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  • 公開日: 2022/10/24

准看護師と正看護師の違いは?資格取得方法から業務内容に役割を解説

准看護師の現状や看護師(正看護師)との資格内容や業務内容にはどのような違いがあるのでしょうか。制度の仕組みから教育期間・費用に関してを解説。准看護師から正看護師を目指す上でどのようなことが必要かにも言及します。

准看護師とは?

准看護師とは看護師とは異なる制度で、戦後に始まった日本独自のものです。戦後の復興には経済成長だけでなく公衆衛生や医療の充実が求められ、それらを担う看護師の増員も必要でした。さらに当時の国民病であった結核の蔓延による看護師不足も大きな社会問題になっていたのです。

しかし、当時は看護師になるために必要な高等教育を受ける女性は少なく、増員に時間がかかることが課題でした。こうした課題を解決するため、1951年に看護師に準じる制度=准看護師は誕生しました。准看護師の養成所には、義務教育である中学卒業資格を有していれば入学できます。准看護師資格は義務教育後、最短2年で取得できることから、戦後の医療を支える貴重な人材として育成が進められました。

最短期間で看護師になれる准看護師

准看護師の資格は中学卒業後に2年間養成学校に通えば、最短17歳で取得できます。看護師と同じような業務を担う准看護師ですが、医師だけでなく看護師の指示がなければ看護を展開できません。また、看護計画の立案も准看護師の業務の範疇外です。看護職としては最短期間で働けますが、法律上、看護師に比べてできないこともあるのが准看護師なのです。

准看護師制度の近年の動向

厚生労働省は医療の高度化・専門化に対応できる高い能力を有する人材育成のため、准看護師資格の廃止を推進しています。全国各地で准看護師養成学校の廃止が進み、准看護師養成学校数は2000年には529校あったのに対し2020年は214校と20年間で約4割減に、入学者数は2000年には24,860人であったのに対し2020年は7,073人と1/4まで減少しました。さらに秋田県・福井県・沖縄県の准看護師養成学校は0校となっており、准看護師は減っているのが実情です。

【参考】准看護師養成の推移(日本看護協会)

准看護師の役割や法律上の位置づけ

准看護師は保健師助産師看護師法(昭和23年法律第二百三号)で、以下のように定められています。

第六条 この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。
*前条:第五条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

一見すると同じ業務をしているように見える看護師と准看護師ですが、役割として准看護師は自らの判断による看護業務はできず、医師・歯科医師または「看護師」の指示を受けて業務を行う点が大きく異なっています。

また、准看護師になるためには以下の2つの法律に従うと規定されています。

第八条 准看護師になろうとする者は、准看護師試験に合格し、都道府県知事の免許を受けなければならない。
第二十二条 准看護師試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、これを受けることができない。
  • 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大臣の指定した学校において二年の看護に関する学科を修めた者
  • 文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に従い、都道府県知事の指定した准看護師養成所を卒業した者
  • 前条第一号から第三号まで又は第五号に該当する者
  • 外国の第五条に規定する業務に関する学校若しくは養成所を卒業し、又は外国において看護師免許に相当する免許を受けた者のうち、前条第五号に該当しない者で、厚生労働大臣の定める基準に従い、都道府県知事が適当と認めたもの

【引用】保健師助産師看護師法(昭和二十三年七月三十日)(法律第二百三号) (厚生労働省)

准看護師の就業に関するデータ

准看護師の就業に関するさまざまなデータを紹介します。

①就業者数

2020年末時点の厚生労働省の調査では就業している准看護師は284,589人(男20,726人、女263,863人)で、2年前の調査と比べ19,890人(6.5%)減少しており、10年前と比較すると83,559人(23%)減少しています。これは看護師の就業者数がこの10年で328,188人(34%)増加している点と比べると大きな違いといえます。

【参考】令和2年衛生行政報告例 就業医療関係者結果の概況

②就業する准看護師の年齢階級別年次推移

令和2年の厚生労働省の統計によると、若年齢で准看護師になって働く人は減っていることが明らかになりました。同時に准看護師資格で働きながら年齢を重ねる人は多く、准看護師の平均年齢が高くなっていることがうかがえます。

