看護師である自分にとって「やりがい」とは何だろうと考えたことはないでしょうか。一般的にやりがいとは「物事に対する充足感や手応え」という意味がありますが、日々の忙しさで時に見失ってしまうこともあるでしょう。「やりがい」とは何かを解説し、仕事のモチベーション維持や日々の充実感を得られるように、さまざまな場所で働く看護師のやりがいを紹介します。
目次
看護師として働くモチベーションは?「やりがい」を考える
「やりがい」という言葉には、物事に対する充足感や手応え、そのことをするだけの価値と、それに伴う気持ちの張りという意味があります。例えば、やりがいという言葉を使う場面には以下のようなものがあります。
「この仕事は実にやりがいがある」
「私はお客様から感謝されたときにやりがいを感じます」
看護師として働いていると、似たような場面があるのではないでしょうか。
似たような言葉では、
物事を行うことが自身にとってためになるさま
→有意義な、意味のある、価値のある、得るところの多い
難易度が高く挑むには適しているさま
→手応えのある、挑戦し甲斐がある
などもあります。
看護師の仕事では「社会貢献できていると実感したとき」「患者さんのためにと使命感を持つとき」「チームプレーで患者さんが危機状態を脱したとき」など、やりがいのある仕事だなと思うことは多いのではないでしょうか。仕事にやりがいを持つこと、それはいち業務にスポットを当てた話だけではなく、一緒に働く同僚や上司、働く環境(給与や待遇など)、働く相手先なども含めて関係してくることだと考えます。
やりがいを持つと良いこと
人の一生において「仕事」に割く時間は膨大です。仕事における幸福度や充実感が高いと、ストレスが少なく前向きにチャレンジできることが増えたり、日々のモチベーションに繋がったり、この仕事をして良かった、など感じるのではないでしょうか。一方で、やりがいを持てずに働いていると、ストレス・苦痛がある状態が続き、集中力が持たずにミスが増える、受け身になってしまい向上心がなくなる、仕事に行きたくない・辞めたいと感じたり、体調を崩したりしてしまうこともあるかもしれません。「やりがい」は自分にとっても周囲にとっても影響を及ぼす可能性があるのです。
看護師のやりがい・モチベーションアンケート結果
ナース専科では、看護師の職業自体、職場でやりがいを持って働けているかなどのアンケートを実施しました。その結果を紹介します。
7割以上の看護師が看護師という職業に「やりがい」を感じている

看護師という仕事に「やりがい」を感じている人は7割以上いる一方で、やりがいを感じていない人も一定数いるようです。
現在の職場で「やりがい」を感じられない・わからない看護師は約半数近く

現在、勤務している職場で看護師としての「やりがい」を感じられているか、という設問に対しては、なんと約半数近くの人が「感じられない」「わからない」と回答。看護師という職業自体にやりがいは感じるものの、現在の職場ではやりがいを持てない状況にある人も多いことがわかります。
「あなたにとって看護師としてのやりがいは?」に具体的に答えられる?

看護師としてどのような業務に「やりがい」を実感できるのか把握できているかを質問したところ、半数以上の人が「把握できている」「どちらかというと把握できている」と回答しました。看護師の仕事にやりがいを感じている人はほとんどが自身のやりがいとは何か、を把握しているようです。
看護師としてどんなことに働く「やりがい」の事例
看護師としてどのようなことに働くやりがいの具体例として以下のように回答がありました。
- ゆっくり話す時間を設けて傾聴したことで「気が楽になった」と言ってもらったとき
- 患者さんやご家族に寄り添い、ニーズに応え、ゴールに向かって一緒にがんばっているとき
- 複数の業務を抱えたとき、優先順位を考えてスムーズに進んで「ちゃんと仕事ができている!」という充実感が得られたとき
- 多職種で連携してケアした患者さんが無事退院したとき
- 勉強して得た知識を看護技術に活かして患者さんの治癒促進に役立てられたとき
- 医療行為以外のアセスメントをして必要と考えた援助(保清、環境整備、傾聴など)を行い、患者さんの喜びを得られたとき
- 適切なアセスメントをして、患者さんの苦痛を取り除く援助ができたとき
- 時間内に残務がなく仕事を終えられたとき
- 患者さんと深くかかわれること。長くかかわる中で、その人の経験や深い考えを感じることができたとき
- 患者さんに寄り添い、じっくりと向き合うことで患者さんの人生の一部を共有し、生命の尊さを感じられること
- 患者さんに一番近い立場として多職種の意見を調整すること
