患者さんやご家族、同僚に信頼され安心感を与えるには、第一印象がとても重要です。「人の第一印象は見た目が9割」ともいわれるように、見た目を左右する“身だしなみ”は注意しなければなりません。今回は、看護師のNG・OKな身だしなみを解説します。普段の身だしなみに問題はないか、セルフチェックしてみましょう。
目次
信頼感を与えるための「身だしなみ」
皆さんは「人の第一印象は見た目で決まる」という言葉を聞いたことはないでしょうか? 実はこれは看護の現場にも当てはまる言葉です。同じユニフォームを着ている看護師の第一印象を左右するのは”身だしなみ”。信頼され安心感を与えられる看護師になるためには、知識・技術だけでなく身だしなみが重要になってきます。
”身だしなみ”と言われると「守らなければならないことが多くて大変そう…」と感じてしまうかもしれませんが、日ごろ、皆さんが心がけている医療安全にも欠かせない要素です。今回はヘアスタイル・メイク・ユニフォーム着用時のポイント等を詳しく解説します。ぜひ正しい理解に基づいて”身だしなみ”を見直してみましょう!
看護師に重要な「身だしなみ」とは?
身だしなみとは「相手に不快感を与えない見た目」のこと。看護師が勤務中に求められる身だしなみは飲食店やアパレルとは異なります。優先すべきポイントは「清潔感」や「安心感」。その理由から説明していきます。
不潔・不衛生はNG
ナイチンゲールの「看護覚え書」にこのような一説があります。
「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさ、などを適切に整え、食事内容を適切に選択し 適切に与えること ― こういったことのすべてを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えること、を意味すべきである」( 引用:ナイチンゲールの名言集 ナイチンゲール看護研究所)
ナイチンゲールは「清潔さを整えることが重要」と記しています。それは環境だけでなく医療者自身も当てはまります。医療者が不潔・不衛生であれば病原体の媒介となりやすく、院内感染を拡大させるおそれがあるからです。さらに医療者のユニフォームが「白」であることは、清潔さを印象付けるために一役買っています。患者さんを院内感染から守るためにも、「清潔感」は医療者に必要な条件になっています。
患者さんの受ける印象を大切に
A)身だしなみが整い清潔感がある
B)汚れた白衣で髪が乱れている
――同じケアを受ける場合、どちらの看護師に担当してほしいでしょうか? 多くの人が前者Aを選ぶでしょう。清潔感があると印象が良くなり信頼を得やすくなります。看護師にとって信頼は、仕事のしやすさにもつながります。年齢・性別・国籍・職業を問わず、患者さんが不快な印象を持たない身だしなみが重要です。
感染のリスクをあげる! NGな身だしなみ
身だしなみを整えなければならない理由の1つに「乱れた身だしなみが感染リスクをあげる」ということが挙げられます。3つのNGな身だしなみ例を紹介しますので注意してください。
・NGな身だしなみ 例1: まとめていない髪の毛をかきあげたり、手で触れたりすることで髪に病原体が付着し接触感染を媒介するリスクが高くなります。長い髪の毛はきちんとまとめましょう。
・NGな身だしなみ 例2: CDC(アメリカ疾病管理予防センター)が発表した手指衛生のガイドラインでは、ハイリスク患者さん(ICUや手術室の患者さん)と接触する場合に、つけ爪をしないことや爪の先端を約6mm未満に保つことを勧告しています1)。手洗いを行っても指や爪の先端の汚れは落ちにくく、病原体が除去されにくい事も過去の研究からわかっています2)。
長すぎる爪は患者さんの皮膚を傷つけてしまうリスクも高くなります。爪は短く整えましょう。