【参考】就業保健師・助産師・看護師・准看護師の年齢階級別年次推移  令和2年_衛生行政報告例_就業医療関係者_概況

③就業場所

准看護師と看護師が活躍する場所は異なっています。2020年厚生労働省の統計をもとに就業場所の上位3つを比較しました。

【参考】令和2年衛生行政報告例 就業医療関係者結果の概況

半数以上の看護師が病院で働いているのに対し、准看護師は病院・診療所で働く人の割合が同程度で、介護保険施設等で働く人の割合は看護師の3倍以上になっています。中小の病院やクリニック・介護施設には欠かせない人材であることがうかがえる結果です。

④求人数

准看護師が働く場所は看護師と大きく異なっていますが、その理由の1つに有効求人数の差があげられます。病院における看護師の有効求人数は約8万人ですが、准看護師は約4,000人です。准看護師資格だけでは、希望する医療機関や労働条件・給与で働くことが難しいのが現状のようです。

【参考】制度の概要 准看護師制度について(日本看護協会)

准看護師の資格を取得するには

准看護師になるには准看護師試験に合格し都道府県知事の免許を得る必要があります。准看護師試験に合格し准看護師になるまでの道のりをまとめました。

准看護師資格を取得するまでのルート

准看護師資格取得までの流れは以下の通りです。

【参考】これから准看護師を目指す人へ(一般社団法人日本准看護師連絡協議会)

看護師と准看護師の教育の違い

看護師と准看護師になるための教育には大きな違いがあります。日本看護協会の資料をもとに紹介します。

①養成学校入学要件

看護師養成学校の入学要件は高校卒業ですが、准看護師養成学校の入学要件は中学校卒業です。

②学習にかかる時間

看護師と准看護師は養成期間だけでなく、履修時間も大きく異なります。

看護師 准看護師
年限 3年以上 2年以上 ※最短2年で免許取得できる
履修時間 総単位数:102単位(3000時間以上)
・基礎分野14、専門基礎分野22
・専門分野66(うち臨地実習23)
総時間数:1,890時間
・基礎分野70、専門基礎分野350
・専門分野1,470(うち臨地実習735)

③学習内容

厚生労働省の看護師等養成所の運営に関する指導ガイドラインでは、看護師と准看護師の教育を以下のように定めています。

看護師 准看護師
1)人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として幅広く理解し、看護師としての人間関係を形成する能力を養う
2)看護師としての責務を自覚し、倫理に基づいた看護を実践する基礎的能力を養う
3)科学的根拠に基づき、看護を計画的に実践する基礎的能力を養う
4)健康の保持・増進、疾病の予防及び健康の回復にかかわる看護を、健康の状態やその変化に応じて実践する基礎的能力を養う
5)保健・医療・福祉システムにおける自らの役割及び多職種の役割を理解し、多職種と連携・協働する基礎的能力を養う
6)専門職業人として、最新知識・技術を自ら学び続ける基礎的能力を養う
1)医師、歯科医師、又は看 護師の指示のもとに、療養上の世話や診療の補助を、対 象者の安楽を配慮し安全に実施することができる能力を養う
2)疾病をもった人々と家族の様々な考え方や人権を尊重し、倫理に基づいた看護が 実践できる基礎的能力を養う

自ら考えて判断し看護を実践する看護師と、看護師の指示を受けて働く准看護師は教育に関する考え方が違い、似た科目であっても教育内容は異なっています。准看護師の教育は概要や基礎的な内容のみですが、看護師は自ら判断し臨床で応用できるような発展的な内容となっており、教育期間に差が生まれているのです。

看護師 准看護師
【人体の構造と機能、疾病の成り立ちと回復の促進】
人体を系統だてて理解し、健康・疾病・障害に関する観察力、判断力を強化するため、解剖生理学、生化学、栄養学、薬理学、病理学、病態生理学、微生物学等を臨床で活用可能なものとして学ぶ内容とする。演習を強化する内容とする。
【人体の仕組みと働き、食生活と栄養、薬物と看護、疾病の成り立ち、感染と予防】
人体の仕組みと働きや疾病の成り立ちの概要及び疾病の回復に必要な薬物や栄養等を理解し、的確な観察や安全な援助ができるための基礎的な内容とする。
【健康支援と社会保障制度】
人々が生涯を通じて、健康や障害の状態に応じて社会資源を活用できるように必要な知識と基礎的な能力を養う内容とし、保健・医療・福祉に関する基本概念、関係制度、関係する職種の役割の理解等を含むものとする。
【保健医療福祉の仕組み、看護と法律】
保健医療福祉制度における准看護師の役割を知り、他の医療従事者と協調できる能力を養える内容とする。

