」
「この論点は今ここで決める必要がありますか?」 |
| 根拠に戻す | 事実と推測を分ける | 「それは、どの観察・記録・指導者の指示が根拠ですか?」
「どこまでが事実で、どこからが推測でしょうか?」 |
| 優先順位を決める | 扱う対象を限定する | 「安全性・緊急性・影響の大きさでみたとき、最優先はどれですか?」
「今すぐ考えることと、後で確認すればよいことを分けるとどうなりますか?」 |
| 次の行動に落とす | 結論を実際の行動に変える | 「具体的に、誰が何をいつまでにしますか?」
「次回までに確認すべきことと、その担当者は誰にしますか?」 |
問い直しは相手の発言を否定するためではなく、議論を整理して前進させるために行います。発言の冒頭に「いったん整理します」「今の話を活かしながら確認します」といった前置き(クッション言葉)を添えるだけで、場の雰囲気を崩しにくくなります。
4.締めは「3つの項目」に絞って結論を出す
司会の締め(まとめ)は、これまでの発言をきれいに要約することではなく、班として「何を優先し、次に何をするか」を揃えることが目的です。以下の3点を言えれば、合格ラインです。
【締めくくりで確認すべき3項目】
| 項目 | 考えるヒント | 具体例 |
|---|---|---|
| 合意点 | 班として一致した「最優先事項」 | 「今回の最優先は〇〇で一致しました」 |
| 未決定事項 | 現時点で不足している情報 今後の検討事項 | 「〇〇については、明日確認が必要です」 |
| 次の行動 | 誰が・何を・いつまでに行うか | 「Aさんが明日までに、〇〇を確認します」 |
ここが曖昧だと、「結局どうすればいいのか」が分からず、学びも行動にもつながりにくくなります。最後はこの3点に絞って確認することで、短時間でも議論を着地させやすくなります。
生成AIの使いどころ:おすすめ手順(4ステップ)
司会進行の準備で迷ったときは、以下の4ステップで進めましょう。AIを「進行の下書き」に使うことで、当日の進行・時間管理・発言の促進に余裕をもって臨めるようになります。
自分)
最初に、AIに入力する前提条件を「1文のメモ」にまとめます
・持ち時間(合計)
・人数と役割(司会/書記/発表者)
・評価指標
・「今日のゴール(例:「20分で、優先順位と次の行動を合意する」)」
生成AI)
準備した条件メモを入力し、区切りと目安時間を示した台本、各区切りや問い直し時の進行フレーズ、締めのテンプレートなど、司会進行の「型」を提案してもらいます
生成AI ⇔
自分)
AIの提案を、根拠資料(講義資料・実習要項・施設手順・指導者の指示)と照合し、自分の言葉に直します
自分)
最後は自分の力で「話せる状態」に仕上げ、実施後には振り返りを行います
・終了後の振り返り:「押さえたゴール」と「効果的だった問い」を1つずつメモし、次回の司会で活用できるようにする
【実践例】司会進行の準備(台本・進行フレーズ・締めテンプレート作成)をしたい
ここでは、カンファレンス当日の「司会台本(メモ)」や、進行で役に立つ「進行フレーズ」、議論を着地させるための「締めのテンプレート」を生成AIと準備するプロンプト例を紹介します。
今回のAI活用の目的は「当日のカンファレンスをスムーズに進めるための、司会進行の『型』を作成すること」です。
AIへの質問方法
プロンプト例
私は実習カンファレンスの司会を担当します。患者さんや施設が特定できる情報は入力しません。
下の条件だけで、司会進行の下書き(型)を作ってください。
【条件】
持ち時間:合計20分
役割:司会1名、発表1名、記録1名
評価指標:時間内に終える/全員が一度は発言する/合意点と次の行動が明確
今日のゴール:優先順位と次の行動を合意する
【作ってほしいもの】
1.進行の区切り(目的確認・発言の促し・論点整理・合意形成・締め)と、各区切りの目安時間
2.各区切りでの司会の一言(短い日本語。読み上げやすく)
3.議論が逸れたときの問い直し用の進行フレーズ
目的に戻す問い、根拠に戻す問い、優先順位を決める問い、次の行動に落とす問い
それぞれ2つずつ
4.締めのテンプレート
合意点、未決定事項、次の行動(誰が・何を・いつまで)を埋められる形
【出力の条件】
看護学生がそのままメモに貼れるように、短く、区切りがわかる形式で出してください。
専門用語は必要なら一言で説明を添えてください。
AIの回答をどう活用する?
