看護師国家試験も間近に迫ってきました。 今回は、近年の出題の傾向を踏まえて第113回看護師国家試験の出題予想を行ってみました。例として、過去に出題された国試の問題を参考に挙げ、理由を記しています。勉強の最後の点検として活用してみてください。
「人体の構造と機能」について
出題予想例)問題1.ホメオスタシスに関与するのはどれか。2つ選べ(第106回出題問題)
- 味 蕾
- 筋紡錘
- 痛覚受容器
- 浸透圧受容器
- 中枢化学受容器
ホメオスタシスとは、内部環境を一定に保つしくみのことで、ナイチンゲールはこれを「自然治癒力」という言葉で表現し、看護とは「患者の自然治癒力(ホメオスタシス)」を整えること」だと説明しました。
「ホメオスタシス」は、看護にとって基本的かつ重要な概念であるため、今年も出題される可能性が高いといえます。
問題1の解答は4、5です。ホメオスタシスの中枢である視床下部や脳幹には、常に「受容器(センサー)」から人体の内部環境の情報が報告されています。4の「浸透圧受容器」は体液の濃度情報を感知するセンサーです。また5の「中枢化学受容器」は体液中の二酸化炭素分圧を感知します。
ちなみに1の「味蕾(味覚の受容器)」、2の「筋紡錘(筋緊張の受容器)」、3の「痛覚受容器」に共通するのは、すべて外部環境の情報に関する受容器だという点です。
「疾病の成り立ちと回復の促進」について
出題予想例)問題2.薬物の分解、排泄の速さの指標となるのはどれか(第112回出題問題)
- 最高血中濃度
- 生物学的半減期
- 濃度曲線下面積
- 最高血中濃度到達時間
看護師の活躍の場の広がりとともに、あらゆる対象に対して看護師が、薬物療法について判断・指導・管理する機会が増えました。そこでこの問題のように、特定の薬物についてだけでなく、薬物代謝そのものの基本や投与経路に関する問題が増えてくると予想されます。
問題2の解答は2です。薬物はさまざまな投与経路から血中に入り(吸収)、その後全身に分布していきますが、その間、何度も肝臓と腎臓を通り、代謝(分解)されて尿や胆汁中に排泄されるなかで、血中濃度が下がっていきます。この血中濃度がピークになったあと、代謝・排泄を経て、半分の濃度になるまでの時間を「生物学的半減期」といいます。
「健康支援と社会保障制度」について
出題予想例)問題3.障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律〈障害者総合支援法〉に基づいて、障害者が利用できるサービスはどれか(第106回出題問題)
- 育成医療
- 居宅療養管理指導
- 共同生活援助(グループホーム)
- 介護予防通所リハビリテーション
これまで、医療保険や介護保険が出題の主流でしたが、障害者自立支援法から改正された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」を利用して、障害者が地域社会で活躍する機会を促進する動きが活発になっていくことが考えられます。ぜひ押さえておきたい内容です。
問題3の解答は3です。障害者総合支援法で利用できるサービスは大きく自立支援給付と地域生活支援事業に分けられます。自立支援給付には「介護給付」「相談支援」「訓練等給付」「自立支援医療」「補装具の支給」があることを確認しておきましょう。
3の「共同生活援助(グループホーム)」は、就労活動支援などの日中活動を利用している障害者が、主に夜間共同生活を送る際に受けるサービスのことで、「訓練等給付」に含まれます。2と4は介護保険法に基づくサービスとなります。1の「育成医療」は、「自立支援医療(医療費の負担を軽減する制度)」のひとつで、対象は18歳未満の身体障害児です。基づく法律の名前とともに憶えておくとよいでしょう。
「基礎看護学」について
出題予想例)問題4.陽圧に保った個室隔離が最も必要な状態はどれか(第103回出題問題)
- 排菌状態
- 大量下血
- 免疫不全
- 低酸素血症
コロナ禍を経て、感染対策に関する実践的な問題の出題が増加しています。個人防護具や手指消毒、スタンダードプリコーション、消毒や滅菌法、についても確認しておきましょう。
問題4の解答は3です。陽圧室に隔離するのは、免疫力が低下した感染しやすい患者であり、陰圧室に隔離するのは空気感染で感染する結核や麻疹などに罹患している患者です。違いと理由を理解できるようにしておきましょう。
「成人看護学」について
出題予想例)問題5.慢性心不全の患者の急性増悪を疑うのはどれか(第100回出題問題)
- 体重の減少
- 喘息様症状
- 下肢の熱感
- くも状血管腫
成人看護学では生活習慣病や、そこから派生する疾患が頻出してきます。また、在院日数の短縮によって、看護師には、患者が自宅でも療養管理できるような指導が重要になっています。そこで問題のように、慢性疾患患者の急性増悪を見極める知識を問う設問が出題されてくる可能性があります。
問題5の正解は2です。2は肺うっ血の症状であり、左心不全が悪化していることを示します。
慢性心不全は急性増悪と緩解を繰り返しながら徐々に病状が悪化する疾患であるため、患者指導では、急性増悪に陥らないように薬物療法や食事療法を継続すること、急性増悪の兆候があったらすぐに受診することが患者指導の重要なポイントとなります。
「老年看護学」について
出題予想例)問題6.老年期の免疫機能の特徴で正しいのはどれか(第100回出題問題)
- T細胞は減少する。
- B細胞は増加する。
- 自己抗体の産生は低下する。
- 外来抗原に対する抗体の産生は亢進する。
老年看護学では、例年、加齢による身体機能の変化を問う問題が頻出されますが、コロナ禍を経て近年では、老年期と感染対策をからめ、「加齢によって免疫機能がどのように変化するか」と条件を二重に問うような複雑な問題が出題されてくる可能性があります。
問題6の解答は1です。T細胞は、細胞性免疫(感染した自身の細胞やがん細胞を殺傷する)に関わるため、高齢化とともにT細胞が減少することで、がん患者数が増えていくのが頷けます。
ちなみに2のB細胞は、外来抗原(体内に侵入した異物)に対して、抗体という武器を産生して戦いますが、これも老化によって機能が低下します。
社会全体の高齢化によって、誤って自分を攻撃してしまう自己抗体に由来する疾患は増える傾向にあり、昨年末、有名な女性演歌歌手が膠原病によって73歳で亡くなりました。膠原病も自己抗体による疾患です。