【参考】ナース専科調べ(2022年8月5日/有効回答数:300)
「急性期」「回復期」……職場別の看護師の「やりがい」
ナース専科で行ったアンケートの回答では、看護師という職業に対してのやりがいはもちろん、職場や診療科ごとに感じるやりがいが異なることも印象的でした。診療科や職場ごとにそれぞれのやりがいの特徴をまとめてみました。
急性期、救急分野で働く「やりがい」
急性期病棟や救急分野では、命の危機に直面している患者さん、治療しなければ生命維持に支障きたす患者さんを相手にしている緊張感が強いなかで働います。患者さんの状態把握から判断までのスピード感が求められ、検査や処置などのサポートなど、診療の補助を行う割合が多く、治療によって症状が安定してくるまでの看護にやりがいを感じる人が多いようです。
急性期、救急分野ではどんなことにやりがいを感じるのか
急性期や救急分野でどんなことにやりがいを感じているのでしょうか。アンケートの回答から見ていきます。
- 命の現場に関わるという自負がやりがいにつながる
- 患者さんが術後に回復し、自宅へと退院していく姿を見送れたときにやりがいを感じる
- 患者さんの容態の変化を観察して対応できたとき
- 忙しい局面でスタッフと力を合わせることで乗り換えられたとき
- 医師の診察をスムーズに補助したことで患者さんの容態が良くなり、帰宅できるようになるのを見届けられたとき
【参考】ナース専科調べ( 2022年8月5日/有効回答数:300)
回復期、地域包括ケアで働く「やりがい」
回復期や地域包括ケア病棟などは急性期を脱して、在宅復帰や職場復帰を目指すことを目的としています。障がいなどが残った場合でも、患者さん本人の残存機能を活かしながらケア、リハビリを実施することにやりがいを感じるようです。他の職種と患者さんの間に立って退院調整や社会復帰のためのサポートなども行い、無事に退院していく患者さんを見ると日々のモチベーションに繋がります。
回復期、地域包括ケアではどんなことにやりがいを感じるのか
回復期や地域包括ケアでは以下のようなやりがいを感じているとの回答がありました。
- 患者さんのADL、QOLがともに向上し今後の生活への意思決定ができたとき
- チーム医療を実践するなか多職種で気持ちを共有できたとき
【参考】ナース専科調べ(2022年8月5日/有効回答数:300)
慢性期(療養)で働く「やりがい」
慢性的な経過をたどっていく場面では、入院や治療が長期的になることがあります。また生活習慣病のように病気と共に生きていくこととなる患者さんを相手にケアを行うため、合併症の予防や症状悪化の際に早期発見できるようにすること、患者さんや家族への生活指導など、最後まで自分らしく、より良く生きるためのサポートを一緒に考えて実践することにやりがいを感じるようです。
慢性期(療養)ではどんなことにやりがいを感じるのか
慢性期(療養)では以下のようなやりがいを感じているとの回答がありました。
- 入院時は不穏だった患者さんが、看護師の関わりによって穏やかに経過できるようになったとき
- 寝たきりの患者さんが笑顔になったり、普段は発せない言葉を聞いたりしたとき
- 食思不良の患者さんが少しでも食事を摂取されたとき
- 患者さんにとって最善な助言ができて患者さん自身に喜んでもらえたとき
【参考】ナース専科調べ(2022年8月5日/有効回答数:300)
クリニックで働く「やりがい」
クリニックでは健康維持や疾病の予防、早期発見・早期治療に繋げるためであったり、生活を支援するであったり、病院などの医療機関と比べてより対象の生活に近いところでの関わりが多いでしょう。これまでの病院での経験を活かすことができたり、良好な関係を築くためのコミュニケーションが大切になってきたりと、地域のなかで助け合いながら働くことにやりがいを感じるようです。
クリニックでのどんなことにやりがいを感じるのか
クリニックで働くうえで感じるやりがいには以下のような回答がありました。
- 患者さんの疾病の早期発見ができて、治療できる病院につなげて回復・退院した患者さんがお礼を言いに来てくれたとき
【参考】ナース専科調べ(2022年8月5日/有効回答数:300)
訪看など介護福祉分野・施設で働く「やりがい」
訪問看護や施設は、一人ひとりの利用者さんとじっくり向き合う時間が作りやすい環境です。全身状態の管理や看護ケアはもちろん、地域で“その人らしく”暮らしていくことを支援していきます。日常をともに過ごし、利用者さんやご家族とコミュニケーションを積み重ねてより深く利用者さんのことを知り、信頼関係を構築していくことなどもやりがいに感じるようです。
訪問看護など介護福祉分野の施設ではどんなことにやりがいを感じるのか?
