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  • 公開日: 2022/10/10

「診療報酬」「診療報酬改定」とは?看護師の基礎用語解説【2022年版】

提供した医療や看護に対する対価として保険組合などの保険者から支払われる診療報酬。2年に1度改正され、今年、令和4年度(2022年)の改定では不妊治療が保険適応となり大きな話題となった「診療報酬」を解説します。

病院の経営に影響を与える診療報酬

診療報酬は医療に対する対価として健康保険組合などから支払われるお金です。診療報酬は医療機関の収入源となり、人件費や医療機器・診療材料・薬剤の購入費、施設の維持管理費に使用されます。

診療報酬を計算(算定)し収益を得るためには、医療行為一つひとつを算定するだけではなく、一定の基準を満たす必要があります。看護師の夜勤の人数や看護助手の配置、患者の入院受け入れや転院・在宅療養まですべて基準に則り算定されています。適切に算定していなければ病院の収益が減る可能性もあり、病院の経営を左右する重要なものです。

診療報酬とは?

診療報酬は医療行為の対価として支払われる費用です。すべての医療行為について点数が細かく決められており1点=10円で計算します。保険診療内の同じ治療であれば、国内どの医療機関で受けても点数は変わりません。原則、2年に1度改定され、直近では令和4年4月1日に改定されました。

役割

診療報酬は患者・医療者の双方に対し、以下の2つの役割を担っています。

1つ目は「患者が適正な値段で医療を受ける」ための役割です。診療報酬により保険診療範囲内で受ける医療の価格は標準化されています。同じ医療を受けても地域・医療機関で自己負担が変わらないのは利用者の大きなメリットです。

2つ目は「医療者が提供した医療に対する適正な対価を得て、医療提供体制を維持する」ための役割です。提供した医療に対して適正な対価が得られなければ、病院経営は成り立ちません。適正な対価を得て経営を維持するためにも診療報酬は重要なのです。

仕組み

診療報酬は患者・医療機関・審査支払機関・保険者の四者の相互関係で成り立っています。四者それぞれがどのような役割を果たしているのか見てみましょう。

①患者は毎月保険料を健康保険などの保険者に支払う(働いている人は雇用保険料などの名目で、毎月給与から天引きされている)

②患者が医療機関を受診すると、診療報酬をもとにかかった医療費が計算される

③患者は診療報酬点数で算出された金額の一部を自己負担として支払う

④医療機関が③で患者が支払った以外の医療費を審査支払機関にレセプトとして請求する

⑤審査支払機関が請求内容を精査し、保険者に請求する

⑥保険者から審査支払機関に請求額が支払われる

⑦審査支払機関から⑥がそのまま医療機関に支払われる

【参考】日本医師会『なるほど!診療報酬』

医療行為の対価を計算する診療報酬点数

医療行為一つひとつには対価を計算するための「点数」が定められています。この点数を診療報酬点数と呼び、1点=10円で計算します。

診療報酬点数の計算方法

診療報酬点数の計算方法を具体的に見ていきましょう。今回は「患者が初診のクリニックを受診して点滴を受けたケース」を例に計算します。

まずは初診料288点=2880円が算定できます。

☑初診料 288点

次に点滴に関連した診療報酬を計算しましょう。

☑6歳未満の乳幼児に対するもの(1日分の注射量が100mL以上の場合) 101点

点滴の手技には点滴注射料99点=990円を算定します。この点数には点滴に使用する物品、翼状針や留置針・輸液セットの費用と、末梢静脈路を確保する手技料が含まれています。

さらに注射に使用した薬の点数を計算しましょう。生理食塩液500ml/1袋の薬価(薬の値段)は193円です。薬価を診療報酬に換算するためには、円単位を点数単位に直し「五捨五超入」します。

