まなび
  • 公開日: 2026/5/13

【看護学生向け生成AI活用ガイド】指導者へ報告すべき内容の要点整理

実習でいちばん緊張する場面の1つが「指導者への報告」です。患者さんの情報は多く、変化があるほど「全部報告しなければ」と焦ってしまい、話が長くなりがちです。その結果、一番大事な結論(今何が起きたか)や、お願い(何を判断してほしいか)が埋もれてしまいます。

そこで役に立つのが、生成AIを練習相手として活用する方法です。この記事では、AIを使って「伝えるべき要点」を整理する練習法を紹介します。ただし、AIに臨床判断をさせるのではなく、あくまで言葉の整理に活用し、最後は必ず自分で修正しましょう。
※生成AIの回答には、誤りが含まれる可能性があり、入力内容によっては機密情報・個人情報の漏えいリスクもあります。最終的な確認は、必ず自分自身で責任をもって行いましょう。

この記事でわかること

POINT
1. 指導者への報告で活用できる「基本の型」

コミュニケーションの型「SBAR/ISBAR」を用いることで、脱線せず簡潔に伝わる

2. 生成AIで「報告の要点」を整理するコツ

60秒程度の報告から要点を整理し、30秒ほどに短縮する

AIの回答をそのまま現場で読まず、自分の言葉に直す

3. 個人情報の漏えい・著作権侵害・規程違反を防ぐルール

患者情報・実習記録・逐語録(会話ログ)・写真は入力しない

守秘義務や、端末・SNS・AI利用は、実習先と学校のルールを最優先する

AI活用×報告練習における「前提知識」

はじめに、生成AIを活用する前に理解しておくべき「安全・倫理ルール」と、指導者への報告をスムーズにする「基本の型」について解説します。

生成AI活用の「安全・倫理(ルール)」

まずは、生成AIを使う前に、看護学生として「守るべきルール」を確認しましょう。

1.個人情報・機密情報の入力禁止

看護師の倫理綱領では、業務上知り得た個人情報を適正に取り扱うことや、ICT・SNS利用に伴うリスクを正しく認識することが求められています1)

以下のような情報は、たとえ単体では特定できないものでも、組み合わせで特定されるリスクがあるため、入力は絶対NGです。

【入力NG項目】
  • 直接特定できる情報(氏名、ID、病室番号、施設名、顔写真など)
  • 組み合わせで特定につながる情報(日付+経過、珍しい疾患名+年齢など)
  • 実習記録やカルテの原文(記録や指導者コメントのコピペ、電子カルテの文面など)
  • 画像データ(記録の写真、モニター画面、検査結果のスクリーンショットなど)

2. 学校/実習施設の規程を最優先にする

「実習でAIを使ってよいか」「どの端末ならよいか」は、必ず学校や実習施設の規程を確認しましょう。医療情報の安全管理は、組織としてリスクアセスメントに基づいた対策が求められる領域であり、国もガイドラインを示しています2)

私物端末の持込み、病棟内での使用、記録の持出しなど、自分で判断せず必ず施設ごとのルールに従ってください。

3. 入力内容は「匿名化」する

多くの生成AIサービスは、入力データを国外サーバーで処理する可能性があります(越境移転)3)。個人情報保護の観点からも、必ず架空の設定や一般的な表現に置き換えて(匿名化して)使用するのが基本です。

報告の基本型:SBAR(エスバー)とISBAR(アイエスバー)

報告の漏れや脱線を防ぐため、医療現場では「SBAR(エスバー)」や「ISBAR(アイエスバー)」という構造化コミュニケーション(情報を整理して伝える手法)が使われています。これは、急変時などの判断が必要な場面で特に有効な「安全のための型」です4)


【SBAR(エスバー)の構成要素】
構成要素 話す内容のヒント
S (Situation/状況) 結論から話す
【例】今何が起きて、どれくらい急ぐか
B (Background/背景) 経過を話す
【例】今回に関係があることだけを最小限に
A (Assessment/評価) 考えを話す
【例】事実と、そこから考えられる心配点 ※断定しない
R (Recommendation/提案・依頼) 欲しいことを具体的に
【例】確認したい、指示がほしい(1つ)など

ISBARは、SBARの冒頭にI(Identification/名乗り・立場)を加えた型です。実習生の場合は、最初に「誰が、どの立場で、何の報告か」を一言で置くと、相手が報告を受け取りやすくなります4)
※現場での名乗り方や患者さんの呼称・識別方法は、必ず施設ルールに合わせます。

生成AIの使いどころ:おすすめ手順(3ステップ)

指導者へ報告する際には、以下の流れで生成AIを活用すると、安全かつ効率的に要点を整理できます。

STEP 1
準備(自分自分)

まずは自分で「観察の事実」をS/B/A/Rの4枠に書き出し、メモをつくります
※数値や固有名詞は入力せず、変化や方向性を書く(【例】低下・増加・悪化 など)

