転職時に面接や履歴書で問われる自己PRの書き方・回答方法を解説。看護師としての自分の強みをアウトプットする術がわかります。また、自己PRを書く前の準備、強みタイプ別の例文も紹介します。
目次
転職活動で必要な自己PRのスキル
自己PRは、転職活動の際の履歴書や面接で必ず聞かれるテーマです。そもそも自分の強みは何なのか?また、強みをうまくアピールするのは苦手だなと感じる人も少なくないかもしれません。
しかし、この行程をしっかりと準備して行うことで、転職の成功に一歩、二歩と近づきます。自己PRに必要な準備について、まずはやるべき3つのポイントを紹介します。
自己分析で自分自身を理解する
自己PRを考えるにあたってまず行うべきなのは、自己分析です。転職候補先の採用担当者に、そもそも自分はどういう人間なのかをわかりやすく伝えて、自分を知ってもらうために、まずは自分自身を理解することから始めましょう。
自己分析することで理解できる5つのこと
- 気付かないうちに身についたスキル
- 自身の長所や短所
- 失敗した際にどのように対処した経験があるか
- 仕事に何を求めているか
- 気持ちよく働ける環境の特徴
自分のことは自身が一番知っていると思われるかもしれません。しかし、いざ履歴書の自己PR欄の限られたスペースのなかに自分のことを書いてみようとすると、なかなかすんなり書けるものではありません。
自己分析ではどのようなことを考えればいいのか。さまざまな方法がありますが、例えば、自分の過去と向き合い、どういう考えや価値観があって、これまでどんなふうに仕事や生活を送ってきたのかなどを振り返ります。あなたが仕事で好きなこと、得意だなと感じること、わくわくして楽しいと感じることを挙げてみましょう。
これらがすぐに出てこない場合には、仕事で同僚から褒められたことや上司からよく言われることなど客観的な意見を書き出してみてください。業務上での失敗体験や短所の洗い出しも重要です。また、仕事や私生活で嫌なことがあったとき、落ち込んだりしたときに、どのようにして乗り越えたか、こうした場面でも自分の性格や特徴が表れやすいものです。
また、新しいことに対して、自分はどのように考え取り組むのかも振り返ってみるのもいいでしょう。強みや短所などを客観視して自身で把握することが重要です。
自分自身の「強み」と「短所」を把握する
自己分析として自身の「強み」「短所」を書き出していくと、いくつか共通点が見えてきて自分自身を把握するための手掛かりになるはずです。
「強み」を把握するメリット
自身の「強み」を把握することで、自己PR時に「直接的に仕事に活かせるスキル」を伝えることができます。「私は◯◯ができるため、貴院では◯◯で活躍できます」など自分を採用することで、どのようなメリットがあるのかをアピールできます。
短所を把握するメリット
自身の「弱み」を把握することで対応力が上がります。例えば、面接の際に面接官から「短所について教えてください」「業務上の失敗を教えてください」という質問をされることがあります。これによって面接官が知りたいのはあなたの短所や失敗の内容ではありません。
「自身の短所をどう理解しているのか」という自己認識や「失敗したときにどうカバーするのか」という対応力を見極めたいと考えているはずです。また、失敗のあとの姿勢や粘り強さや忍耐力や根気強さなどの長所を見出せることもあります。
診断ツールを活用する方法も
自分の強みやキャラクターを客観的に判断できる診断ツールをうまく併用していく方法もひとつです。自分の傾向がより、はっきりとわかりやすくなります。
【ナース専科の強み診断】
自己PRに必要不可欠な「強み」を7タイプから診断できます。面接時や履歴書を書く際に役立つ自己PRの例文もタイプ別にわかります。
【キャラ色診断】
職場での自身のキャラクターを8タイプから把握することができます。人間関係の中で自分自身がどのようなタイプ傾向にあるのかを理解できます。
転職先候補の情報収集
自身の性格や考え、価値観が少し整理できたところで、次は転職先候補の情報収集です。いくつか目星をつけたところがある、またはこれから探すこともあるかもしれませんが、自分にはこういうところが合うかなと感じた部分を深掘りしていきます。
転職先候補の魅力や課題を洗い出す
転職先候補のどんなところに魅力を感じましたか?もしかしたら、給与や待遇などの条件で選んでしまったかもしれません。そのようなときでも、候補先の特徴や他の似た規模の職場との違いは何か、特に自分がこの職場がいいと思った部分などを洗い出しておきます。