【参考】制度の概要 准看護師制度について(日本看護協会)

資格を取得するには?准看護師試験の概要

准看護師になるためには准看護師養成学校の入学試験と准看護師試験の2つに合格する必要があります。それぞれの試験のポイントをまとめました。

①准看護師養成学校

准看護師養成学校の入学試験は、中学卒業レベルの内容です。入試科目は学校により異なりますが、国語・数学・社会・理科・英語の中から2~3科目程度と面接や作文を行うのが一般的です。どのような試験科目かは、各学校の募集要項を確認してください。

②准看護師試験

准看護師試験は都道府県を主体に行われます。看護師国家試験は年1回しか受験できませんが、准看護師試験は全国を6ブロックに分けて順次実施するため同じ年に複数回受験できるのも特徴です。

出題内容や難易度・傾向は都道府県によって異なり、下記科目から150問出題されます。

  • 人体の仕組みと働き
  • 食生活と栄養
  • 薬物と看護
  • 疾病の成り立ち
  • 感染と予防
  • 看護と倫理
  • 患者の心理
  • 保健医療福祉の仕組み
  • 看護と法律
  • 基礎看護
  • 成人看護
  • 老年看護
  • 母子看護及び精神看護

准看護師試験の合格率

例年の准看護師試験合格率は97〜99%で、2022年3月の准看護師試験の合格率は98.2%に及びます。同じ年に行われた第111回看護師国家試験の合格率91.3%と比べると、非常に高い合格率です。

【参考】「令和3年度准看護師試験の実施状況について」の訂正について(厚生労働省)

准看護師の業務内容で「できること」と「できないこと」

准看護師はどんなことができて、どのようなことができないのでしょうか。法律によって明確に定められた准看護師の業務内容を具体的に紹介していきます。

業務内容で准看護師にできること

准看護師はバイタルサイン測定や点滴・採血・診察の補助、食事や排泄介助など看護師と同じ業務を行えますが、看護師との決定的な違いは医師・歯科医師・看護師の指示を必要とすることです。こうした指示系統が整っている医療機関では、准看護師が地域の医療を支える重要な役割を担っている場合もあります。

業務内容で准看護師にできないこと

業務上は看護師と変わらない働き方をする准看護師ですが、できないこともあります。それは自分の判断で業務を行ったり、看護師や介護士・コメディカルに指示を出したりすることです。そのため、リーダーや管理職への昇進は難しくなる傾向にあります。

その他にも以下の3つが「できないこと」としてあげられます。

  • 保健師・助産師になれない
  • 専門看護師・認定看護師・診療看護師になれない
  • 一部学会に入れない、学会認定資格が取得できない

准看護師は看護の概論や基礎的な知識をもとに、医師・歯科医師・看護師の指示に従って看護を展開します。そのため高度で専門性の高い看護は、准看護師の業務の範疇外にあたります。看護師のスキルアップの1つである保健師・助産師、専門看護師や認定看護師・診療看護師の養成学校に入学する要件には看護師資格が必須であり、准看護師ではこれらの資格を取得できないのです。さらに学会員や学会認定資格も同様で、准看護師はキャリアアップが限られてしまうのです。

准看護師の勤務先

准看護師の勤務先のトップ3は病院・診療所・介護保険施設等です。7割の准看護師は病院やクリニックで働いています。大学病院や専門病院など先進医療を担う医療機関での求人は少ないですが、地域の中小病院や精神科病院では多くの求人があります。日本准看護師連絡協議会では、最新の准看護師の求人情報を掲載していますのでぜひ参考にしてください。

【参考】求人情報(日本准看護師連絡協議会)

准看護師の年収と給料

准看護師の平均給料(月給・賞与・年収)は2020年の厚生労働省の報告によると以下の通りになります。参考までに看護師との比較を表にしました。准看護師と看護師では平均で月額5万円程度、年収で80万円弱の収入差があります。

看護師 准看護師
給与(月収) 338,400円 288,000円
賞与 857,500円 674,100円
年収 4,918,300円 4,130,100円

【参考】賃金構造基本統計調査 / 令和2年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種

日本看護協会の報告では、准看護師の給与は看護師よりも月6~9万円程度低い傾向にあることが明らかになっています。賞与を除いた生涯賃金で比較するとその差は実に4,000万円以上とも言われています。

【参考】看護師と准看護師の給与(日本看護協会)

