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  • 公開日: 2022/9/20

「看護師の2025年問題」を解説。超高齢社会の看護師への影響は?

目前に迫る2025年問題。社会の超高齢化に伴い、さまざまな影響が予想されています。医療業界にとって、看護師にとって一体どのような影響があるのでしょうか。どのような社会の動きがあるのか、またその対策について、看護師が理解しておくべきことをまとめました。

看護師が不足する?余る?2025年問題とは

ここ10年の間で、耳にする機会が増えてきた「2025年問題」。そもそも2025年問題とは何なのか、医療・福祉・介護現場や看護師をとりまく環境において、どのような影響があるのかまとめました。

医療・福祉・介護現場への2025年問題の影響

日本の高齢化社会については長年、問題視され続けてきました。かつては高齢化の進展の速さが問題であったことに対し、2015年以降は高齢化率の高さ(高齢者数の多さ)が問題の主眼となっています。日本の出生率は国際的にみても最低の水準であり、人口が近年減少傾向にあることや、日本の平均寿命や健康寿命が高い水準にあることなども関連しています。2025年問題と言われているのは、団塊の世代(ベビーブーム世代)が2025年には75歳以上の後期高齢者となり、人口の約18%を占めるためです。さらに2040年には人口の約35%が後期高齢者になると推計されています。こうした人口動態に伴いさまざまな課題があります。たとえば厚生労働省は以下のような課題を挙げています。

要介護率が高くなる75歳以上の人口が急速に増加

2000年から2025年まで75歳以上人口は急速に増加します。2030年ごろからは75歳以上人口の加速的な増加は落ち着きますが、代わって85歳以上の人口がその後の10年程度にわたって増加を続けます。

保険料負担者である40歳以上の人口は2021年をピークに減少

介護保険が創設された2000年以降、40歳~64歳の第2被保険者の数は増加してきましたが、2021年をピークに減少しています。したがって後期高齢者を支える保険料の確保が難しくなることが予想されています。

認知症高齢者の増加

65歳以上の高齢者のうち認知症高齢者が増加していきます。2012年には462万人(人口における15%)だった患者数に対し、2025年には約700万人(約20%)に達するともいわれており、介護と医療をあわせたサービスの提供が急務とされています。

独居・夫婦のみ世帯の増加

世帯主が65歳以上の独居世帯や夫婦の世帯が増加していきます。地域包括ケアシステムなど、高齢世帯の生活を支える仕組みの整備が重要になります。

地域によって異なる医療需要ピークの時期や程度

埼玉県、東京都、神奈川県、千葉県、大阪府など首都圏は急速に高齢化が進むと見込まれています。今後も現在と同じ医療が提供されると仮定し、人口構成のみが変化した場合、首都圏以外の医療需要ピークが2010~2025年であるのに対し、首都圏は2040年がピークとなると考えられています。さらに医療資源の地域差もあることから医療需要の程度も異なります。地域ごとに短期、中長期的な医療福祉整備構想を検討する必要があるとされています。

超高齢化社会が起因する2025年問題の看護師への影響度は?

医療・福祉・介護現場での影響について述べましたが、看護師はそれぞれの分野で活躍する職種であり、看護師として働いていてもその影響は受けるでしょう。例えば2025年問題では、後期高齢者が増えることで、医療の需要が高まり医療従事者含めた看護師不足が懸念されています。たとえば超高齢化社会において24時間365日ケアを継続する看護の拠点として重要とされる訪問看護ステーションや介護老人保健施設、居宅サービス等の施設は拡充が図られています。こうした施設で働く看護師の数は10年前にくらべて増加傾向にあるものの、訪問看護や介護施設の分野での看護師不足は懸念されたままです。

一方で、近年の診療報酬の改定により、在宅医療の強化や急性期病床の削減といった流れから病院で働く看護師が余るのではないかとも言われています。例えば、急性期病棟から地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟への病棟機能の転換が行われている病院もあるでしょう。看護師の配置基準は急性期が7体1、あるいは10対1であるのに対し回復リハでは13対1あるいは15体1以上とされており、病棟運営において必要とされる看護師数が減少するからです。

日本看護協会が主催する新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師の働き方ビジョン検討会では、看護師の役割を以下のようにまとめています。

  • 24時間を通じ、患者の最も身近にいる医療専門職として第一線で、状態の変化を即座に察知し、必要な医療・看護をタイムリーに提供
  • 常に予防的視点に立ち、尊厳を持ってその人らしく生活できるようその人の生きる力を引き出しながら支援
  • チーム医療のキーパーソンとして、「医療」と「生活」の両方の視点を持って全体を見通し、状態の変化に合わせて、必要な時に必要なサービスが提供されるよう、医療・介護などのサービス全体を統合的にマネジメントして暮らしをまもる
  • 穏やかに死を迎えられるように支援