AIで得られた回答例
0:00-1:00 目的確認(ゴール共有)
司会の一言:
「始めます。今日は20分で優先順位と次の行動を合意するのがゴールです。最後に合意点・未決定事項・次の行動の確認で締めます。」
1:00-3:00 役割確認と進め方
司会の一言:
「役割を確認します。発表は要点を1分で、記録は合意点・未決定事項・担当と期限をメモしてください。全員が一度は発言できるよう進めます。」
3:00-8:00 発言の促し(情報共有)
司会の一言:
「まず事実をそろえましょう。主観ではなく、観察や記録に基づく情報を短くお願いします。」
8:00-14:00 論点整理(何が問題で、何を優先するか)
司会の一言:
「今出た情報から、優先順位を1つ決めます。理由も言語化します。」
14:00-17:00 合意形成(班として決める)
司会の一言:
「班としての結論を一文でそろえます。何を優先し、なぜそうするかまで確認します。」
17:00-20:00 締め(合意点・未決定事項・次の行動)
司会の一言:
「最後は次の3点を確認して締めます。合意点、未決定事項、次の行動(誰が・何を・いつまで)です。」
【議論が逸れたときの問い直し(使い分け)】
目的に戻す問い:
・「今日のゴールは優先順位と次の行動の合意でした。今の話はゴールにどうつながりますか?」
・「この論点は、結論を出すために今必要ですか?後回しでも良いですか?」
根拠に戻す問い:
・「それは、どの観察・記録・指導者の指示が根拠ですか?」
・「事実と推測を分けると、今どこまでが事実ですか?」
優先順位を決める問い:
・「安全・緊急性・影響の大きさで見ると、最優先はどれですか?」
・「今できることと、今はできないことを分けるとどうなりますか?」
次の行動に落とす問い:
・「結論を行動にすると、誰が何をいつまでにしますか?」
・「次回までに確認すべき情報は何で、担当は誰ですか?」
【締めテンプレート(その場で埋める)】
合意点(班として一致):
・最優先は( )。理由は( )。
未決定事項(確認が必要):
・( )を(誰が)確認する。
次の行動(誰が・何を・いつまで):
• (誰が)(何を)(いつまでに)
• (誰が)(何を)(いつまでに)
AIの回答を活用するときのポイント
AIの下書き(案)は型として使う
問い直しフレーズは短くして、自分の言葉に直す
本番前に声に出して読み、話しやすい形に整える
生成AIの回答は、完成原稿としてそのまま使うのではなく、司会進行の「型」を作る下書きとして使うと効果的です。とくに、区切りごとの時間配分や議論が逸れたときの問い直しフレーズは、短く整えると本番で使いやすくなります。準備の仕上げとして、必ず声に出して読み、自然な表現に調整しておきましょう。
活用時の注意点
AIは「不正確な内容」が混じる前提で、必ず裏付けをとる
AIの回答をそのまま使わず、自分の言葉で整える
学校や施設の「使用申告・引用ルール」に厳格に従う
生成AIはもっともらしい自然な文章を作りますが、不正確な内容が混じる可能性があるため、検証の際は「施設・学校ルール → 講義資料 → 指導者の指示 」の順で裏付けを行い、最後に班の合意をとりましょう。また、AIの回答を司会台本としてそのまま読むと、棒読みになりやすく、質疑応答に対応できなくなるリスクがあります。
AIの文章は、自分の言葉に書き換えて声に出して練習し、議論の締めでは当日の合意点に合わせて自分でまとめるようにしましょう。そして、学校がAI使用の申告や引用ルールを定めている場合は、必ず従ってください。
- 実習前日に、持ち時間・評価指標・今日のゴールだけを生成AIに入力して、時間配分つきの司会メモ(下書き)を作る
- 生成AIの「目的・根拠・優先順位・次の行動」の問い直しフレーズ案を、自分の言葉で整えたうえで印刷して持ち込み、議論が逸れたら1つ選んで使う
- 終了後、AIの下書きを見直しながら「今日うまくいった問い」を1つだけメモし、次回の司会に再利用する
- 患者が特定されうる情報(氏名、病室、日付、経過の原文、記録や議事録のコピペ、スクショ、録音)を直接入力して要約させる
- AIの回答を検証せず、そのまま読み上げて司会を進行する(前提のずれや誤りに気づけない)
- 議論の締め(何を優先するか、どう合意するか)をAIに丸投げし、班での話し合いを省略する
【総まとめ】カンファレンスの司会準備におけるチェックリスト
最後に、AIを活用して準備した内容は、報告・発表の前に、以下の項目を必ず点検しましょう。
カンファレンス実施前のチェックリスト
【ルール順守】
Q.学校/実習施設で定められたルールに反していませんか?
【台本の構成】
Q.「進行の区切り」と「時間配分」を明確にし、「締めの3点」は議論後に書き込む状態になっていますか?
【内容の妥当性】
Q.AIが作成した台本やフレーズは、講義資料・実習要項・指導者の指示と照らして確認しましたか?
【自分の言葉への変換】
Q.AIの回答を自分の言葉に直し、詰まらずに話せる状態になってますか?
やってはいけないこと
患者や施設が特定される情報をそのまま入力する
AIの回答を検証せず、そのまま台本として読み上げる
班で話し合うべき優先順位や結論までAIに任せてしまう
まとめ:AIを使いこなして、質の高い司会進行を実現する
生成AIは、司会者が不安に感じやすい「進行の流れづくり」「議論の問い直し」「締めの整理」を支えてくれるツールです。一方で、実習のカンファレンスでは守秘義務を最優先しなければなりません。入力内容は必ず抽象化し、学校・施設のルールを厳守しましょう。AIの提案は必ず根拠をもって検証し、自分の言葉に直してから活用することを徹底してください。
迷ったときは4つの視点(目的・根拠・優先順位・次の行動を問い直す)から「問い」を投げかける、最後は「合意点・未決定事項・次の行動」を確認して締めることができれば、司会は安定し、班の学びも一段深まるはずです。
引用・参考文献
2)個人情報保護委員会(2023):生成AIサービスの利用に関する注意喚起等.(2026年2月25日閲覧)https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf
3)個人情報保護委員会(2016):個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)(令和7年12月一部改正).(2026年2月25日閲覧)https://www.ppc.go.jp/files/pdf/251212_guidelines02.pdf
4)厚生労働省(2023):医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版(令和5年5月).(2026年2月25日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html