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  • 公開日: 2022/6/6

転職活動で問われる看護観。面接・履歴書での活用法を事例と例文で解説

転職活動で問われることのある「看護観」。面接での質問や履歴書や職務経歴書に記載しなければならない際に苦労する人は多いのではないでしょうか。今回は、領域ごとの臨床経験をもとに、どのように看護観を考えて転職活動に活かせばよいかを解説します。

看護観とは自身が考える「理想の看護師像」

「あなたの看護観は何ですか?」そう聞かれて、困ってしまう人も多いでしょう。看護観は「自分は患者さんにこういう看護がしたい」という、自分にとっての「理想の看護師の姿」です。看護観が明確になると、看護を具体的に展開しやすくなるだけでなく、業務の優先順位もつけやすくなります。また、キャリアを考える際に自分の進むべき道を考えやすくなるメリットもあります。

臨床経験をもとにどのように看護観を考えれば良いのか、例文付きで紹介します。看護観に悩む既卒看護師はぜひ参考にしてください。

看護観とは?

看護観は自身の描く理想像だけあって人によってさまざまです。ナース専科の調査で、看護観を具体的にたずねてみると、以下のような考えを持っている看護師が多いようです。

  • 病気をみるのではなく、人間としての患者さんをみる
  • 患者さんの気持ちに寄り添う
  • 患者さんの話をよく聞く
  • 患者さんの生活や価値観を重視して、その人らしさを重視する
  • セルフケア能力を見極めて、伸ばす、維持する
  • 退院後、その人らしく生きていけるように援助する

自身の気持ちに近いものはあるでしょうか?業務が立て込んでいるときや、人手が足りないときでも「これは大切にしたい」「ここは手を抜けない」と思うことが看護観です。それぞれの価値観やこれまでの経験から培われたものなので、まったく同じ看護観を持つ人はいません。

経験を重ねることで看護観は変化する

看護観に影響を与える代表的な因子は以下があげられます。

  • 患者さんとの関わり
  • 医師をはじめとする他職種との関わり
  • 指導者との関わり
  • 家族や友人などの人間関係
  • 自身や身近な人物の病気体験
  • 成功体験
  • 死生観

看護観を研究した論文では、看護師が自身の体験を通して看護観を発展させるまでの思考プロセスを以下の図のように表しています。

参照:看護観が体験から発展するまでの看護師の思考のプロセス

看護観は看護職としての経験だけでなく、個々の人生経験によっても形作られ、変化します。

転職活動でどのように自身の看護観を答えるべきか

転職活動時に面接では以下のような形式であなたの看護観を問われることがあります。それらに適切に回答できるように、自身の看護観を作りましょう。

  1. あなたが看護をするうえで大切にしていることはなんですか?
  2. 看護師としてどんな看護をしたいですか?
  3. 将来どんな看護師になりたいですか?
  4. あなたは患者さんに寄り添うことに関してどのように考えますか?

看護観は転職活動において“自分らしさ”を表現するために重要です。しかし自分らしさをアピールするあまり、自分本位にならないよう気をつけましょう。大切なのは患者さんを第一に考えて、患者さん目線になっていることです。 また「看護師はこうあるべき」と客観的な内容はNG。看護観とは「自分にとっての看護」ですので、主観的なものになるようにしましょう。

転職活動で活用する看護観を作るための3つのステップ

転職活動で看護観を問われたとき、漠然と自身の看護観を答えるだけでは伝わりません。ここでは転職活動に生かせる看護観のまとめ方を3つのステップで解説します。

ステップ1:過去の経験を生かす

看護観は経験によって変化します。なぜその看護観に至ったのか、その看護観が自分の看護師人生にどのような影響を与えているのかを、看護学生時代に考えた看護観よりも具体的なエピソードをもとにしてまとめましょう。看護観のエピソードが転職や病院選びに関わる場合には、その点もしっかり言及することが大切です。

