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  • 公開日: 2022/7/11

看護師の目標設定と管理はなぜ必要?例文と書き方のコツを解説

看護師が個人で毎年行う目標設定。どのように書けばよいのかわからずに苦労している人もいるのではないでしょうか。今回は、クリニカルラダーを活用した目標設定とその管理方法を解説します。

看護師が毎年行う目標設定の目的は?

目標設定とは自身が看護師として働く上でやるべきことを明確にする作業です。看護師としての価値観やキャリアビジョンから医療機関や病棟などの職場の理念・目標をすり合わせることで、その1年間で目指す看護師としての姿が明確になり、個人でやるべきことが整理できます。

1年に1度、個人で目標設定を行う理由

どのような目標にするかを年度の始めに決め、年度末に達成度合いを評価します。目標設定は毎年行ない、基本的には「目標設定シート(目標管理シートともいいます)」を用いて管理します。

なぜ看護師は1年に1度、目標設定を行うのでしょうか。その理由は3つ。「モチベーション向上」「キャリアアップ」「組織・職場の全体最適化」です。

目標設定を行う理由1:仕事へのモチベーション向上

ひとつ目の理由はモチベーションの向上です。目標設定は、まず自分の看護師としての価値観や働き方や将来のビジョンを再確認して行います。看護師という仕事を選んだきっかけや、希望するキャリアビジョンを改めて認識することで初心に返ることができます。

また、目標設定の際には個人の目標と職場の理念や目標をすり合わせる必要があり、職場の理念・目標への理解や共感が深まることで“自分に求められている役割”を認識できます。すると、やるべき業務が明確になり、モチベーション高く仕事に取り組めるようになります。

目標設定を行う理由2:キャリアアップ

ふたつ目の理由はキャリアアップのためです。目指すべき将来のキャリアビジョンが再認識できたら、それをかなえるために長期的・中期的・短期的なスパンでの目標を細かく設定していきます。たとえば10年後の理想の姿(長期)、5年後の理想の姿(中期)、1年後の理想の姿(短期)、と具体的に目標を落とし込むことで、キャリアアップのために何が必要なのかが明らかになります。

目標設定は年度の始めに上司との面談を経て決定しますので、上司や同僚に自分の目標を周知できます。そうすることで、周囲からも目標達成に必要な支援が受けやすくなり、看護師としてのキャリアアップに繋がるのです。

目標設定を行う理由3:組織・職場の全体最適化

組織や職場の目指す方向性に合った目標設定は、組織や職場に対する貢献度にも影響します。自身に求められる役割や業務に応じた目標設定であれば、それに添って行動し、達成することが業務効率や生産性の向上につながるからです。その結果、スタッフの負担軽減を図りながら、質の高い看護が提供できるようになり組織として全体最適が図れます。

「モチベーション向上」「キャリアアップ」「組織・職場の全体最適化」の3つを達成できるものが“じょうず”な目標設定と言えるでしょう。

設定した目標を具体化する手順

じょうずな目標を設定するためには、個人の目標と職場の目標を合致させることが重要です。代表的な手順を2つ紹介します。

ステップ1:目標設定シートの作成

まずは自身で目標を立て、目標設定シートを作成します。シートを作成する前に、みずからの看護師としての価値観・希望の働き方・将来のビジョンを考えておきましょう。次に、職場の理念や目標から求められている役割を考え、先に明らかにした価値観などと照らし合わせます。そこから、この1年間で「どのようなことができれば自分の将来のビジョンに近づけるのか」「どのような業務を行えば職場で求められている役割を達成できるのか」を想像し、シートに記載しましょう。

ステップ2:上司との面談

目標を作ったら、次は上司との面談です。目標として適切か、職場の理念・目標とは齟齬がないか、目標達成に向けてどんな支援が必要かを上司と一緒に確認しましょう。

こうして設定した目標は作って終わりではありません。年間で中間評価や期末評価を実施し、次年度へと引き継がれていきます。

目標設定作成の手順

目標設定を考えるときの5つのポイント

実際に目標を考えるときのポイントを見ていきます。

「モチベーション向上」「キャリアアップ」「組織・職場の全体最適化」の3つの目的に合ったじょうずな目標を設定するためには、次にあげる5つのポイントを押さえると良いでしょう。

ポイント1:やるべきことを自身で決める

人から押し付けられた目標では、やる気がなかなか出ない…というケースは少なくありません。目標は自ら決めることが大切です。

ポイント2:成長やキャリアアップにつながる目標を設定する

自分の成長やキャリアアップにつながると、必然的にモチベーションも向上しやすくなります。目標が思い浮かばないときは、クリニカルラダーをもとに考えましょう。クリニカルラダーを参考にした例文は後半に記載しています。参考にしてください。

ポイント3: 患者や他者への貢献につながる目標を設定する

看護師として患者さんに貢献している実感を持つことは、モチベーションアップにつながります。そのような実感を得られる目標を設定しましょう。

ポイント4: 職場の理念・目標と結びつける

職場の理念・目標と結びつけた目標設定をすることで、自分の職場における役割が明確になります。また、上司や同僚の協力が得やすくなります。

ポイント5:具体的で“頑張れば達成可能”なレベルに設定する

自身の身の丈からかけ離れた高すぎる目標はじょうずな目標設定とは言えません。達成しやすい目標、すなわち“頑張れば達成可能”なレベルに設定することが望ましいと言われています。また、設定した目標は「評価できるもの」にすることが大切です。

設定した目標の管理方法

評価可能な目標設定をする

目標設定は年度途中で達成に向けた進め方を見直せますし、次年度の目標設定時に今年度の改善策を盛り込めます。そのため、評価が可能な目標を設定して管理することが重要です。評価が可能な目標にするためには、なるべく数値化させることや、どのような状態になれば達成したとするかを具体的に表現することが大切です。

