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  • 公開日: 2022/4/1

新人看護師の接遇のポイント。患者さんとご家族への対応方法

病院内では世間一般とは異なる病院特有のマナーや接遇が存在します。しかし、患者さんや家族への対応の際は、一般的なマナーや接遇が必要です。この違いを理解していないと、場合のよっては患者さんや家族からクレームを受ける可能性もあります。今回は新人看護師が身につけたいマナーと接遇を解説します。

医療接遇とは?

医療接遇とは、医療現場における接遇のことです。患者さんは、健常な方とは違ってなんらかの疾患や怪我により心身が弱っている状態です。また、患者さん1人ひとり病状が異なるため、その患者さんに合わせた接遇方法が必要になります。そのため、患者さんやその家族と接するときには痛みや苦しみ、緊張、不安といったネガティブな状態であることを理解し、思いやりを持った接遇を心掛けることが大切です。

一般の接遇と医療接遇の違い

初対面で挨拶をするとき

初対面の挨拶における一般的な接遇と医療接遇の違いは、以下の表のとおりです。

一般的な接遇 医療接遇
会話例 「初めまして、〇〇会社の△△と申します。よろしくお願いいたします。」 「おはようございます。本日担当の△△です。よろしくお願いします。」
「〇〇の痛みはいかかですか?」
「夜は眠れましたか?」

医療接遇の場合、患者さんの体調や睡眠状況など、気遣いの言葉を添えてみるとよいでしょう。

お待たせするときの声かけ
一般的な接遇 医療接遇
会話例 「少々お待ちください」
「しばらくお待ちくださいませ」
外来の場合
「〇人お待ちなので△分後にお呼びします」
病棟の場合
「〇〇の準備をしたら伺います」

医療接遇の場合は、より具体的な数字を用いて伝える方が、患者さんの安心感につながります。

患者さんの家族への対応には気遣いが不可欠

医療接遇として注意しなければいけないことは、患者さんだけではなく、そのご家族への対応にも配慮が必要である点です。患者さんばかりに注目し、ご家族への配慮が足りない場合、「気遣いが足りない」「家族なのに部外者扱いにされている」など、クレームになる可能性があります。言葉遣いや態度はもちろん、ちょっとした行き違いから怒りや不満につながることもあるでしょう。
ここでは、ロールプレイング事例における失敗例を紹介します。

患者の家族への配慮が足りない言動でクレームになった事例

場面①:医師から患者さんの家族に来院してもらうよう指示を受けた看護師。家族が予定の時間を過ぎてようやく来院した際に医師に発した言葉。
看護師:(大きな声で)「〇〇先生、△△さんの家族がやっと来ました」

「やっと来ました」という言葉が家族を不快にさせた要因です。忙しい中、急遽来院するように言われた状況を思いやる言葉が必要です。「ご家族が到着されました」「お時間の調整をしていただき、ありがとうございます」などの言葉遣いができるとよいでしょう。

場面②:患者の急変で現場が慌ただしくなったときに、家族から容態を聞かれた際のやりとり
患者の家族:「〇〇(患者さんの名前)の容体はどうなのでしょうか?」
看護師:「今忙しいので、ちょっと待っていてください」

急変で忙しいのはわかりますが、家族の患者さんを心配する気持ちに寄り添えていませんね。「今、処置をしています。後ほど医師からお話がありますので、お待ちいただけますか」と現状と見通しを簡潔に説明すると、家族は安心します。

患者・家族対応で気をつけるべき倫理的視点

マナーとして、患者さんや家族への対応においては、倫理的視点を持つことが必要です。例えば、必要以上に個人情報は聞かない、あるいは口にしない、家族であっても不用意に患者さんの状態について話さないなどの配慮が必要です。
また、患者さんの希望よりも療養上の安全を優先にすべき場合もあるため、状況に応じて対応しましょう。

患者と家族への倫理的配慮が足りない言動でクレームになった事例

ロールプレイングを通して倫理的配慮が足らなかった事例を紹介します。

場面①:家族から患者さん本人に病状を伝えないで欲しいと聞いていたが、患者さんから病状をたずねられたときの会話
患者:「私の病状はどうなんでしょうか? 教えてください」
看護師:(あたふたしながら)「看護師からは話せないんです」と告げ、その場から逃げるように立ち去る。

困った場合に曖昧な対応をしたり、黙り込んでしまったりすると、患者さんは不安になってしまいます。病状は医師から話してもらうのが最適です。「医師から説明をしてもらいましょう」と伝えるのがよいでしょう。