ステップ2:転職先の医療機関の理念・方針に沿う

転職先の理念や方針は、あなたの看護観と一致していますか?転職先の理念や方針は、その転職先が理想としている看護の姿です。転職先は、理念や方針と一致している看護師に働いてほしいと思っています。転職先の理念や方針を確認し、ずれのない看護観を答えましょう。

ステップ3:転職後のビジョンを織り込む

看護観は「現在の理想の看護師の姿」だけでなく、この先、自分がどのような看護師になっていきたいのかという、未来への道標でもあります。転職先でどのように働きたいか、自分の知識や技術をどのように生かしていけるのか、看護観と併せて転職後のビジョンまで言及できるといいでしょう。

面接でどのように看護観を伝えるか

以上3つのステップを踏まえ、看護観は面接を受ける医療機関の看護理念や看護師像と、自身の目指す看護師の姿勢や将来のビジョンを併せて構成しましょう。具体的な構成方法は次項を参考にしてください。

看護観のまとめ方は4部構成で伝わりやすく

看護観をわかりやすく伝えるために「1:結論→2:理由→3:具体例(エピソード)→4:結論」の4部で構成する方法があります。PREP法と呼ばれる手法です。冒頭に看護観を一言でまとめ「このような看護観を大切にしている」ことを明確にしてから理由を述べて、説得力を持たせる構成です。

1:結論(Point)

「自分がどんな看護師になりたいか」を一言でまとめてください。

(例)看護師として常にベストな対応ができるように心がけています。

2:理由(Reason)

結論を補足する「なぜあなたがその看護観を大切にしているのか」という理由を述べます。

(例)“もっと何かできていたのでは”と、1年目看護師の頃は毎日思っていました。

3:具体例(Example)

業務エピソードや患者さんとの関わりで得たことや考えたことを文章にしましょう。

(例)先輩から言われた“目の前の患者さんと向き合って、その時その時のベストを尽くすことが大切”という言葉を今でも大切にしています。

4:結論(Point)

冒頭で述べた看護観をどう生かしたいのか、または看護観をどのように深めていきたいのかをまとめとして記載します。

(例)患者さんとご家族にとって何が一番必要なのかを常に考え、より良い状態を保てる看護を、全身全霊で提供したいと考えています。

「看護観」を考える参考に。領域別の例文を紹介

看護観は経験によって変化するため、急性期・慢性期・回復期などの病期や、診療科ごとに特徴があります。 転職を希望する場合は、看護師経験や転職先の特性に合わせた看護観を考える必要があります。看護観は人それぞれですが、一方で他の人の看護観を知ると、自分の看護観を考えやすくなるものです。領域別の患者特性、看護技術、キャリアプランをもとにした看護観と、具体的なエピソードを紹介します。

急性期を経験した看護師の看護観

急性期は、刻一刻と患者さんの状態が変化し、経過が早いという特徴があります。状態に合わせた的確な判断と報告、対応が必要です。患者さんの身体的・精神的な負担の大きさはもちろん、家族にも配慮した看護が求められます。患者さんの命を守る最前線、急性期の看護観の例文を紹介します。

例文1:“対応力”がキーワードの場合

「看護師として常にベストな対応ができるように心がけています。急性期は元気になる患者さんばかりではありません。亡くなる患者さんも多く“もっと何かできていたのでは”と、1年目看護師の頃は毎日思っていました。その時、先輩から言われた“目の前の患者さんと向き合って、その時その時のベストを尽くすことが大切”という言葉を今でも大切にしています。患者さんとご家族にとって何が一番必要なのかを常に考え、より良い状態を保てる看護を、全身全霊で提供したいと考えています」

