多様化する看護師の働き方の1つとして「フリーランス」に注目が集まっています。フリーランスの看護師が活躍できる場は医療機関にとどまらず、訪問・介護・検診・企業、さらには起業まで多岐にわたります。さまざまな経験ができるフリーランスナースを解説します。
目次
働き方を自身で選択できるフリーランスナース
「フリーランスナース」という言葉を聞いたことはありますか?正社員でもアルバイトでもない、特定の医療機関や派遣会社に所属せずに働く、新しい看護師の働き方です。勤務時間や休暇を自身で考えてシフトを作り自身で働き方を選ぶフリーランスナース。活躍の場は医療現場にとどまらず、起業する人も増えていて、看護師の資格と経験を活かした看護師の新しい働き方です。
フリーランスナースの特徴を解説
フリーランスナースは、ライフスタイルやライフプランに合わせて働きやすい特徴があります。まずは、フリーランスナースの特徴を具体的に解説します。
特定の組織に属さない働き方ができる
フリーランスナースは特定の法人や派遣事業者に雇用されず、個人事業主や個人法人企業として働きます。現行の「保健師助産師看護師法」では看護師には開業権がなく、個人として看護師の仕事を請け負うことができません。そのため、医療機関や企業とは業務委託契約を締結し働きます。

シフトを選択できる
一般的に看護師は、雇用主から決められたシフトに合わせて働きます。しかしフリーランスナースは、勤務先や勤務日数、日勤か夜勤かといった勤務形態を自ら定めて医療機関と契約します。契約は単発で1日のみの勤務もありますし、2~3か月の勤務もあります。自由なシフトを組める一方、働き方は自分で管理する必要があります。休暇を多く設定すれば給料は減り、とはいえ休暇が少なければ体力面に大きな負担がかかります。体調面と給料面のバランスを考えて働き方を決めましょう。
多種多様な職場で働くことができる
専従ではなく、複数の医療機関を掛け持ちしているフリーランスナースも少なくありません。医療機関以外で看護師として働いている人もいます。フリーランスナースが活躍している看護師業務には以下があります。
病院やクリニックの業務委託 |
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ほかのパートやアルバイト・正職員看護師との業務の違いはありません。 一般的な看護業務を行います。 |
訪問看護・訪問介護 |
正職員が休暇を取得する土日や祝日の人員補充のために、単発で雇用されることが多いです。業務内容は訪問看護・訪問介護と変わりはありません。 |
ツアーナース・トラベルナース |
国内外の短期・長期旅行をする小中高校生や、障害や病気を持つ人に付き添い、看護ケアを提供しトラブルなく旅行できるようサポートします。 |
イベントナース |
コンサートやフェス、大規模展示会などのイベント来場者や関係者の救護活動を行います。 |
セミナー講師 |
企業や雑誌社が主催する看護師向け勉強会の講師や、看護学生向けの国家試験対策の予備校講師があります。ほかにも一般企業が開催する医療や健康・介護に関する市民講座もあり、看護師が講師を行えるセミナーは多岐にわたります。 |
自身のライフスタイルに合わせた働き方が実現できる
フリーランスナースの働き方のもう1つの特徴は、看護師以外の仕事が兼業できること。例えば週に3日だけ看護師として働き、他はまったく違う仕事をしている人もいます。
フリーランスナースの給料事情
フリーランスナースとして働くと、収入が減らないか不安に感じる人も多いでしょう。気になるフリーランスナースの給料事情を紹介します。
フリーランスナースの給料の平均は?
