テーマ:最も心に残っているエピソード
入浴拒否の入所者
頑なに入浴を拒否する入所者様
介護老人保健施設に勤務していた時の話です。
入浴に極端な拒否がある入所者様がいました。軽度の難聴もあり、口数も少ない方でした。
あまりスタッフにも笑顔はみせず、入所したことに対する受容も不十分な状態でした。
入浴にお誘いすると、頑なに拒否があり、その理由も言いません。黙り込んでしまうこともしばしばでした。
「楽しい風呂だった。」
ある日入浴介助の当番にあたりました。
初めてその入所者様の対応することになり、入浴への誘いは正直自信はありませんでした。
耳元で話をすることは、表情が確認できないため、聞こえやすい方の斜め前で、少し大きめな声で誘いました。
何も言葉は発してくれませんでしたが、頷きがあり、一緒に服を選び、手を繋いで脱衣所にいきました。
シャワーチェアーに座っていただき、湯の温度の確認、足から徐々に湯をかける、痒いところは無いか聞くなど、いわゆる基本に準じた対応をしました。
ここで私は、利用者様の生活史を知ることで話をするキッカケを作りたいと考えました。
「何のお仕事されてたんですか?」「苦労されちゃったんですね。」「仕事しの手ですね!」などなどしっかりと答えてくださいます。
湯船に浸かっているときには、自発的な発言もありました。
「あんたは何歳かの?」「結婚は?」などなど。
入浴後、居室に戻ると、利用者様がある言葉を発しました。「楽しい風呂だった。」
私も、「僕も楽しいお風呂でしたよ~。」とお伝えしました。
寄り添うことも、看護の1つ
私が振り返る介助内容では、言葉掛けの大切さとタッチングの意味でした。寄り添うことも看護の1つだと、気付かされました。
生活史から利用者様の人生で一番輝いていた部分を見つけることが、強みを見つけることに繋がると感じました。
また、利用者様を知ろうとすることが、関わる事への第一歩になると再認識しました。
気づかせてくれて、ありがとうございました!