  • 193円÷10=19.3点→19点

点滴の診療報酬点数は19点だと算出されます。

以上から、初診の患者がクリニックを受信して点滴を受けたケースの診療報酬点数の合計と医療費は以下になります。

☑診療報酬点数 初診料+注射点滴料+薬価=288+99+19=406点
☑医療費(自己負担3割) 406点×10円=4,060円

患者の自己負担割合は加入保険により異なりますが、今回は3割負担としましたので、実際に患者が窓口で支払った金額は「1,218円」になります。残りの2,842円は保険者より医療機関に支払われます。

診療報酬点数
  • 初診料:288点
  • 点滴:99点
  • 薬価:19点

合計 406点

医療費:406点×10円=4,060円
患者自己負担:4,060円×3割=1,218円

診療報酬の改定

診療報酬は2年に1回改訂されます。改定は厚生労働省管轄の中央社会保険医療協議会で審議され、厚生労働大臣が認可します。

2年に1回行われる「改定」

日々、進化する医療や変化する社会・経済状況に対応するため、改定は頻度高く行っています。そのため医療機関では新しい医療・看護に対しても適切な報酬を得られ、患者は自己負担を抑えて高度な最新医療・看護が受けられるというメリットがあります。

令和4年度(2022年)の改定について

今年、令和4年度の診療報酬改定では、改定率(診療報酬改定で実施された診療報酬の変化率のこと)が以下のように引き下げられました。

令和4年度診療報酬改定引き下げ率

診療報酬全体 +0.43%
薬価等 ‐1.37%
合計 ‐0.94%

診療報酬が引き下げられると患者側が支払う医療費は安くなります。改定前と同じ医療を受けても、窓口負担を軽減できるメリットがあります。

医療者側は改定前と同じ医療を提供しても収益が減ります。長期的には病院の経営を圧迫し、給与や人員配置に影響を与える可能性があります。

令和4年度(2022年)改定の基本方針

診療報酬改定では毎回基本方針が制定されます。令和4年度は以下の通りです。

【引用】令和4年度診療報酬改定の基本方針

基本方針では医師等の働き方改革推進が明言されています。「医師等」には看護師も含まれ、待遇改善や業務負担軽減を目的とした対策に診療報酬が請求できるようになりました。具体的には以下の通りです。

看護における処遇改善

令和4年度改定では看護師の処遇改善のために以下が行われました。

①給与増額

地域でコロナ医療など救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関および三次救急を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、10月以降収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げるための新たな仕組みを作ります。これにより、一部の医療機関で働く職員の給与増額が見込まれます。

②夜間の看護配置に係る評価および業務管理等の項目見直し

看護師が適正な人員配置で夜勤を行い施設基準を満たすと「看護職員夜間配置加算」が算定できます。しかし、スタッフや夜勤従事者が不足する現場では基準を満たすあまり、身体的に負担となるシフトが組まれるケースもありました。今回の改定で加算算定には、以下の2項目を満たしていることが必須となりました。

  • 11時間以上の勤務時間の確保
  • 連続する夜勤の回数が2回以上

この改定によりインターバルの開かない勤務や連続する夜勤が制限されました。さらに、適切な配置基準を満たした場合に算定できる点数も増えています。看護職員の配置に係る加算は以下の通りです。

看護職員夜間配置加算 改定前 改定後
看護職員夜間 12対1配置加算1 105点 110点
看護職員夜間 12対1配置加算2 85点 90点
看護職員夜間 16対1配置加算1 65点 70点
看護職員夜間 16対1配置加算2 40点 45点
注加算の看護職員夜間配置加算 改定前 改定後
地域包括ケア病棟入院料 65点 70点
精神科救急入院料 65点 70点
精神科救急・合併症入院料 65点 70点