例文2:患者さんへの“寄り添い”がキーワードの場合

「患者さんが何を考えているのか、何を望んでいるのかを深く観察し、的確に察知して寄り添うことを意識しています。例えば意識がなく言語コミュニケーションが難しい患者さんでも、些細な表情やバイタルサインに患者さんの思いは表れます。以前、心肺停止で緊急入院し気管内挿管を行い、意識も悪く言語的コミュニケーションが取れない患者さんを担当したことがあります。ある日、ケアや声掛けで眉毛が動き、心拍数や呼吸数が変化することに気づきました。はじめは偶然かと思いましたが、数日担当していると、その時々で患者さんの反応が異なっていることがわかりました。そうした患者さんの様子をスタッフ間だけでなく、ご家族とも共有し、苦痛を予測して少しでも穏やかに過ごせるケアを行いました。患者さんとは意思疎通が難しいと思っていたご家族も、患者さんの反応を感じることができ、思いが通じたと涙を流されていたのが印象的でした。治療行為がメインになりがちな急性期ですが、この経験以降、常に患者さんの立場に立って“どうしてほしいのか”考えることを意識しています」

例文3:“貢献”がキーワードの場合

「どのようにしたら現場に貢献できるかを常日頃から考えています。急性期で働き始めたころは、医師と看護師が協同してベストな医療・看護を提供することが大切だと思っていました。しかし、次第に医師と看護師だけでは患者さんの命を守ることができないことに気づきました。人工呼吸器を動かすためには臨床工学技士のサポートが、栄養状態を良くするためには管理栄養士の専門知識が、状態に応じたリハビリテーションを行うためには理学療法士や作業療法士が欠かせません。事務的な手続きにおいてはメディカルソーシャルワーカーが必要です。それ以外にも多くのスタッフが毎日患者さんをアセスメントし、ベストな医療を提供するためにチームで関わっています。 良いチームは円滑で安全な医療・看護を提供できます。それは患者さんだけでなく、患者さんご家族の不安や心配を軽減することにもつながると感じています。自分一人で看護を提供するのではなく、チームで患者さんに関わっていることを忘れないようにしたいです」

回復期を経験した看護師の看護観例

回復期では急性期を乗り越えた患者さんを看護します。病気による心身のダメージを回復させるだけでなく、できる限り病気の前の生活に戻るために大切な時期ですが、一方で急変や合併症のリスクも高く患者さんの気持ちも揺らぎやすい時期でもあります。退院後の生活を見据えた関わりが求められる回復期で働く看護師の、看護観の例文を紹介します。

例文1:“傾聴”がキーワードの場合

「患者さんが何を望んでいるかをキャッチアップできるように、コミュニケーションを大切にしたいと考えています。患者さんは医療者の前では無理をしているケースも多いこと、一見、順調に見えてもサポートを必要としていることも多いことを、回復期病棟で経験しました。現在は常に患者さんの思いを傾聴し、希望と現実のすり合わせを意識しながらリハビリや治療に前向きになれるよう、患者さんのそばにいられる信頼感のある看護師でいることが大切だと思っています」

例文2:“多様性”がキーワードの場合

「多様性を配慮して患者さんのQOLに貢献することが私の看護観です。回復期に転院してきた患者さんの中には、病気や後遺症を受容できないまま転院してくる患者さんも少なくありません。病気になる前に戻りたいと願う患者さんも多いのですが、機能回復が望めないケースもあり、患者さんが目指す姿と医療者側が設定した目標に乖離が生まれることがあります。一方で患者さんのリハビリへの意欲や効果的なリハビリによって、医療者の想像を上回る回復を遂げる患者さんにもたくさん出会いました。そのような患者さんを担当していく中で、私たち医療者がゴールを決めてしまうのではなく、患者さんが何を目指しているかがとても重要だと感じるようになりました。常に、患者さんを主人公としてその人らしく生きていけるように関われることを目指しています」

例文3:患者さんへの“寄り添い”がキーワードの場合

「患者さんの立場に立って気持ちや感情を大事にして寄り添うことを大切にしています。回復期看護では、リハビリで獲得した機能や能力を、日常生活動作に繋げていく視点が重要だと考えています。例えば「自宅で暮らしたい」「娘の結婚式でバージンロードを歩きたい」などと言った、患者さん自身の具体的な目標がリハビリへの意欲を高め、病気と向き合う力になることを多くの患者さんから学びました。患者さんだけでなく家族の思いや価値観、希望も患者さんのリハビリへの意欲と病状の回復に影響を与えます。患者さんだけでなく患者さんを取り巻く人たちにも真摯に関わることを意識しています」 