これらは自己PRだけではなく、志望動機などでも使える内容です。また、候補先がどのような課題を抱えていて、どのような人材を欲しているのか、看護師にどのようなことを求めているかが見えてくると、自分の強みの何に焦点をあててアピールしていけばいいか、より明確になってきます。
転職活動で採用側が面接・履歴書でチェックすること
面接・履歴書で必ずといっていいほど、自己PRは問われます。採用側がどのような課題を抱えていて、どのような人材を欲しているのか、自己PRでどのような点をみているのかなどをある程度把握する必要があります。
採用側が自己PRでチェックするポイント
自己PRはこれまでの自身の経験や性格、価値観などが反映されやすいものです。採用側は自己PRを通し、事務的な回答ではなく、あなた自身の仕事の経験やスキルはもちろん、一緒に働く上で大切な仕事に取り組む姿勢など、よりパーソナルな部分を知りたいと考えています。
ポイント1:求めている人物像か
例えば、求めている人物像が、リーダーや教育ができるような3~5年目以上の中堅看護師だった場合、志望動機はどうしても職場の特徴に沿ったものとなり、似たような回答になってしまうこともあるでしょう。その点、自己PRは十人十色で、その人らしさが一番出やすい部分でもあると思います。
付け焼刃であれば、それも文章や面談の場面で表れます。志望動機に力を入れ過ぎて、こちらは手を抜いてしまうという人も見受けられますが、反対によく自分を分析している、準備をしっかりとしてきたのだなと、周りと差をつけることができる場面でもあります。
ポイント2:職場風土・文化にマッチしているか
職場や部署の特徴や働く人によってどのような風土・文化があるかは変わってきます。例えば、職場の風土や文化が、ひとりひとりが主体性を持って積極的に考え行動できるチームや組織である場合、こうした考えが自分とも合う、こうした場所で働きたいと思える人でないと、長く働き続けるには難しいかもしれません。
そのような風土・文化が肌に合うか、合わないかを自己PRを含めて判断していきます。単刀直入に「こういう雰囲気があるんですけど、合いそうですか」と面接で問いかけてくる採用担当者もいます。
ポイント3:入職後に活躍できるか
求めている人物像か、職場風土・文化にマッチしているか、ここの段階で採用側が求めている人材と大きくずれがなさそうであれば、入職後にはこの部署でこのような役割を担ってほしい、新しい部署で立ち上げのための準備を手伝ってほしいなどのように具体的に入職後のイメージができます。そのため、自己PRをまとめる際にも、これらの想定に答えるような形をイメージしてまとめていくのがいいでしょう。
面接・履歴書で自己PRする際の注意点
採用側がどのようなことをみているのかに加え、自己PRの内容で注意することがいくつかあります。
自己PR時のNG
まずしてはいけないことは、以下のようなものです。
- 嘘をつく、話を誇張する
- 事実と解釈が混ざっている
自分をよく見せようと本来の自分の性格とは異なる特徴を伝える、または3位だったものを2位と詐称するなどです。話を誇張してしまうと、どこかでボロが出てしまったり、入職後のミスマッチに繋がったりもします。最悪の場合、経歴詐称で訴えられてしまうこともあるため、注意が必要です。
また、チームで成果をあげたものを、自分のおかげで到達できた、またはこれまでで一番いいものができたと語ることも事実と解釈が混ざっています。事実は誰が見たり聞いたりしても同じ感じ方をするのに対し、解釈は人によって異なるものを指します。全くの嘘ではなくとも、そう捉えられてしまう危険があるため、事実と解釈はわけましょう。
より良い自己PRを伝える・書くために必要なこと
より良い自己PRを書くためには、以下のものを意識しましょう。
- 曖昧な言葉は使わず、自分の言葉で具体的に
- 主観的な内容のみならず、客観的な情報も織り交ぜる
- 情報の羅列だけではなく実際のエピソード例、自分の考えを入れ込む
使い古された言葉やどこかから引用した言葉は、文章や面接で実際にやりとりをしている際に、中身が伴わずボロが出るものです。かっこいい言葉でなくとも、美しい日本語でなくとも、自分の言葉で具体的に語りましょう。
また、主観的な内容だけ、客観的な内容の情報の羅列だけだと、前者は説得力に欠け、後者は人間味に欠けてしまいます。主観と客観をうまく織り交ぜて説得力を持たせていくことが重要なポイントです。