【引用】令和4年度診療報酬改定の概要【全体概要版】 厚生労働省

医療機関は算定基準を満たさなければ加算が算定できず収益が減ります。基準を満たし収益をあげるために適切な人員配置が実現します。

③看護補助者に関する加算の新設

看護補助者に適切な研修を実施し配置した場合に、看護補助体制充実加算が算定できます。従来の看護補助体制加算に追加して1日につき5点が算定できます。

重症度、医療・看護必要度の見直し

看護必要度とは、急性期の入院患者に対して適切に看護人員配置が行われているか、入院料・加算の施設基準を満たしているかを客観的に評価するための指標です。

①一般病棟

改定は以下A項目の3つに対して行われました。B・C項目の改定はありません。

  • 「心電図モニターの管理」の項目を廃止
  • 「注射薬剤3種類以上の管理」へ変更
  • 「輸血や血液製剤の管理」の項目の評価について2点に変更

薬剤の投与が多い患者や、輸血や血液製剤を使用するより重症度の高い患者の点数配分が高くなるように改定されました。詳細は令和4年度診療報酬改定の概要で確認できます。

【引用】令和4年度診療報酬改定の概要【全体概要版】 厚生労働省

②特定集中治療室用

改定は以下の3つです。

  • 「心電図モニターの管理」を廃止
  • 「特殊な治療法等」の対象となる治療法にIMPELLAを追加
  • 「基準を満たす患者」の条件をA得点4点以上から3点以上に変更

A得点が3点に変更になったことで、以前よりも軽症な患者も加算算定が可能となりました。

そのほかにも注目すべきポイントを4つ解説します。

感染対策に関連する評価の新設

新型コロナウイルス感染症などにも対応できる医療体制や、かかりつけ医療機能の整備・訪問看護や地域包括医療・オンライン診療などに関連した項目が新設されました。

不妊治療保険適応

安心して不妊治療を受けられるように各種項目が新設されました。適応される不妊治療の種類と新設された評価は以下です。

一般不妊治療に係る評価の新設 生殖補助医療に係る評価の新設
■一般不妊治療にかかる医療技術等の評価
・一般不妊治療管理料
・人工授精
■生殖補助医療に係る医療技術等の評価
・生殖補助医療管理料
・採卵術
・抗ミュラー管ホルモン(AMH)
・体外受精・顕微授精管理料
・受精卵・胚培養管理料
・肺移植術
■男性不妊症に係る医療技術の評価
・Y染色体微欠失検査
・精巣内精子採取術

かかりつけ医機能の強化

慢性疾患患者の地域包括診療等の対象疾患に以下の2疾患が追加されました。これにより地域での継続的な医療の推進が期待されています。

  • 慢性心不全
  • 慢性腎臓病

地域包括ケア病棟の役割明確化

地域包括ケア病棟は急性期治療後の患者が、自宅や介護施設へ戻るために必要な医療・支援を提供します。入院から在宅までの切れ目ない医療を提供するため以下が改定されました。

①地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料の改定

200床以上の病院では、自院の一般病棟から地域包括ケア病棟へ転棟した入院患者数が6割を超えると、入院料・管理料が85/100に減算されるようになりました。この改定により自院内での転棟ばかりを受け入れていると、同じ入院患者数でも収益が減ってしまいます。減収を防ぐために、他病院からの転院受け入れが促進されます。

②患者の受け入れ元に関する改定

患者の受け入れ元は病院からの転院だけではありません。自宅や施設から入院した患者数が一定の基準を満たさないと入院料・管理料は90/100に減算されます。病院間の転院ばかり受け入れるのではなく、地域と連携した受け入れをしなければ減収になります。

③重篤患者の受け入れを推奨

全体の患者に占める重症患者の割合が12%もしくは8%以上に引き上げられました。重篤な患者の受け入れが推奨されています。

④在宅復帰率の算定要件改定

在宅復帰率が72.5%以上もしくは70%以上を満たさなければ、地域包括ケア病棟の入院料・管理料は90/100に減算されます。患者が在宅に復帰できなければ減収に繋がるため、積極的かつ効果的なリハビリが推進されます。