慢性期を経験した看護師の看護観例

慢性期の看護は病状が比較的安定してきた患者さんを、病気と共に生きていけるようにサポートするものです。急性期や回復期よりも、患者さんひとり一人とじっくり時間をかけて関わっていく場面が多い慢性期。外来や在宅療養などが中心となる、慢性期の看護観の例文を紹介します。

例文1:患者さんとの“信頼関係”がキーワードの場合

「患者さんとの信頼関係を重要視しています。慢性期では患者さんとの付き合いが長く、より深く関わる場面も増えます。信頼関係を築けていないと、患者さんの本音を知ることができず、適切なタイミングでサポートできません。私たちは状態の安定している患者さんは「大丈夫だろう」と看護ケアの比重を軽くしてしまいがちです。しかし、患者さんは常に病状の変化や合併症への恐怖、不安と戦っており、落ち着いている状態の時こそ話を聞いてほしかったり、気に留めてほしいと感じていたりするケースを知るにつれ、安定している時に気に留めて心配してくれる看護師のほうが、慢性期では信頼関係を築きやすいのだと学びました。現在は自分が何をすべきだ・何かをしたいと思うことより、常に患者さんに心を配り、適切なタイミングでサポートできるように意識しています」

例文2:“患者さんとご家族への寄り添い”がキーワードの場合

「患者さんやそのご家族の気持ちや感情に向き合うことを大切にしています。慢性期では元気になる患者さんばかりではありません。時には治療効果が望めず、最期の時間を待つ患者さんもいます。ご夫婦2人でお子さんのいないある患者さんから学んだことがあります。患者さんは自宅で最期を迎えたいと思っていたのですが、持病のある妻の負担を考え病院で最期を迎える決意をされていました。一方で奥様は夫にできるだけ自宅にいてほしいと思っていて、夫婦で思いがすれ違っていました。最終的に、病状の許す限り外泊や外出をする、ということで話がまとまりました。あまり長い時間ではありませんでしたが、ご夫婦ともに望む時間を過ごし、穏やかに最期を迎えられました。時間をかけて関わる慢性期だからこそ、患者さんやご家族の思いをくみ取れて、個別性に配慮できるのだと感じています。このご夫婦を担当した経験から、最期まで患者さんが自分らしく生きていけるように、患者さんとご家族の意思を尊重した関わりをしたいと思うようになりました」

例文3:“患者さんへの寄り添い”がキーワードの場合

「患者さんに寄り添うことを最も大事にしたいと考えています。慢性期では生涯にわたって病気や後遺症と付き合っていかねばならない患者さんも多く、それを受け入れることができない瞬間もあります。以前は「医学的にどうしようもないことなのに、なぜ受け入れてくれないのだろう」と悩んだこともありました。しかし、どのような思いを抱える患者さんにも、一人ひとりの価値観があり、医学的に正しいからと言って医療者の価値観を押し付けることは正しい看護ではないと多くの患者さんから学びました。外来看護という限られた関わりでも、患者さん一人ひとりに寄り添うことはできます。いつでも寄り添う気持ちを忘れず、話しかけやすく相談しやすい看護師でありたいです」

自分ならではの看護観で転職活動に挑もう

理想の看護師の姿は、一人ひとり異なります。看護師になってからの経験や、患者さんとの出会いで看護観は変化し続けていきます。今回の記事を参考に、もう一度、看護観を考えてみてください。臨床経験をふまえた看護観は、あなたの看護に対する思いや情熱から進む道を明らかにしてくれるはずです。

【参考】

畑中純子  看護観が体験から発展するまでの 看護師の思考のプロセス

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