准看護師から看護師になるには

准看護師から看護師になるには最低2年以上、看護師養成学校に通い、看護師国家試験に合格する必要があります。ここからは准看護師から看護師になるために抑えておきたいポイントを紹介します。

通信制で学ぶ手段も。准看護師から看護師になるための方法

准看護師から正看護師になるための学校は「全日制」「定時制」「通信制」の3種類があります。最終学歴が中卒の場合、全日制・定時制の学校に通うためには3年以上の実務経験が必要です。

全日制

平日の昼間に授業を行う学校です。仕事との両立は難しくなりますが、2年という最短期間で看護師を目指せます。

定時制

昼間と夜間の2種類があります。週に数回、学校に通って学習するため、働きながらでも看護師資格取得を目指せます。1・2年生は座学で3年生は実習がメインです。全日制と比べて1週間あたりの学習時間は短いため、3年間の通学が必要となります。

通信制教育

7年以上の准看護師の実務経験を持つ人が対象です。学校は全国に16か所あり、テキスト学習とスクーリング・実習を組み合わせたカリキュラムが組まれています。カリキュラムの一部は通信大学のオンライン授業で単位を取得します。働きながらでも通いやすいように、学校に通学する日数は2年間で50日以上と設定されています。看護師学校養成所2年課程通信制の開設校については、日本看護協会のホームページを参照ください。

【参考】2年課程通信制の教育機関(日本看護協会)

准看護師から正看護師を目指すための必要な準備

最終学歴が中卒の場合や、通信制の養成所に通う予定の方は准看護師としての実務経験を積む必要があります。就業場所や常勤・非常勤・パート等は問われませんので、准看護師として働き続けることが正看護師になるための準備につながります。

学校によって入学試験科目が異なるため、希望する学校の試験科目や合格率など情報収集を行い、対策しておくことも大切です。

通信制の看護師養成学校に通う予定の方は、事前に放送大学の単位を習得をしておくと、養成学校通学中に余裕ができるためおすすめです。

准看護師が看護師になるために必要な費用

准看護師が看護師になるためには、看護師養成学校の入学金と授業料が必要で、費用は平均100万円前後になります。

その他にも教科書代や実習費や通学・実習にかかる交通費、通信大学の費用が必要です。

准看護師が看護師になるために受けられる給付金・奨学金制度

准看護師が看護師になるためには、さまざまな給付金や奨学金を受けられます。代表的な制度を紹介します。

①給付金

給付金は条件を満たしている場合に、国から費用の補助を受けられる制度です。

制度名 特徴

教育訓練給付制度

看護師資格の取得には最大で費用の70%(最大224万円)の補助が受けられる制度です。

母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業

母子家庭の母又は父子家庭の父が看護師や介護福祉士等の資格取得のために、1年以上養成機関で修行する場合に支給されます。
自立支援教育訓練給付金や高等職業訓練促進給付金等事業など種類によって、支給額は異なります。

【参考】厚生労働省

②奨学金

奨学金は条件を満たしている場合に、費用の貸与を受けられる制度です。貸与されたお金は、決められた期間内に返済する必要があります。

制度名 特徴

看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金

日本看護協会が行う日本看護協会会員対象の貸与型の奨学金で、無利息で借りられる。
年額48万円または36万円、在学中の1~2年貸与を受けられる。

上記日本看護協会の奨学金のほか、各病院でも奨学金など費用の補助制度だけでなく、シフトの融通といったサポートを行っているケースがあります。働きながら看護師を目指す人は、就業先の制度も確認しておきましょう。

准看護師制度の見直しを検討しているのが現状

准看護師は日本でのみ制定された資格です。戦後に作られた准看護師制度は、医療の高度化や専門性に対応できる人材を増やすため見直しが進み、看護師制度との一本化が進んでいるようです。「准看護師制度がなくなるのは本当?」という声も聞かれますが、制度の見直しが行われている最中というのが現状です。准看護師は看護師と比べて就業開始までの期間や費用を抑えられ、働きながら資格を取得できるというメリットがあります。しかし求人数は限られ、看護師と同じ仕事をしていても生涯年収には大きな差があり、管理職や専門職としてのキャリアアップは難しいのが実情です。最近では看護師養成学校に進学する准看護師も増えています。准看護師の資格取得を考えている人は、将来的には看護師の資格取得も見据えて行動しても良いかもしれません。

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