・NGな身だしなみ 例3: ある研究では白衣を1日着ると胸部や腹部に細菌が繁殖するため毎日交換することが推奨されています。 白衣からMRSAが検出された研究もあり、見た目が汚れていなくともこまめな洗濯が必要です。
看護師のヘアスタイルのポイント
服装だけでなく、ヘアスタイルも見た目を大きく左右します。看護師が気を付けたい3つのポイントを紹介します。

カラーリングは落ち着いた色に
多くの職場では看護師の髪色を規定しています。カラーリングやブリーチはできるだけ行わず自然な髪色の方が自然な髪色の方が安心感をあたえて印象が良くなります。髪色は、日本ヘアーカラー協会が「カラーチャート」で明るさの段階を定めています。「カラーチャートの〇番までは明るくしても良い」と規定する病院もあります。
看護師の髪色の目安は、カラーチャート7~8番まで。一見すると染めているとわかりにくく、わかっても少し明るい程度の印象です。一般的には9を超えるとかなり明るいと感じます。また、髪の根元が伸びてしまうと色の境目ができ不潔な印象を与えやすくなります。髪を染めて時間が経つと退色で髪色が明るくなる人もいるため、染髪するときは美容師に相談しましょう。
看護師におすすめのヘアスタイル
ショートカットの人、ロングヘアの人ごとにおすすめのヘアスタイルをご紹介します。
まずはショートカット。首元や顔周りがスッキリするヘアスタイルがおすすめです。寝癖を整えさえすれば、清潔感が損なわれず出勤前の身支度も簡単です。
ロングヘアの人はまとめ髪がおすすめです。「毛先が肩につく長さ」が髪をまとめる目安。ただし、まとめても後ろに垂らしたままだと、毛先が乱れるだけでなく、髪の毛が落ちて不衛生な印象を与えます。顔の横に髪が垂れていたり、目にかかったりする場合も清潔感を損ないます。
ロングヘアはお団子にまとめて、顔まわりはヘアピンで留める等してすっきりさせましょう。

パーマやインナーカラーはOK?NG?
髪の毛の長い人がパーマをすると、まとめやすくなるメリットがあります。しかし髪が乱れているなど不衛生な印象を与えるパーマはNGです。インナーカラーも規定より明るい髪色はNGです。派手になりすぎない自然な髪型が看護師の身だしなみには重要です。
爪の先まで整えて清潔感をアップ
身だしなみで気を付けたいポイントは髪や服装だけではありません。爪の先にも注意を払いましょう。
長さは短め
医療機関によっては「手のひら側から見たときに、指先から爪が見えない長さ」と規定しています。爪の長さは短めにしましょう。
ネイルはOK?NG?
美容クリニックや美容皮膚科を除けば、一般的に病院ではネイルはNGとされています。例外は爪の保護を目的とした場合。手指消毒薬や手洗いで爪が傷み、割れやすくなった爪を保護することはOKとする病院もあります。ただし注意点が2つ。1つ目はクリアやベージュなど肌馴染みの良い単色を使うこと。2つ目は、手指消毒薬でネイルは剥がれやすいので、こまめなセルフケアを行うことです。単色ネイルであっても、中途半端に剥がれていると却って不潔に見えるので注意しましょう。
マスクで隠れていてもメイクは重要

社会人女性の身だしなみとしてメイクは最低限必要です。看護師のメイクのポイントを紹介します。
ナチュラルメイクを意識
ナチュラルメイクを基本に、肌馴染みの良い色で顔色が悪く見えないようにしましょう。派手なメイクはラメやパウダーが落ちやすく、患者さんと触れた際に付いてしまう危険もあります。忙しいときは眉を整え顔の脂分を抑えるだけでも身だしなみが整っている印象を与えられます。
つけまつ毛は多くの医療機関でNG
つけまつ毛をOKとしている医療機関の代表は美容系です。しかし汗をかいたり、PPEの着脱をしたりすると取れる事があるのでおすすめできません。つけまつ毛ではなく、まつ毛パーマやまつ毛エクステで代用しましょう。
ユニフォームの着方1つで「清潔感」が変わる
看護師のユニフォームを着用するうえで、身だしなみが整って見えるポイントを紹介します。