STEP 2
整形(生成AI生成AI)

メモを入力し、生成AIに「要点3つ」「情報の抜け」「短縮案(60秒版→30秒版)」「言い換え」を提案してもらいます
※AIの回答はそのまま提出しない/そのまま読まない

STEP 3
仕上げ(自分自分)

AIが提案した30秒版を声に出して練習し、詰まった箇所を言いやすく調整する

STEP 4
振り返り(自分自分⇔生成AI生成AI)

報告後は「何が伝わった/伝わらなかった」を1行で振り返り、改善点をAIに提案してもらいます。
※入力時は必ず匿名化する

【実践例】指導者への報告をわかりやすく整理したい

ここでは、生成AIを活用して、指導者に報告する内容を「SBAR」の型で整理するためのプロンプト例を紹介します。

今回のAI活用の目的は「報告内容をSBARで構成し、伝えるべき要点・優先度を整理すること」です。

AIへの質問方法

プロンプト例では、患者さんが特定されないように情報を省略しています。個人情報や施設名、日付、病室番号などの入力は原則禁止です。医療行為の判断や指示はせず、「指導者に確認するための報告」を短く整えることだけを目的にしてください。
プロンプト例
あなたは看護実習生の「報告練習」を手伝うコーチです。
以下の内容をSBAR(必要ならISBAR)として整理してください。

【S(状況)】
・状態変化があり、指導者に報告したい。

【観察した事実(できるだけ事実のみ)】
・SpO2が普段より低下している(具体的数値は書かない)
・呼吸数が増加している
・顔色が悪い

【B(背景:今回に関係する範囲だけ)】
・酸素投与がある
・普段は大きな変化なく安定していた

【A(評価:事実と懸念を分ける)】
・観察から悪化が心配(原因は断定しない)

【R(依頼:指導者に確認したいこと)】
・今すぐ確認してほしい
・追加で観察すべき点や、報告の優先順位の指示がほしい

出力してほしいもの:
・優先して伝える要点を3つ(それぞれ理由つき)
・ISBARの60秒版(口頭で言える文章)
  ※私が現場で数字を補えるよう、具体的な数値の部分は [数値] 、名前は [患者名] と表記してください。
・ISBARの30秒版(さらに短く)
・断定を避けた言い換え例(2パターン)
・指導者に追加で確認すべき質問候補(3つ)
・最後に「自分で確認すべきチェック項目」を短く箇条書きで

AIの回答をどう活用する?

AIで得られた回答例
優先して伝える要点(理由つき)
(1) 呼吸状態の悪化を示す変化が複数ある(SpO2低下、呼吸数増加、顔色不良)
    → いずれも「酸素化/呼吸仕事量の増加」を疑うサインで、優先度が高い。

(2) 以前は安定していたのに「変化」が起きている(背景とのギャップ)
    → 変化のタイミングが重要で、早めの評価が必要になりやすい。

(3) すでに酸素投与があるのに悪化傾向
    → 現状の観察が継続でよいのか、追加の観察や報告基準を確認する必要がある。

60秒版 ISBAR(口頭例)
I:実習生の〇〇です。担当の [患者名] さんについて報告します。
S:呼吸状態が悪化している可能性があり、報告します。現在、SpO2が普段の [数値] %から [数値] %へ低下、呼吸数が [数値] 回台へ増加し、顔色不良がみられます。
B:酸素投与 [数値] Lがあり、これまでは [数値] %台で安定していました。
A:観察した範囲では、呼吸状態が悪化している懸念があります。原因は現時点では判断できません。
R:早めに状態確認をお願いしたいです。追加で観察すべき点(【例】呼吸音など)や、次に報告すべき基準(SpO2 [数値] %以下など)の指示をください。

30秒版 ISBAR(さらに短く)
I:実習生〇〇です。担当 [患者名] さんの呼吸が悪化している可能性があり報告します。
S/B:酸素投与中ですが、SpO2 [数値] %、呼吸数 [数値] 回と変化があります。
A:急な悪化が心配です。
R:早めに確認をお願いします。追加の観察ポイントと、次の報告基準を教えてください。

回答を活用するときのポイント

☑ AIの回答を「たたき台」とし、30秒で伝えられる長さに整える

☑ [数値] は必ず自分の観察メモをみて埋める

AIには個人情報保護のために具体的な数値や固有名詞を入力しません。ただし、実際の報告では具体的な数値が必要不可欠です。AIの回答の台本の [数値] 部分には、必ず直前で測った自分の観察データを入れて報告してください。

また、生成AIの回答は、SBARの型に沿って要点を並べ替えた「練習用の下書き」です。必ず自分の観察メモと照合して、言い過ぎ/抜け/矛盾がないか確認し、自分の言葉に言い換えます。そして、実際に声に出して読み、30秒で報告できる長さに調整しましょう。