訪問看護など介護施設分野の施設で感じるやりがいには以下のような回答がありました。
- 利用者やご家族の想いに共感しつつ、問題点をケアマネやリハビリスタッフと共有し、解決に向かって協業しているとき
- 利用者やご家族に感謝されたとき
- 利用者やご家族と深くかかわれること
- 入居者が安全に安心して、その人らしい暮らしが送れるようにケアすること
- 自分のスキルが存分に活かせること
【参考】ナース専科調べ(2022年8月5日/有効回答数:300)
働く「やりがい」が感じらない?自己分析で自身の働く軸を把握する
職種でやりがいを感じられないときは、そもそもやりがいに気づいていないだけなのか、自分の考えや価値観とずれたところに身を置いている可能性などが考えられます。そもそも自分の働く上での軸がわからない、曖昧だ、と言う人もいるでしょう。そうした人は「キャリアアンカー」を参考にしてはいかがでしょうか。個人がキャリアを選択していく上で絶対に譲れない軸となる価値観や欲求、能力を下記の通り8つに分類したものです。自分の考えや価値観で近いタイプを参考に、患者さんへの貢献だけではなく、仕事内容や働き方などについて考えて「やりがい」を確かめてみましょう。
キャリアアンカーについてはナース専科に詳細を解説した記事があります。診断コンテンツも実施していますので、ぜひ参考にしてください!
キャリアアンカー全8項目を紹介。働く「やりがい」は人それぞれ
やりがい1:管理能力
仕事のやりがいが「管理能力」の人は、グループを統率したりすることに価値を見いだします。ある学問分野や知識体系に精通し専門性を追求するスペシャリストというより、業務ルールやマニュアル作成などの業務の最適化を検討して、組織を動かすような仕事に興味があるとされています。
やりがい2:専門知識・技術の追求
仕事のやりがいが「専門知識・技術の追求」の人は、学問分野や知識体系に精通しているいわゆるスペシャリストタイプです。基本的には現場で活躍し続けることを好み、専門性やスキルが高まることに意義と幸せを見いだし、認定看護師・特定看護師・専門看護師など、スペシャリストとして能力を発揮する高い意欲を持っています。
やりがい3:保障・安定
「保障・安定」を仕事のやりがいとする人は、社会的・経済的な安定を求めるタイプです。安定した組織に長期間所属することを望みます。リスクを回避することを優先し、将来が見通せる環境で堅実にキャリアを歩みたいと考えます。
やりがい4:創造性
仕事のやりがいが「創造性」の人は、新しいものを生み出す起業家や芸術家、発明家に多いタイプです。業務の新たな仕組みづくりや改善、企画提案などに関心があり、リスクを恐れずクリエイティブな挑戦を続けるでしょう。
やりがい5:セルフコントロール
仕事のやりがいを「自律と独立」に置く人は、自分のスタイルで仕事を進めることを重視するタイプです。研究職や技術職に多く見られる傾向があり、セルフマネジメントの能力に長けていて、自身を管理し納得できる方法でマイペースに仕事に取り組みます。
やりがい6:貢献意欲・ホスピタリティ
「貢献意欲・ホスピタリティ」を仕事のやりがいとする人は、世の中に貢献したいと考えるタイプで、仕事を通じて人の役に立ちたい、世の中を良くしていくことを目指します。
やりがい7:変化適応
仕事のやりがいが「変化適応」の人は、困難に挑戦することやそこから受ける刺激に喜びを感じるタイプです。ハードワークにも対応できますが、ルーティンワークは好まず、多様な業務や知識、スキルに興味を持つ傾向があり成長欲求も高いでしょう。
やりがい8 :ワーク・ライフ・バランス
「ワーク・ライフ・バランス」を仕事のやりがいに置く人は、仕事とプライベートを両立させられることを重視するタイプです。生活スタイルが確立していて、仕事には打ち込みますが、私生活を犠牲にすることはないでしょう。予定にない残業や、会社のイベントなどはきっぱり断るタイプです。
自身の「やりがい」を理解して働くモチベーションに
看護師にとってやりがいを持つことは、仕事をする上でモチベーションがあがり、充実した日々を過ごすことに繋がるかもしれません。今はまだはっきりとわからない、曖昧かもしれませんが、自分のやりたいことや好きなことや得意なこと、自分の考えや価値観などに自身で気づき、それが叶う職場に身をおいて自分なりのやりがいを持って働いていきましょう。