⑤回復期リハビリテーション病棟との機能分担の見直し

回復期リハビリテーション病棟では以下が改定されました。

⑥回復期リハビリテーション病棟入院料の改定

回復期リハビリテーション病棟入院料が改定され、受け入れ対象に「心血管疾患患者」が追加されました。

⑦重症患者割合を改定

新規入院患者に占める重症患者割合を3割もしくは4割以上に増やさなければ、施設基準を満たしたとみなされず回復期リハビリテーション病棟入院料が算定できません。

⑧FIM評価の取入れ

入院患者に対し第三者によるFIM評価(機能的自立度評価表)を受けていることが望ましいと規定されました。FIM評価を行い適切に患者の状態を評価し、効果的なリハビリの実践が求められています。

診療報酬で看護師が押さえるべきポイント

診療報酬や改定の基本情報を踏まえたうえで、診療報酬で看護師が押さえるべきポイントを紹介します。

提供した医療・看護ケアは正確に算定する

点滴や吸引、モニター装着、血糖測定。看護行為の一つひとつは診療報酬に算定できます。診療報酬の算定を行わなかった物品や処置等にかかる費用は医療機関の持ち出しとなり、減収につながります。「まるめ」と呼ばれる包括制度などで一括算定されるケースもありますが、行った医療・看護行為には対価が発生することを忘れないようにしましょう。

改定が病院の収益や給料を左右する

診療報酬として算定できる金額が変わると医療機関の経営は大きく左右されます。同じ医療行為でも高く算定されれば増収に、低く算定されると減収になります。従来、自由診療(自費診療)であった医療で診療報酬算定が可能になると収益が減ってしまうかもしれません。診療報酬改定は病院の収益や給与に影響を与える可能性があるので、改定のタイミングに合わせた情報のアップデートを心がけましょう。

『特定行為研修修了者』は加算を算定できる

精神科リエゾンチーム加算、栄養サポートチーム加算、褥瘡ハイリスク患者ケア加算、 呼吸ケアチーム加算の算定に係る適切な研修に「特定行為に係る研修」が追加されました。特定行為研修を修了していればこれらの加算が算定できます。

忘れてはいけない「加算」や「管理料」制度

診療報酬には「○○加算」や「管理料」があります。一定の要件を満たすと算定が可能で医療機関の増収に繋がります。以下はその一例です。チェックしておきましょう。

診療報酬の加算・管理料の例

乳幼児加算 6歳未満のこどもが受診した際に算定 75点
時間外加算 医療機関が表示する診療時間外の受診で算定 50点
心臓ペースメーカー管理料 心臓ペースメーカーを使用している患者に療養上必要な指導を行った場合に算定
・着用型自動除細動器による場合 360点
・ペースメーカーの場合 300点
・植込型除細動器又は両室ペーシング機能付き植込型除細動器の場合 520点
特定疾患療養管理料 厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に対して、治療計画に基づき療養上必要な管理を行った場合に、月2回に限り算定
・診療所の場合 225点
・許可病床数が100床未満の病院の場合 147点
・許可病床数が100床以上200床未満の病院の場合 87点

2年後の令和6年(2024年)改定で診療報酬はどう変わる?

近年の改定では先端医療の算定が認められるだけでなく、地域包括ケア病棟や在宅医療との連携が重視され点数が増える傾向にあります。さらに医療者の働き方改革や負担軽減など、より働きやすい環境が整うような工夫もなされています。

令和6年の診療報酬改定によって、働きやすい環境や給与アップが期待できるかもしれません。

看護師に身近な診療報酬の基礎知識を身につけよう

診療報酬は病院経営において重要な収入源です。行った医療に対して確実に算定しなければ医療機関は減収・減益となり、給与やスタッフの削減につながるかもしれません。診療報酬と看護は関係性が深いものです。苦手意識を持たず最新の動向に注視していきたいですね。

【参考資料】

診療報酬について 日本看護協会

診療報酬 日本医師会

令和4年度診療報酬改定の概要 【全体概要版】 厚生労働省保険局

令和4年度診療報酬改定関連通知の一部訂正について 令和4年3月4日 厚生労働省保険局医療課

令和4年度診療報酬改定の概要 入院Ⅳ (働き方改革の推進、横断的個別事項) 厚生労働省保険局医療課

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