SMARTの法則を活用する

「SMARTの法則」は、目標を評価できるように表現する手法のひとつです。5つのポイントがあり、それぞれの頭文字を取って「SMART」としています。目標を決めたらこの法則にあてはめた表現方法を用いて“評価可能な目標”に仕上げていきましょう。

S:Specific(具体的である)

誰が読んでもわかる明確で具体的な表現にする。

M:Measurable(測定可能である)

数値を用いて明確になるように設定。

A:Achievable(実現可能な範囲である)

達成可能で現実的な内容にする。

R:Realistic(現実的な目標である)

業務に関連する目標に。

T:Time(期限が明確である)

いつまでに達成するかを明確にする。

たとえば、SMARTの法則を使って勉強会について目標を設定してみましょう。もし循環器病棟で勤務しているのなら、テーマを「心電図」にすると業務に関連したものに、さらに「心電図の読み方」にすると誰がみてもわかる具体的な内容になります。また「9月までに」とすると期限が明確で、さらに年度開始から5ヶ月後なので実現可能な範囲と言えるでしょう。開催する回数は「1回」と数値を用いて表現しましょう。

SMARTの法則を活用することで、「心電図の読み方に関する勉強会を9月までに1回開催する」という、勉強会に関する評価可能な目標設定ができました。

循環器病棟勤務の例

  • S 勉強会を開催する
  • M 1回
  • A 上半期の間に(年度開始から5ヶ月後)
  • R 心電図の読み方に関して
  • T 9月までに

数値化できないものは6W1Hで書いてみよう

数値化することで評価可能な目標にできますが、看護師の目標は必ずしも数値化できるものばかりとは限りません。そのようなときは、英語の「6W1H」を意識して書くと、評価しやすい目標に近づけることができます。

<6W1H>

  • Who:誰が
  • Whom:誰に
  • What:何を
  • When:いつ
  • Where:どこで
  • Why:なぜ
  • How:どのように

たとえば自身の係活動における目標を、6W1Hを用いて表現してみましょう。

  • Who(誰が):感染対策係
  • Whom(誰に):病棟看護師
  • What(何を):手指消毒の徹底の呼びかけ
  • When(いつ):5月
  • Where(どこで):病棟内
  • Why(なぜ):院内感染防止
  • How(どのように):スタッフごとに手指消毒剤の使用量をグラフ化するキャンペーンの実施

これをまとめると、「感染係として院内感染防止のために病棟看護師を対象に、スタッフごとに手指消毒剤の使用量をグラフ化するキャンペーンを5月に実施して、手指消毒の徹底を呼びかける」という目標を設定できます。

クリニカルラダーを活用した看護師の個人目標の具体例

個人目標を考えるのが難しいと感じるときには、クリニカルラダーを用いるのもよいでしょう。クリニカルラダーとは看護師の能力開発・評価のシステムです。看護実践能力を段階的に表し、各段階において期待される能力を示しています。到達度によって看護師の能力が示されるので目標を設定するうえで参考にすることもできます。

入職1年目の新人看護師の場合

参考:日本看護協会

新人看護師は最初の1年間でクリニカルラダーⅠの達成を目指します。ラダーⅠの目標は「基本的な看護手順に従い必要に応じ助言を得て看護を実践する」です。先輩の助言を得ながら、スタッフの一員として看護を提供できるようになるために、習得が必要な看護技術は何かを考えてみましょう。

新人看護師の個人目標例
  • 採血を○月までに自立して行えるようになる
  • 情報収集を○分間で終わらせられるようになる
  • 1日の業務を時間内で終わらせられるようになる

入職2年目の看護師の場合

参考:日本看護協会

2年目で目指すのは、クリニカルラダーⅡの目標「標準的な看護計画に基づき自立して看護を実践する」の達成です。看護計画に沿って、自立して看護を提供するためには何が必要かを考えてみましょう。

2年目看護師の個人目標例
  • ○月までに受け持ち患者を△人持つ
  • 受け持ち患者のカンファレンスを○月までに△回実施する
  • 急変時の対応ができるように○月までに勉強会を開催する

中堅看護師の場合

参考:日本看護協会

中堅看護師が目指すクリニカルラダーⅢの目標は「ケアの受け手に合う個別的な看護を実践する」です。患者の個別性を考慮して看護を実践ために、必要な技術や役割の習得を目標に設定しましょう。

中堅看護師の個人目標例
  • 受け持ち患者の多職種カンファレンスを○月までに実施する
  • 日勤のときには受け持ち患者について、受け持ち医師と情報交換をする
  • 受け持ち患者の家族の思いを月に一度は確認する

主任などの管理職やベテラン看護師の場合

参考:日本看護協会

主任などの管理職やベテラン看護師の場合、クリニカルラダーⅣの「幅広い視野で予測的判断をもち看護を実践する」ことが求められます。患者の退院後の生活や関係者なども含め、幅広い視野を持って看護実践を目指しましょう。

主任などの個人目標例
  • 患者の退院後の生活について、ソーシャルワーカーや退院支援看護師との情報交換を毎月行う
  • 患者の褥瘡評価が毎週確実に行われるように病棟内の業務を調整する
  • 毎月インシデントレポートを分析して、病棟内の業務調整や注意喚起を行う

目標設定と管理でキャリアビジョンを実現させる

多くの医療機関が目標設定を人事・業績評価に用いています。適切な人事・業務評価を受けるためにも、客観的に評価が行いやすい目標設定をする必要があります。また自分の看護師としての価値観やキャリアビジョンを振り返り、上司や同僚に協力を求めることができるきっかけにもなります。キャリアビジョンの実現にも適切に目標設定をし、管理することを実践しましょう。

<引用/参考>

日本看護協会

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