【30秒に短縮するコツ】

1.B(背景)を削る
既往歴を全部伝えず、「今回に関係する背景1つ」だけに絞ります

2.A(評価)で断定しない
事実と懸念点を伝え、断定表現は避けましょう
【NG例】「肺炎です」「呼吸不全です」
【OK例】「呼吸状態が悪化しているようにみえ心配」「原因は判断できない」

3.R(依頼)を具体化して1つに絞る
「指示をください」だけでなく、「何についての」まで伝えます
【例】「今すぐ確認をお願いします。追加観察の指示と報告基準をください」

活用時の注意点

☑ AIの回答を丸暗記しない

☑ 緊急性が高い/判断・行動が必要な場面ではAIは使わず報告する

☑ 最終判断は指導者や施設のルールに従う

生成AIは、患者さんを直接観察できず、現場の優先順位や施設手順も把握していません。そのため、AIの回答を丸暗記してそのまま読み上げると、自分の観察事実とズレていたり、施設の用語や手順に合わなかったりする場合があるため、危険です。回答を鵜呑みにせず、あくまで「伝え方の整理」として活用することが重要です。

また、緊急性が高いと感じた場合や、判断・行動が必要な場面では、AIに相談するのではなく、施設のルールに沿って速やかに指導者へ報告し、指示を仰いでください。

▼ OK活用例(望ましい使い方の具体例)
  • 自分の観察メモをS/B/A/Rの4項目(固有名詞なし)で書き出し、AIに「60秒/30秒版のSBAR」と「情報の抜け」を提案してもらう
  • AIの回答を自分の言葉に言い換えて、声に出して練習する
  • 報告後に「次はSをもっと短く」など振り返りをAIに入力し、改善案をもらう
▼ NG活用例(避けたい使い方の具体例)
  • 実際の患者さんの氏名や病室番号、日時経過、カルテの文章をそのままAIに入力する
  • AIの回答をそのまま読み上げる/記録や提出物にコピペする
  • 病棟で私用端末を使うなど、施設ルールに反した方法でAIを利用する

【総まとめ】指導者への報告内容の最終チェックリスト

最後に、AIを活用して整理した作成した報告内容について、以下の項目を必ず点検しましょう。

現場で使う前の最終チェックリスト

言葉の自然さ

Q.声に出して読み、自分の言葉で自然に言える表現や長さ(目安30秒)になっていますか?

断定表現の調整

Q.患者さんの状況を断定せず、「~の可能性」「~が心配」など確認する表現・質問が含まれていますか?

指示・手順との整合性

Q.AIの回答は、実習施設の手順書や指導者の指示と矛盾していませんか?
Q.台本の[数値]は、必ず直前に測定した自分の観察データを埋めましたか?

患者さんの尊厳への配慮

Q.相手を尊重し、傷つけない表現になっていますか?(否定的・決めつけの言い回しになっていませんか?)

ルールの順守

Q.学校や実習施設の「AI利用ルール(端末・場所・入力内容・申告の有無など)」を守れていますか?

NG やってはいけないこと

個人情報・実習先が特定できる情報の入力(氏名、ID、病室番号、施設名、日時経過、カルテ原文、画像など)

迷ったときや緊急時の対応でAIの回答(案)を最優先する(報告や確認を遅らせる)

AIの回答をそのまま現場で読み上げる/記録や提出物にコピペする

緊急事態にもかかわらず、AIに先に相談する

まとめ:AIを使いこなして、報告の質を上げる

生成AIは、SBAR/ISBARで要点を整理し、指導者への短い口頭報告を練習するための便利なツールです。一方で、看護では守秘義務と安全が最優先です。AIへの入力は匿名化した要点だけ留め、必ず学校/実習施設の規程を守ってください。 また、AIの回答は必ず根拠や自分の観察事実と照合し、自分の言葉に直すことが不可欠です。現場で最後にものをいうのは、AIの回答ではなく、目の前の患者さんに対する「自分の観察」と「なぜそう判断したか」であることを覚えておきましょう。

引用・参考文献

1)日本看護協会(2021): 看護職の倫理綱領.(2025年1月21日閲覧) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/statistics_publication/publication/rinri/code_of_ethics.pdf
2)厚生労働省(2023):医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版(令和5年5月).(2025年1月21日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html
3)個人情報保護委員会(2016):個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)(平成28年11月/令和7年12月一部改正). (2025年1月14日閲覧) https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_offshore/
4)Agency for Healthcare Research and Quality(n.d.):Tool: SBAR .(2025年1月21日閲覧) https://www.ahrq.gov/teamstepps-program/curriculum/communication/tools/sbar.html
・Institute for Healthcare Improvement(2017 ): Patient Safety Essentials Toolkit: SBAR: Situation-Background-Assessment-Recommendation.(2025年1月21日閲覧) https://www.ihi.org/sites/default/files/SafetyToolkit_SBAR.pdf

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