【引用】新たな医療の在り方を踏まえた看護師の役割と働き方

高齢化に伴い、複雑な状況にある患者が急増する中では、集中的な入院医療と生活を支える在宅医療の両方が必要であるとしています。看護師の基礎教育の強化から、働き方についても、主な舞台が病院から施設や在宅へと変化していく可能性が考えられるでしょう。

看護師として2025年問題にどのような対策をとるべきかを

2025年問題におけるさまざまな課題があるなか、医療現場や看護師として、どのように対策すれば良いのでしょうか。社会としてやるべきこと・これまで取り組んできたこと、職場や看護師個人としてできることをまとめました。

対策するために社会が取り組む2つのこと

2025年問題に対応するために、大きく2つの取り組みがなされました。それが「地域包括ケアシステム」と「地域医療構想」です。

1:地域包括ケアシステム

地域包括ケアシステムは、介護が必要な状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるように、住まいや医療・介護・予防・生活支援が一体的、かつ包括的に提供される地域づくりのことです。地域包括ケアシステムは、全国で統一されたものではなく、都道府県や市区町村など地域の特性に応じて設定されています。これまでの「病院完結型」から「地域完結型」を目指し、地域が主体となって介護保険制度と医療保険制度の両分野で高齢者を支えていくものです。

【参考】厚生労働省「地域包括ケアシステム」

2:地域医療構想

地域医療構想とは、超高齢化社会にも耐えうる医療提供体制を構築するために、都道府県ごとに2025年の医療需要と必要病床数を推計し、目指す医療提供体制を実現するために策定されたものです。二次医療圏単位を基本とし、①人口規模、②患者の受療動向、③疾病構造の変化、④基幹病院までのアクセス時間等の要素で構想区域を設定。区域ごとに高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つの医療機能ごとの病床の必要量を推計しています。地域による病床の偏り、余剰または不足が見込まれる機能を明らかにして課題を解決し、2025年問題に向けた医療提供体制の構築を目指しています。

職場単位や個人でできること

まずはこれらの社会情勢を知ること。そして、住んでいる地域、または職場の特性を知ることから始めましょう。

たとえば病院では「最近、認知症の入院患者が増えてきた」「独居・夫婦のみ世帯が増えてきた」というのは現場でも実感できるところです。まずは認知症の疾患理解、看護ケアのアップデート、退院支援の際にそれらを含めたアセスメント、意思決定支援などが重要となってきます。認知症ケアマニュアルの作成やせん妄予防の療養環境整備、認知症看護認定看護師との連携なども具体的な対策方法のひとつでしょう。また、2025年問題において多様性・複雑性に対応できる看護師の教育を強化するため、令和4年4月には教育課程の見直しで新たなカリキュラムがスタートします。こうした情報のアップデートを心がけてください。

2040年問題の展望は?

2025年問題に備えて進めている対策の多くは2040年を見据えたものです。2040年には、高齢者が人口の伸びは落ち着き、人口構成の変化による影響で現役世代の減少が課題とされ、社会保障の見直しや働き方改革なども進められています。また『地域包括ケアシステム』はもともと2025年を見据えて設定されましたが、2040年の『地域共生社会』を実現するためにさらなる改革が進められています。

地域共生社会とは

地域共生社会は、地域包括ケアシステムが住まいや医療・介護・予防・生活支援が一体的、包括的に提供される地域づくりであるのに対し、以下のように定義されています。

制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会を目指すもの

【引用】厚生労働省『「地域共生社会」の実現に向けて』

つまり地域共生社会とは、社会全体で実現を目指す社会全体のイメージやビジョンであり、地域包括ケアシステムは地域共生社会を実現するための仕組みなのです。

2025年問題と2040年問題の対策で看護師ができること

2025年問題、2040年問題が医療現場や看護師、社会に与える影響を解説しました。現時点ではさほど影響を実感していない人もいるかもしれませんが、じつはこれらの問題が看護師の皆さんがあたえる影響も大きいのだと気づかれた方もいらっしゃるでしょう。今後、看護師として働くうえでこれら問題との接点は欠かせなくなってきます。まずは超高齢化社会が社会や皆さんにどのような影響を及ぼすのか知ることから始めましょう。そのうえでどのような対策がとれるのかを考え、ぜひ実行していってください。

【参考】

我が国の人口について(厚生労働省)

今後の高齢化の進展 ~2025年の超高齢社会像~(厚生労働省)

医療と介護を取り巻く現状と課題等

医療需要ピークや医療福祉資源レベルの地域差を考慮した 医療福祉提供体制の再構築(国際医療福祉大学大学院教授 高橋泰)

看護師、准看護師(年次別・就業場所別)(日本看護協会)

看護の将来ビジョン いのち・暮らし・尊厳を まもり支える看護(日本看護協会)

地域医療構想策定ガイドライン(厚生労働省)

地域医療構想(全日本病院協会)

「看護師等養成所の運営に関する指導ガイドラインについて」 の一部改正について(厚生労働省)

「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部とりまとめ資の」について(厚生労働省保健局)

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