テーマ:患者さん・その家族からの「忘れられない一言」
何十年経っても思い出すと涙が出てしまう一言
「これが死ということなのか…○○(5歳の息子さんの名前)、お母さんを頼んだぞ」
30年以上前、急性心筋梗塞で入院された哲学の教授。田舎の病院では救う手段がなく、最期まで意識清明なまま死を待つしかありませんでした。
駆けつけた幼い息子さんの手を握り締め、目をしっかりと見つめて語られた言葉でした。
後にも先にも勤務中に泣いてしまったのはこれきりでした。
「○○さん(私の名前)がずっと話を聴いてくれて安心できた。がんばれる!」
心筋梗塞で安静中の新聞記者さんが、つけていた日記に書かれていた言葉。再発作で亡くなられたあと、日記を読んだ奥様から聞きました。
競争の激しい文屋さんの世界で、休んでしまうことへの焦りが大きく、精神的安静が得られなかった患者さん。夜勤のとき、2時間ほど思いをお聞きしました。
当然のことでしたが、少しでもお役に立てていたのだと思うと嬉しいです。
「○○さん(私の名前)、大丈夫ですか?」
慢性呼吸不全で人工呼吸器離脱を試みていた患者さんが主治医都合で転院される救急車の中で、車酔いしてしまった私にかけてくださった言葉。
自発呼吸を補助するため時々アンビューバッグで送気をしていた気管切開のチューブを患者さん自ら塞いで、かすれ声を振り絞るように出して掛けてくださった言葉でした。
お元気に転院されたのにその夜に急死、奥様から地声で話した最後の言葉だったと伺い、涙が止まりませんでした。
新卒のときの受け持ち患者さんで、33年も前のことですが、辛いとき、幾度となく思い出しては「大丈夫、頑張ろう」と思える言葉です。