規定通りに着用する
ユニフォームのサイズやスカート丈は規定通り着用しましょう。ズボンを腰ではくと不潔でだらしない印象を与えます。スクラブを着用する際には襟元からインナーが出ないようにしましょう。
インナーや下着の透け防止にも気を配る
男性・女性どちらにも共通しますが、インナーや下着が透けないようにしましょう。そのためには肌色に馴染む「ベージュ」「モカ」系の下着を選ぶのがおすすめです。Tシャツやタンクトップは柄が透けることもあるので、無地を選びたいですね。
落ち着いた色のカーディガン
カーディガンは黒・紺が一般的。最近ではグレーやオフホワイトも人気です。病院の規定に従い目立ちすぎない色を選びましょう。ただし、毛玉のあるカーディガンはあまり印象が良くないので避けてください。
靴下や靴も意識しよう
ナースシューズは白が基本です。色が入る場合はワンポイント程度に留めましょう。また、汚れや形崩れが目立つ靴は不潔な印象を与えます。患者さんの目線は私たちよりも低く、足元は目に入りやすいため注意しましょう。
見逃しがちなポイント3選
ここからは“見逃しがち”な身だしなみのポイントを3つ紹介します。
香料付きのハンドクリームやコスメ、香水は避ける
香料付きのハンドクリームやコスメを日常的に使用している人もいるでしょう。妊婦さんや化学療法中の患者さんのなかには香料で具合が悪くなるケースがあります。自分にとって良い香りでも相手にとっては不快なことも。病院で働くときは無臭を心がけたいですね。
アクセサリーは外す習慣を
結婚指輪以外のアクセサリーはNGな職場がほとんどです。仕事中に破損・紛失する可能性もありますし、患者さんが誤飲・けがをするリスクもあるからです。ユニフォームに着替えるときに外す習慣をつけましょう。
男性はひげも身だしなみのうちの1つ
男性はひげを剃っておくようにしましょう。伸ばす場合もマスクで隠れる範囲にとどめたいですね。
あなたの身だしなみはOK? NG? チェックリストを活用しよう!
今回はさまざまな身だしなみのポイントを紹介しました。ほかにも確認しておくべきポイントをまとめたので、チェックリストとしてぜひ活用してください。
<ヘアスタイル>
- 髪色は明るすぎない
- 長い髪はまとめる
- おじぎをしても顔に髪の毛がかからない
- 奇抜なヘアスタイルではない
- 寝癖はなく、スタイリング剤などで整えている
- フケ・抜け毛がない
- 髪留めやヘアゴムはシンプルで落ち着いたデザインである
<メイク>
- 健康的に見えるナチュラルメイク
- ラメは使わない
- 眉毛を整える
<そのほか>
- 制服は規定通りに着用する
- 名札を定位置につける
- 下着やインナーが透けていない
- 靴は汚れていない
- 爪に長さは手のひらから見て見えない適切な長さで整える、長すぎない
- マニキュア・ジェルネイル・つけ爪はつけないか規定範囲内とする
- 華美なネイルはしない
- 香りをつけない
- ネックレス・ピアスなどのアクセサリーはつけない
- ひげをそる
身だしなみに注意して信頼される看護師に
看護師だからといっておしゃれができないわけではありません。けれども信頼され安心感のある看護師を目指すなら整った身だしなみが大切です。患者さんに不快な印象を与えず清潔で整った身だしなみを心がけましょう。
【参考】
2) 五十嵐 孝 看護師を対象とした手の爪下の菌に影響する因子についての研究
Journal of Healthcare-associated Infection 2012; 5: 52-58.
3)德珍温子 看護学生が考える「適切ではない」と感じた看護師のみだしなみ
人と環境 Vol. 11: 13-17 (2018)
4)松尾恭子 看護師のユニフォームの汚染や管理に関する研究内容の分析
――1993~2012年に発表された文献をとおして―― 四国大学紀要,B42:31‐38,2014