フリーランスナースは働き方も多様での収入も人それぞれで、平均値を出すことは困難です。ただフリーランスナースは“収入を自分次第でいくらでも増やせる”とも言えます。その理由は、収入が高い仕事を選んで働けるから。
業務委託の場合、契約先企業との条件が合えば、病院勤務より多い給与額で契約することも可能です。最近では新型コロナウイルス関連業務で1回の夜勤が5~6万円、ワクチンバイトでは時給3,000円と相場の倍以上の仕事も多数あるようです。高時給の仕事を選んで働けば高収入も夢ではないのが、フリーランスナースの魅力です。
組織に属さないフリーランスナースが給料において注意すべきこととして、ボーナスがないことが挙げられます。支給された場合でも、正職員より大幅な減額となる可能性は否めません。そのため月々にある程度の収入がないと、正職員の看護師と比べ年収は大幅に下がることも想定されます。
社会保障
フリーランスナースの多くは国民健康保険に加入します。国民健康保険の手続きや保険料の納付は自らで行う必要があります。国民健康保険について詳しくは、厚生労働省のホームページを参照ください。
フリーランスナースは自ら確定申告が必要
フリーランスナースは、 自分で確定申告を行います。個人事業主となりますので、白色申告もしくは開業届を出している場合は青色申告を選択し、毎年2~3月の決められた期間内に確定申告を行わなければなりません。 最近ではスマホで簡単に確定申告ができるようになっていますし、確定申告については、国税庁のホームページやLINEでわかりやすく学べます。ぜひ参考にしてください。
フリーランスで働くメリット・デメリット
フリーランスナースとして働くと、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。それぞれ順に紹介していきます。
メリット
自身の興味に合わせて仕事を自由に選択できる
自分の経験したい分野や専門性に合わせて、働く場所が選べます。スキルアップだけでなく、知識や経験を活かすことも可能です。
スキルや働き方次第で高収入を得る可能性がある
救急や集中治療領域、手術室、透析などの経験やスキルを持っていると、より高時給で雇用される可能性があります。夜勤主体で働く、土日祝日中心で働くなど、働き方によっても時給を高くすることが可能です。
休日や勤務時間を自由に調整できる
組織に所属する看護師は連休や長期休暇が取りにくい傾向にありますが、フリーランスナースは自らシフトを作るため休日や勤務時間を自由に調整できます。
デメリット
収入が安定しない
フリーランスナースは働いた分高収入になりますが、働かなければ収入を得られません。さらに、勤務日数や勤務時間帯によって収入が左右され、安定しない可能性があります。
体調を崩した場合の収入の保証がない
正職員やパートは有給休暇が取得でき、休業補償や休業手当が受給できます。フリーランスナースには有給休暇制度はないため、体調を崩して働けない場合は、収入を得ることが難しくなります。
自身で業務管理をする必要がある
週何時間勤務するか、勤務と勤務の間隔を何時間開けるかなど、自分でスケジュール管理をする必要があります。体調を崩さず、休息やプライベートの時間が確保できる業務管理が必要です。
保険料の負担額が増える
正職員やパート・アルバイトとして雇用されている場合、多くが社会保険に加入します。社会保険では雇用主が保険料を一部負担しますが、フリーランスナースは国民健康保険に加入する必要があり、保険料は全額自己負担となるため負担額が増えます。
確定申告など事務手続きをしなければならない業務が増える
雇用主との契約や国民健康保険の手続き、確定申告などの事務手続きをすべて自分で行う必要があります。事務手続きが苦手な人にとっては、大きなデメリットとなります。
合わせて読みたいフリーランスナースの働き方を事例
実際にフリーランスナースとして働く3名の看護師に話を聞いてみました。フリーランスナースとして働きたい人は、ぜひ参考にしてください。
Aさん「夜勤をかけもちで働く」
「病棟勤務を5年間した後、複数の医療機関と夜勤専従の契約で働きました。最近ではコロナ関連のホテル勤務や、重症者病棟を中心に働いています。もともとの勤め先は夜勤メインのため時給は高めでしたが、コロナ関連の高時給の案件が増え全体的な収入が大幅にアップしました。現在はA病院で16時間夜勤を月に7回~8回、コロナ専用のBホテルの12時間夜勤を月に4~5回しています。休みは月に5~8日と少ないですが、その分収入は増えました」
Bさん「日本中を転々と旅しながら働く」
「夏は大規模テーマパーク、冬は北海道のリゾートホテルの救護室に看護師として勤務しています。それ以外の時期はトラベルナースやイベントナースとして単発で働き、全国各地を飛び回っています。繁忙期にピンポイントで働く看護師の需要は高いんですよ。寮を完備している医療機関で働けば住宅費も節約できて、全国各地で働けるのも魅力です」
Cさん「自分で起業!社長業と看護師のダブルワーク」
「看護師時代に学んだコーチングとカウンセリングの技術を活かして、コーチングの指導者として会社を設立しました。最近では企業や看護学校でコーチングやカウンセリングの技法を教えたり、オンラインで勉強会を行ったりしています。現場で働くことも好きなので、月に数回は特定の病院で勤務しています」
看護師キャリアの新たな選択肢になったフリーランスナース
特定の病院に所属せずに働くフリーランスナースは、興味のある仕事や、働きやすい条件、給与を自分で選ぶことができます。反面、スケジュール管理をしっかりしないと休みが少なくなったり、給与が少なくなったりというリスクもあります。フリーランスナースは、病院で働いていた頃と違い、休業保障や退職金などの制度もないため不安に感じる人もいるかもしれません。けれど、自分のスキルや知識・経験を活かして働くことができるのはフリーランスナースの魅力の1つです。新しい看護師の働き方として、自身のキャリアプランの選択肢にフリーランスナースを検討してみてはいかがでしょうか。