自己PRをわかりやすく書く・伝えるための『PREP法』
自分の強みも自己PRの注意点もわかったところで、いざ書いてみようと思っても、どこから何から書き出していけばいいのかわからない。履歴書は文字数も限られているため、わかりやすく、かつ正確に伝える方法として活用できるフレーム・モデルが『PREP法』です。まずはこれにあてはめて書く練習をしていきましょう。
『PREP法』とは
PREP法とは、わかりやすい説明の構成モデルの頭文字をとったものです。
Point :要点(結論・主張)
Reason :理由(結論にいたった理由・そう主張する理由)
Example:具体例(理由に説得力を持たせるための事例・データ・状況)
Point :要点(結論・主張)
『PREP法』のメリット
PREP法を使うと、これは具体的にどういうこと?つまり何が言いたいの?と受け手のストレスと不要なやりとりが減り、考えを整理する習慣がつきます。論理的に思考の手助けとなり、わかりやすく、説得力があるやりとりがしやすくなります。
また、汎用的なスキルなので、自己PRに限らず、看護師であれば記録やレポート、看護師同士や他職種への報連相などで応用することも可能です。書くことのみならず、コミュニケーションも円滑になります。
『PREP法』で書く!強み別自己PRの例文と事例
実際にPREP法で自己PRの土台を作ってみましょう。
【要点】私の強みは〇〇なところです。
【理由】それは、新卒からこれまで〇〇として〇年間活動し、自らも〇〇に取り組んでいるためです。
【具体例】新卒で配属された〇〇病棟では、特に~(具体的な特徴)~。そこで、私は〇〇に取り組むリーダーとなり、メンバーに〇〇を働きかけ続け、〇〇だったものが最終的に〇〇となり、乗り越えることができました。
【結論】これらの経験から、私の強みは〇〇であるとあらためて考えます。また、貴院の〇〇の場面で〇〇として貢献していきたいと思います。
また、それぞれの性格や特性に沿った自己PR例を紹介します。
例文・事例1:責任感や向上心の強い努力家
私は与えられた仕事や慣れた仕事でも手を抜かず、看護師として患者様にとってより良い看護ができるように心がけています。これまで働いていた〇〇では大丈夫だろうという気の緩みや、これでいいかと手を抜いたことがインシデントになり、最悪の場合にはアクシデントにまで発展する、生命に直結する危険と常に隣り合わせでした。
そのため、日々業務の振り返りをし、慣れた仕事でも基本的なことは疎かにしないように気を付けています。また、自身のできている点とできていない点を主観的・客観的にみてできているところはさらに伸ばし、できていないところは改善していけるように活かすようにしています。看護師としての責任と向上心を忘れず、これからも努力を積み重ねていきたいです。
例文・事例2:傾聴力やコミュニケーション力の高い聞き上手
私は、人と関わるのが好きで、相手の気持ちや考えを尊重し、双方向性のやりとりを持って仕事にあたるように意識しています。看護師の仕事は特に人間関係、コミュニケーションが大切だと考えます。看護師同士だけではなく、医師や他職種との連携、チームワークが不可欠であり、また患者様やその家族との関係性も大きく看護に影響してきます。
まずは相手の立場になって考え、気持ちや考えを聞き、自分にできることをしてはじめて信頼されるような看護師でありたいと思います。そのためには、医療知識や技術とともに、日頃から傾聴する気持ち、相手としっかり向き合い、コミュニケーションをとることを心がけています。
例文・事例3:何事にも積極的なポジティブシンキング
私は、常に明るくポジティブな看護師でいることを心がけています。医療現場では、暗くネガティブなことが溜まりやすいかもしれません。また、新しい情報や技術が日々アップデートされていきます。そのなかでも、積極的にリフレクションし、不安や悩みを抱える患者様が少しでも前向きに、笑顔が増えるように意識しています。
過去の異動や転職、他職種との連携場面で、初めての環境や初対面の人が相手でも臆することなく、積極的に物事に取り組み、関わっていくことができます。新しい変化も楽しみながら、チャレンジしながら学ぶ姿勢も大事にしています。どんなことでも自身の経験やスキルとして、何事にも積極的に取り組むことができます。
例文・事例4:主体的に行動できるリーダー
