• 公開日: 2016/10/8
  • 更新日: 2018/12/13

認知症患者さんが新人の私に伝えた「ありがとう」の重さ

テーマ:患者さんやその家族の「忘れられない一言」

私もまだ人として生きてるんだね。

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対応が難しい患者さんを新人の私に

先日肺炎で入院してきたAさん。アルツハイマー型認知症もありました。
言ってることは支離滅裂でケアの拒否が強く、ルートを自己抜去したり、ベッド柵を乗り越えて病室で放尿してたこともしばしば…。
Aさんは酸素の持続投与が必要でしたが、案の定酸素マスクを外そうとするため、家族の承諾を得てミトンをつけることになりました。
病棟の中に響き渡るAさんの怒鳴り声…
先輩たちはAさんに正直うんざりしていたんだと思います。先輩の中にはしびれを切らしてAさんに対しつい強い口調になる人もいました。
そして状態に変化があるとき以外、Aさんの対応を当時新人だった私と同期にまかせるようになっていきました。

「私もまだ…」

その日私がAさんの病室に行くとAさんは汗でぐっしょりでした。
そのときのAさんは怒っているような怯えているような表情をしていました。
私は汗でぐっしょりのAさんの清拭をしようとミトンを外すとAさんの表情は一変して穏やかに。
背中を拭いているとAさんはぽつりと一言。
『私もまだ人として生きてるんだね』
目には涙が浮かんでいるようにも見えました。
そして最後にAさんからか弱い声でもう一言。
『ありがとう』

Aさんが教えてくれたこと

今までのAさんと思えないほど、冷静でしっかりとした口調に、私はびっくりしました。
このことをきっかけに私たち看護師は、どんなに言葉の通じなくなり、対応の難しい患者であっても、目を背けてはいけない。
患者に対し、人として最善のケアを行うことの大切さを、思い出させてもらいました。

●執筆●かな さん
看護師歴1年目。
整形外科病棟で働いています。
このエッセイは 「ナースエッセイ」 にご応募いただいたものです。
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