場面②:患者さんの病気に関して家族に詰め寄られたときの会話
家族:(答えを誘導するような感じで)「〇〇(疾患)の症状は△△(病名)によるものですよね」
看護師:「そうですね……」否定とも肯定ともとれる返事

家族からの質問攻撃や誘導尋問に対して、ついつい患者さんの情報を話してしまいそうになる場面もあるでしょう。そのような場合は、医師に対応してもらうよう、毅然とした態度で伝えることが大切です。

日本看護協会のホームページには、看護倫理の基礎知識から事例検討までを紹介している「看護職のための自己学習テキスト」というページがあるので、是非活用しましょう。

患者家族に対しては「家族看護」を意識した関わり方も必要

看護師が家族と関わるときには、接遇やマナーだけではなく、家族を看護の対象としてとらえる「家族看護」の視点からの関わり方も必要です。疾患や怪我を抱える患者さんの家族もまた、精神的・心理的な痛みを抱えており、対応には看護的視点が必要です。
ここでは、患者さんの家族に対して家族看護としての関わり方が必要な事例を、ロールプレイングを通して紹介します。

家族看護の視点から患者家族に寄り添った事例

場面①:いつも表情が硬く厳格そうな患者家族に対して、看護師が怒られないようマナーに気をつけながら話しているときの会話
看護師:「〇〇さん(患者さん)の病状が気になりますよね」
患者家族:(眉間にしわを寄せながら)「そうですね…」
看護師:(やっぱり今日も表情が硬いな…)「△△(処置名)で〇〇さんの体はずいぶん楽になりましたよ」
患者家族:(すこし顔を緩めて)「そうですか。それならよかったです」
看護師:(あれ? もしかして〇〇さんのご家族は、不機嫌だから表情が硬いんじゃなくて、患者さんの病状が心配で表情が強張っていたのかな)
看護師:(家族の表情を確認しながら)「□□(今までできなかったこと)ができるようになりましたよ」

この場面の患者さんの家族は、実際は患者の病状を心配するあまり表情が強張っていたことがわかり、寄り添うような関わりが必要なことを看護師は理解しました。
家族によっては、患者さんにどのように声をかけたらよいのか、体に触ってもよいのかわからずに、ただ見つめるだけの人もいます。その様子が硬い表情と見えたりするので、家族が患者さんに触れたり声をかけたりできるように関わることが大切です。

場面②:事故で急死した患者の家族が取り乱している状況
患者家族:(泣きながら)「〇〇(患者さんの名前)起きて、起きて!どうして死んじゃったの?」
看護師:(しばらく様子を見たあと、寄り添いながら)「お辛いですね」
患者家族:「どうしてこんなことになったんですか!出かけるまでは元気だったのに。何があったんですか?」(矢継ぎ早に質問してくる)
看護師:(さっきまで元気だったから納得できないよね。これまでの経過を医師に説明してもらおうかな)
「突然のことで受け入れらないですよね。医師から経緯を説明してもらいましょうか?」
患者家族:「聞きたいです。お願いします。」
看護師:(医師から説明を聞いたあとの家族の様子を見て、さっきに比べて少し落ち着かれた感じがするな)
「(医師の説明に対して)納得されましたか」
患者家族:「先生の説明を聞いて、少し落ち着きました。○〇(患者さんの名前)は頑張ったんですね。」(少し笑顔もみられる)

この場面の患者さんの家族は、元気だった患者さんの「死」が納得できず、亡くなった理由を知りたがっていると考察し、医師からの説明が必要だと看護師は理解しました。 急に家族を亡くした家族に対して、一般的なお悔やみの言葉ではなく、家族の気持ちに寄り添った言葉がけが大切です。医師や看護師の対応は適切であったのか、事の経緯を伝えることで、少しずつ受容できるようになるのです。

身だしなみも重要なポイント

患者さんと家族への接遇・マナーは大切なことですが、看護師は常に患者・家族に見られる存在であると認識しておく必要があります。病院内では、アクセサリーなどで身だしなみを整えるのではなく、清潔感と信頼感を与え、患者さんのケアを安全に行える範囲でおしゃれを楽しみましょう。例えば、看護師に必要なナースウォッチやペンライト、タイマーなどのアイテムを看護師専用のもの(デザインと実用性を兼ね備えたもの)に変えてみるのがおすすめです。

医療現場での接遇とマナーを理解して看護に活かそう

医療接遇を身につけることで、患者さんや家族からクレームを受けることなく、良好な関係を築けるメリットがあります。また、寄り添うことで患者さんや家族の本当の想いを知ることができ、個別性のある看護につながります。患者さんを守るだけではなく、自分を守るためにも医療接遇を理解しておきましょう。

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