私は指示を待つのではなく、チーム全体をみて能動的に業務に取り組むことを意識しています。看護師の仕事は、医師の指示により行うことが多いです。しかし、指示をそのまま実践するのではなく、看護師としての視点で観察・アセスメントし、それを含めたうえでケアにあたるようにしています。何事にも率先して動き、他職種とのチームワークを大切にして、それぞれが協力して取り組めるように、チーム全体に目を向けて仕事をしていきたいです。
また、経験を重ねるごとにいち現場のスタッフから、リーダーや中堅看護師として管理者や職場運営の視点など、考えて実践できる看護の幅が広がっていると実感しています。同じ医療従事者のみならず、患者様にとっても頼れる看護師でありたいと思い、日々体現しています。
例文・事例5:周囲への配慮を欠かさない気配り上手
周囲の人の表情や言動から気持ちを汲み取り、気遣いを忘れない看護師であるようにと日々考えています。看護師としては当たり前のことかもしれませんが、ときには業務をこなすだけになってしまうこともあります。そうしたときでも、一人ひとりの気持ちに寄り添ったケアが行えるような看護を提供したいです。
また、同じく看護師や他職種であってもそれぞれの状況や背景を察知し、臨機応変に対応できるように心がけています。患者様や医療現場の状況は変動しやすいため、早期に気づき、早めに対応できるように、さまざまな反応を見過ごさないよう日々看護を実践しています。
例文・事例6:理論的で冷静な洞察力の持ち主
何事においても、一側面ではなく、客観的に物事を見られることが強みだと思います。急変対応やインシデントなどの場面で予期せぬ状況となっても、感情的にならず、落ち着いて対応することができます。数値やデータから身体状態をアセスメントすることが得意で、データの整理や解析などを含む看護研究や委員会の業務も積極的に参加してきました。
また、新しい部署に異動になった際には、看護に関する知識や技術でわからないこと、うまくできないことをそのまま中途半端にしておくことが苦手で、「なぜ」「どうすればうまくできるか」を自ら考える探求心、解決しようと努力することが自身の強みでもあります。引き続き、看護師としての知識や技術、専門性を高めていきたいです。
例文・事例7:チームワークを大切にする協調性タイプ
チームで行う業務が多い看護師の仕事において、チーム内でのコミュニケーションやチームワークを大切にしています。自分一人だけが努力をするのではなく、チーム全体をみて、チームの一員として自分の立場や役割を常に意識して、チームや組織の目的・目標に沿って仕事を進めていくようにしています。同じ職種であっても、チームではさまざまな人と関わるため、立場や意見が違う人であっても、まずは相手を知ることから、そして円滑にコミュニケーションが取れるように意識しています。
特に、以前担当していた〇〇委員会では、医師や看護師のみならず、薬剤師やリハビリ職種など多くの職種が関わっていたため、チーム全体の目的や目標を意識しながら、自分の役割を常に考えていました。ときにはまとめ役や仲介役、相談役になり、全体の最適を意識してチームに貢献できるように努めていきたいです。
例文・事例8:感受性豊かな寄り添いタイプ
常識で物事を捉えずに、さまざまな視点から判断し、「今自分にできることはなにか」を意識しています。そして、看護師だから、入院しているから、と限界を決めて諦めず、何かできることはないかと創意工夫して看護ケアに繋げていくことを大切にしています。
例えば、自宅に戻るのは難しいとされていた患者様が、どうしても最期は自宅で過ごしたいという想いを伝えきれずにいた際に、あらためて患者様と対話する時間を設け、家族の協力や外部サービスなどを使って自宅に帰ることができないか検討できるように働きかけました。
患者様の細かな変化も見逃さず、気持ちや考えを読み取り、患者様のできること、魅力に目を向けてそれを活かせるような関りを大切にしています。患者様は一人ひとり個性やこれまで生きてきた背景が異なります。さまざまな価値観を持つことを常に意識して、看護師として寄り添い支えていきたいと考えています。
面接・履歴書で自分の魅力が伝わる自己PRを
自己PRは自分のこれまでの仕事の経験、自分の性格や考えと照らし合わせながら考えるため、うまく自身の魅力を面接や履歴書で伝えることができれば転職時の成功はもちろん、転職時の病院選びのミスマッチを避けることもできます。
また、転職時に限らず、自分の強みを把握して相手にアピールすることは仕事をする上でも大事なことです。いい転職ができるように、またいい職場で働き続けられるように、しっかりと自分と向き合っていきましょう。